第2話 ファルバラータ

「やはりここに居ましたか」

「げっ! 神主!」


 セヴァがガルメニナラを瓶に押し込み直して暫く経つと、店のドアが開き、そこには裾の部分が白い燕尾服に身を包み、腰に、スキアヴォーナの様な護拳をした剣を下げた、カイゼル髭の初老の紳士がいた。白髪を腰の少し上まで伸ばしており、前髪を左右に分けている。彼はフルギヌス・テンタと言い、宗教施設の管理人、つまる所神主であり、呼称も神主である。立場上はラントの眷属ではあるが、他人からはもっぱら保護者のように映る。


「はいはい帰りますよ。報告資料作成が終わっていないでしょう」

「やだ! 巫女か神主がやってよー」

「ルール上あなたがやらないと了承されないことになってるんですよ。まあ、ここいら担当の方々であれば融通利かせてはくれるとは思いますけどね」

「じゃあそれで良いじゃん」

「駄目です」

「うう……」


 ラントが神主から説教を受けている時、セヴァは双眼鏡を使って遠くを見ていた。何やら気になるものがあるようだ。そこには四足歩行する獣のようなものが見えた。


「ねえ神主さん、なんかあそこにヤバい奴居るんだけど」

「どれどれ、な! ファルバラータじゃないですか!」

「えっマジ?」


神主もラントも驚いている。ファルバラータは斜面を駆け下りこちらに向かって来る。どうやら視線を察知したようだ。


「あれらは前より厄介になっています。とそんなこと言ってる間に来ましたよ! 構えて!」


全員が兎にも角にも臨戦態勢に入る。ファルバラータとはクアンタム・エネルギーにより動作する兵器の総称である。今回のものは、リスのような尻尾に金属製の狐のような造形をした顔、奇妙に湾曲した四肢で四足歩行し、関節の隙間や口内から紫色の光が漏れ出している。

 それらが走って来る。セヴァは上部に白く光る板が付いている杖の様なものを持っている。それを前に構え、スイッチを押す。


「ワーテヴ150、ネンセ14、エアサ21」


杖の前に紫色のバリアのようなものが発生し、ファルバラータはそこに激突した。ファルバラータはショックで少々動きが鈍る。しかし一体のファルバラータはバリアを超えて飛びかかってきた。後の二体は、ラントが片方が欠けた金色の輪を生成し、殴って動きを止めた。さて、もう一体は神主へ飛びかかった。神主は右足を前に、左足を後ろにして、前に構えた剣の護拳でファルバラータの鼻っつらを殴った。ファルバラータは衝撃で怯み、その隙に神主は剣でファルバラータの首を刺し、剣を捻り上げた。バキッという音がして、ファルバラータの頭部は吹っ飛んでいき、地面に落ちた時、ゴトリと鈍い音が鳴った。切断面からはブブブブと音を発しながら紫色のアークの様なものが振動している。


「これは僕が分析していいですか」

「むしろ、よろしくお願いします」

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