墨汁を飲む私は死んだ方がいい

 人の嫌な所や悪い所を何かにつけて見つけては心の中で非難する私の眼は真っ黒で、きっと腹を裂けば墨汁が滴るだろう。

 死んだ方がいい。誰かを汚す前に。

 誰かを黒く染めてまで生きる様な強さも無いのに人肌恋しいだとか周りに合わせて恋人が欲しいだとか。

 死んだ方がいい。いつかの恋人を汚す前に。

 人と話す時私の目は、目ではなくその人の欠点を見つめている。1番良かった時の自分とあなたの美醜な魂を比べて嗤っている。

 死んだ方がいい。本当に気付く前に。

 でも本当は知っている。

 垂れた墨汁も黒く濁った私の双眸も、最初は無色透明だったことを。

 死んだ方がいい。貴方の涙を黒くしてしまう前に。

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