双眸

 双眸から溢れた涙は、とりとめのなく床に乾いてゆくのでしょう。

 ただ落ち、ただ乾き、死んでゆくのです。

 長いこと貴方を見つめた双眸は、貴方と同じような涙しか落とせないのです。ただ堕ち、ただ渇き、死んでいった貴方のような。


 貴方が夢を追う姿を何日も見てきました。

 愛人かのように机に向かい、今どき鉛筆で原稿用紙を書き殴る姿を。

 然し、終ぞ貴方は叶えられなかった。

 女一人養えず、いつまでも花咲かないもんですから、貴方と出逢ってから私は痩せていく一方だった。

 それでも幸せでした。


 貴方は世間に何も残せてはいないでしょうね。

 私の薄い手を見れば、その事実は火を見る必要すらありません。

 

 それでも好いのです。

 貴方は私の中で永遠に残り続けるでしょうから。

 私より痩せ

 私より笑い

 私より美しい

 貴方を、この双眸は、確かに見ていましたから。

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