第6話 ロボットの欠点

『待たせたな』


 テレビには建物の裏から出てきたクラウディアが映っていた。

 先ほどまでの深刻な表情は消え去り、朗らかな笑顔、凛とした人々を魅了する美人の顔だった。

 先ほどまで何の砂糖を買うかで悩んでいたとは思えない表情だった。


『ではディセアグリッパの諸君に告ぐ、直ちにそのロボットを引き渡せ。それは』


 そこまで言った後、<労働者の怒り>が攻撃を仕掛けてきた。


『我々の守護神を奪われてたまるか! これがなくなればお前らは俺たちを弾圧しに来るだろう。そうはさせるか! 脅しの道具もなくなってしまう! 絶対に阻止しろ!』


 指先のマジックアローだけでなく胸からもビーム兵器が飛び出し、頭部の目からもビームが、両の側頭部からは機関銃が放たれる。

 あっという間に激戦地のような映像となる。


「恐ろしいロボットだな」

「ああ、仕様書を見たとき、大量の武器を搭載していてね。何と戦うんだと思ったよ。ドラゴンさえ一撃で葬れるほどの火力なんて不要だろう」


 ロボットの攻撃力に唖然とするとオスカーとテルだったが、その攻撃をクラウディアは捌いていた。

 ビームをはじき返し、銃弾を剣で跳ね飛ばし、巨大なエネルギー弾を両断する。

 その勇姿がテレビの中に映し出される。


『はああっ』


 それどころか激しい攻撃の嵐の中飛び出してロボット本体を攻撃する。

 クラウディアの剣が一戦するとロボットの左腕が切り落とされた。


『なっ』


 分厚い装甲を切断されてリーダーは驚いた。


『もう一撃』


 返す刀でクラウディアはロボットの身体を切ろうとした。


『か、躱せ!』


 リーダーの命令を受けた巨大ロボは身長を少し超える高さまでジャンプしてクラウディアの攻撃を避けた。


「すげえ避けた」

「いや、死んだな」

「え? 避けただろう」

「ロボットはな。でも中の人間は?」


 テルは淡々とオスカーに説明した。


「中の人間もロボットと同じ動きをして衝撃を食らうんだぞ。ロボットの身長の高さから落ちたのと同じだ」


 ロボットの身長は数十メートル。

 高さ一八階建てのビルから落ちたのと同じだ。そこから飛び降りて助かる人間などいない。


「しかも付いている椅子は普通の物にシートベルトが付いただけだ。背筋を伸ばしたまま縛り付けられて、アスファルトに落とされるようなものだ」

「安全装置はあるんだろう?」

「……ウチの妹カエソニアとアントニアはクラウディア姉様程ではないが勇者の力がある。だからすっげえ頑丈なんだ。そんなのが普通の人間の強さ弱さを知っているわけ無いだろう」


 何度も妹の発明品祈って死にかけたテルがしみじみと言う。自分は大丈夫だから他も大丈夫、といって乗せてくるんだ。

 技術とは再現性、誰がやっても同じ結果になる事だ。

 妹の発明が失敗するのは、妹か同じような力を持っている同類にしか使えない物が多いからだ。

 なのでテルは自分が安全と判断したモノしか乗らない。例え、妹達が進めてきても自分の命を守るために断る。

 妹たちが大丈夫でも凡人のテルにあ致命的なモノが多いからだ。

 やがてロボットは地面に降り立った。

 一見、静かに下りたように見えるが、それは巨大だからだ。

 実際は数十メートルを垂直に落下している。

 案の定、パイロットからの操作が無くなったのか、地面に着地したロボットはしばし動かなかった。


「しかし不味いな」

「何が?」


 テレビの巨大ロボットを見て、テルが珍しく顔をしかめて不安げにしている。

 これだけで緊急事態、非常に良くないことが起きる事がオスカーには分かった。

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