第7話 アルボーグ

 時は少し流れ——


「おい、どうしたガキンチョ」

「うう……」


 白髪で、トゲのついた帽子を被り、袖は艶のある銀色で、胴は黒いパーカーを着たガラの悪い青年がいる。彼は薄赤色の髪をボサボサに乱した、薄汚れた少女に話しかけており、その少女は目に涙を溜めている。


「迷子か? 母ちゃんと何処で逸れた?」


青年は少女に左手、を差し伸べたが、少女はビクッと体を震わせ離れて行った。それを見て青年は何かを察したようだ。青年はしゃがみ、少女と視線を同じにし、頭を掻きながら話しかけた。


「あー、その、何だ、母ちゃんに会いたいか?」


少女は終始無言で青年を見つめている。肯定も、否定もしていないようだ。しかし、何か、必死さを見て取れる。


「うーん、どうだ、取り敢えず、兄ちゃんのとこに来るか?」


少女は無言で頷いた。

 青年と少女は手を繋いで暫く歩き、鉄筋コンクリートで出来た建物に着いた。周りにも低めの建物が並び、上には何かが建物間にかかっており、みずぼらしく、雑多な雰囲気である。


「そういや名前聞いてなかったな、なんて言うんだ?」

「……シ」

「ん?」

「ナウークシ」

「ナウークシか」


 建物内部では数名の人々が空中に展開された画面に向かっている。と、二人に、ベージュのウールスーツに身を包み、短く刈り上げた黒髪に中折れ帽を被り、タバコを蒸している男性が話しかけてきた。


「おうアルボーグ、帰ったか。で、誰だ? そのガキ」

「あっボス、こいつ、近くでグズグズ泣いてまして、とりあえず連れてきたんですよ」

「ほーう」


エラールタはジロジロと少女を眺める。彼は面長で、二重の三白眼であるが、威圧感はない。


「おいアルボーグ、今何を考えてる」

「いや、別に何も」

「正直に言え」

「いやー、勝手に連れてきて大丈夫なのかって。うち孤児院でも何でもありませんし、何よりそんなこと出来るタチじゃないでしょうに……」

「……ふぅー……」


エラールタは暫し黙った後、上を向いてタバコの煙を吐いた。その後、アルボーグの方を向いた。


「タチなんか今はどうでもいいだろうが。お前の性格柄ほっとけなくて連れてきたんだろ? そんならそれで良いじゃねえか。何か悪いことが起きるでもねえしよ。気に病むな」

「は、はい」

「取り敢えずアルボーグ、そいつの身なり整えてやれ。服ならエギラのやつがあるだろ。多分こいつは素材が良いぞ。ギャハハ」

「はい」

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