第6話 西ヨルグ支部
彼らは駅から外に出た。駅の外見は石造であり、横に長く、整然と扉が並んでいる。中心は時計塔のように長く伸びており、最も上は半円形である。駅前にはロータリーがあり、その中心には花壇と、装飾された柱がある。ロータリー周辺には照明が設置されており、黒いランプのような外見をしている。
駅前から5分ほど歩くと、目的地に着く。総石造りと思われ、天井にはヴォールトが使われており、教会か、はたまた歴史の長い城かと思われる。しかし、石の組積造に見える壁面は、建築法はそのままに、コンクリートで一部を固めている。どうにも、地震が多いのである。
その時、黒髪短髪の中年の大男が出迎えに来た。身長は180cmほど、奥目ではないが、鼻筋がしっかりとしており、平行太眉な為、一見すると堀が深く見える。恰幅が良く、腹は出ているが、四肢には言うほど脂肪がついておらず、それこそ中年太りである。彼は定形管理委員会西ヨルグ支部会長のウルイトである。
「
「
「やばい、何言ってるか分からなくなってる」
「言語ってのは使わないと忘れるもんだな。特にここの現地語は」
「あれ、ラントは?」
見るとセヴァの隣にいるはずのラントが居ない。辺りを見渡すと、ウイルトの横にいる。
『ねえねえ、昔会った事あるっけ?』
『おや、このお嬢さんが例の』
『ちょっとお嬢様って何……って言いたい所だけど悪くないかも』
『こら、ラント。馴れ馴れしいですよ』
ラントは流暢に会話をしている。
「あのー、なんでラントが喋れるんでしょう?」
「まあ、あの方はああ見えて長く生きているからな……普段の態度も自分が楽だからそうしているのでは、なんて思うが、本当のところは私も分からんな」
「あれ? でもラント本人曰く年齢は大体30って言ってたんですけど」
巫女はそれを聞き、神妙な面持ちをした。
「それはまあ、色々あってな」
「何か察したので聞かないでおきます。探偵がよく言うアレとは別物でしょうし」
「それが有難いな」
ウルイトは手で従業員を呼び寄せた。その従業員は襟付きの白シャツを着、二股に分かれた青と白の縞模様のネクタイを閉めた女性である。ここは市民から消費、金融、生活の相談を受ける行政施設であるため、定形管理委員会として都合がいいのだ。
『ほら、お客様を案内して差し上げたまえ』
『かしこまりました』
ラント一行 ——仮にも立場が一番上なのはラントなのでそう呼ぶ—— は従業員に案内され、廊下を歩いて行く。床板は磨かれた白い石材であり、急いで歩いたならば靴裏との摩擦でキュッキュと鳴るだろう。壁面は白い岩であり、天井は木材を柱とするリブ・ヴォールトである。しかし、天井に設置されている光源は近未来的な蛍光灯のようなものであり、アンバランスさを醸し出している。
彼らは各々の宿泊部屋に案内された。壁はコンクリート打ちっぱなしであり、しかし床は石である。部屋も四角く、廊下ほどの奇妙さはない。
「ふぃー」
ラントはベットにどかりと横たわった。一人になった瞬間に緊張の糸が切れたようだ。
「はぁーあ、あのオッサン昔のこと忘れてたなあ。仕方ないか、随分時間経ってるし。眷属同じだったかな……駄目だ、本心までまで幼女になったらお終いだ」
この語ウルイトを含めた会議が行われる予定であり、それまで多少休憩出来るため、ラントはうつ伏せになりしかめ面をしている。枕を抱え、脚をゆらゆらと動かし、それに合わせて体が左右に少々揺れ動く。
「会議まで20分ぐらいか……顔でも洗っとこうかな」
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