淫がおーほぉぉぉぉ・2

 しかし、一連の流れで疑問点があった。遠慮なく質問してみよう。


「いやでも、安藤がもしやりたいだけなら、なんで暮林さんが俺と付き合った後に手を出したんです? やるだけなら付き合う前でも楽勝でしょう、暮林さんはもともと安藤に気があったんだから」


「……そうよね。ここからは美衣から聞いた話だけど、安藤君はまだ先輩の子をあきらめきれなかったみたい。もし後先考えずにやっちゃったら、美衣がその先輩の子に一部始終を話したりして、バレちゃうかもしれないじゃない?」


「……なるほど」


「そうなったらその先輩には相手にされない、と思いこんでたでしょうし」


「……」


「だから、安藤君にとっては美衣に彼氏ができたことが結果としてよかったのよ。たとえ他に彼氏がいても、まだ美衣には安藤君のことが好きな気持ちが残ってる。それに、彼氏がいる美衣なら、たとえ安藤君と人に言えない浮気ことをしても、おそらく彼氏である雄太様も含む周りには言いふらさないでしょう、と」


「それってまさか……」


「……たぶん、雄太様が考えてるとおり。美衣が安藤君とドえらいことをしても誰にも言えない状況を利用して、安藤君は思わせぶりな態度で美衣を言いくるめて浮気を持ちかけ、どエロいことを性欲のある限り美衣にぶつけたの」


「……あ、ん、ど、うの……」


 わーい。

 久々に怒りパワーがこみあげてきたぞー!!

 今ならパンチングマシーンで生涯最高記録が出せる気がする。


「クソ、野郎がぁぁぁぁ!! あいつがすべての元凶なのは知ってたけど、そこまであくどいことを考えていやがったとは!! クソ、糞、くっそおおおお!!」


「……いえ。一番悪いのは、自分を偽り続けた挙句、雄太様という何の罪もない方を深く傷つけ、取り返しのつかない罪を犯した美衣なんです」


「あ、それはいまさらいうまでもないです、ハイ」


 叫んだ後になぜか冷静になっちゃう、今のテンションのぶれ方はなんだ。

 確かに安藤のクソ野郎はちょっと拉致監禁して裸チン斬キンしてやりたいけど、巻き込まれたお母様に対してはあまりにもアラビンドビンハゲチャビンフビンで、同情以外の感情がわかないわ。


 ま、暮林さんが俺に真実を告げたとき、中学生の分際ですでに校舎プレイという熟練の域に達してたあたり、かなり仕込まれて快楽堕ちみたいな状況だったのかもしれん。意外とたやすいんだなー、自分に気がある女子を堕とすのって。


 しかし、さらに子宮口おくまでツッコんで訊かねばならぬことがある。


「……ところで。暮林さんの今の状況を見る限り、安藤とはもう別れているんでしょうか?」


「……」


 無言の皇帝。じゃなかった、肯定。うん、ル〇ルフならきっとここでつまるの正反対なギャグをはさんでくるだろうから、皇帝ではないな。


「いつごろ、安藤と別れたんですか?」


「……多分、割と早く、ですね」


「は?」


「というのも、ちょうど雄太様と美衣が付き合い始めた頃、その幼なじみの先輩の子が、『失恋した』って本気で落ち込みはじめちゃったみたいなの」


「あの、雄太様って呼び方、そろそろ変えてくれません?」


「じゃあ雄太さまで」


「……好きにどうぞ」


 重い話題を少しでも軽くしようとした俺の試みは大失敗に終わった。ヘリウムガスマスターへの道は遠い。

 ちなみに水素はダメだぞ、軽くても炎上したら爆発するから。


「はい。で、そこで安藤君は揺れます、当然のように。だって今まで『好きな人がいるから』って絶対になびかなかったあこがれの人が失恋したことで、ひょっとすると自分を見てくれるようになるかもしれない、って可能性が出てきたわけだから」


「……」


「で、美衣が安藤君との関係を黙っているのをいいことに、安藤君はその子にもモーションをかけるようになります。でもやがて安藤君と美衣のエッロエロな関係は、雄太さまと美衣が別れたときにすべてバレてしまって」


「ですよねー」


 悪事千里を走る。安藤精子を先走る。同義語だな。

 ま、それなら安藤の悪事はすべて白日の下に……


「……それなのに。なぜかその子は、美衣と安藤君の関係を知っていながら、安藤君に近づき始めたの」


「はぁぁぁぁ??」


 ……なんだそれ。

 つまり、その先輩も、安藤のことを暮林さんにとられるのが癪だったんか?

 だから暮林さんから安藤を奪おうとしたんか?


「そうして安藤君は、美衣をあっさり捨て、その先輩の子に乗り換えました」


「まさしく乗り換えですな。乗り換えなのか乗られ換えなのかはともかくとして」


「はい、そうですね」


「いやいちいち俺のくだらない合いの手にのらなくていいですよ」


 グラス強いよねグラス。乗り換え上手って、そう考えると何か意味深。

 乗って乗られて乗り換えられて。ネトリネトラレヤリヤラレ。


 ああ無情。まさか中学生でレ・ミゼラブルの深淵を覗く羽目になるとはな、俺も人のこと言えねえけどさ。


「で、安藤は今、その先輩と……?」


「……いえ。その先輩の子は、安藤君とすぐに別れたみたいです。身体も許さなかったと聞きました」


「なんじゃそりゃ」


 何のために近づいたんだ、その先輩。ただの嫌がらせとしか思えないけど。


「ひょっとして、その先輩と暮林さんは、仲悪かったんでしょうか?」


「……そんなことはありません。むしろ、本当の妹以上に、美衣のことを可愛がってくれていました」


 質問重ねたらますますわからなくなってきた。こんなの初めて。


「じゃなんで、わざわざ暮林さんを裏切るかのような行動を……」


「……なんででしょうね。でもその結果、美衣と安藤君はなにもかもなくしました。安藤君からひどい裏切りを受けた美衣は、自分が雄太さまにどれだけひどいことをしたのか、その時身をもって味わったのですね」


「……」


「そうして心を病んだ美衣に正面から向き合うため、私たち家族は中学卒業を機に引っ越ししました。時が過ぎ、今は立ち直ったかのように見える美衣ですが、雄太さまに対する罪悪感だけは消し去ることができなくて、今も傷として残っています」


「……はぁ」


 わけわかめすぎんだろ、事情が。ふえるわけわかめちゃんだわ。

 いや確かに、四文字で要約したら『因果応報』で済まされる内容なんだけどさ。

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