無知で無謀なターザン

布団カバー

無知で無謀なターザン

走り出す、駆け出す、踏み出す。大きく跳躍し数メートルの溝を超えて勢いままに転げ込む。

擦り傷の痛みに顔をしかめながら体を起こす、目の前には手つかずの自然が広がる新天地が広がっていた。

コンクリートジャングルで育った私にはあまりにも緑一色の光景に目がくらみ、一度目を瞑る。再度、開いても目の前の光景は変わらなかった。

夢じゃない実感が興奮を生み、「あーーああーー」と昔見たアニメの真似をしていた。

テンションが上がりに上がった私は自然の中へ飛び込む。

興奮のあまり植物のトゲが刺さったことにも気が付かないほど。何も考えずあてもなく歩いていくうちに気分は落ち着き、体は水と食料を求め始めた。

私は道中で見つけた川から水を飲んで喉を潤したが、問題は食料であった。どれが食べれるのかイマイチ分からず、探し求めて赤い木の実を見つけた。

どことなくネットで見たリンゴに似ていたので大丈夫だろうと思って食べてみるが酸味が口いっぱいに広がって食えたものではなかった。

川で口を漱いでも酸味が口に残り、食欲は失せた。

森を一日中探索し疲れ切った私は適当に眠りつく。

眠りについた体をかすり傷から入ったばい菌、トゲの毒、川の水の寄生虫、木の実の細菌が駆け巡って全身を攻撃する。

腹痛と高熱で目が覚めた私は訳も分からず痛みに苦しみ、死に恐怖するしか出来なかった。

時間が経つごとに症状は酷くなっていく一方で快方の目指しはまったくない。

どれくらい時間が経っただろうか体を動かす気力、体力はない。意識が遠のく、めのまえがまっくらに……


死体となった肉体は森に住む生物の糧になっていき、死んでようやく自然に溶け込むことが出来たのだった

おわり

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