二・ネコマタカレシ、手作り弁当獲得権をゲットする
学校の屋上にある庭園に棲みついた猫又の名前は寅さん、というらしい。
「寅さん、ごはんどうしてるの」
アタシは購買で買ったカタクナイプリンを食べながら聞く。どう考えても猫が好みそうな獲物をここで得られるとは思えなかったからだ。
『空腹という感覚を忘れてしまいましてね』
「えっ、食べるの楽しいのに⁉」
食べる楽しみがないなんて、生きている七割くらい損してるんじゃないんだろうか。尻尾をぱたり、とそれぞれ違う方向にゆらゆらさせながら、寅さんはなう、と小さく鳴いた。
『私にとっての食欲は、楽しむものでなく満たさねばならぬものでしたから』
食わねば死んでしまいます。何でも食べなくては。そう続いた言葉は少し寂しそうだったので、アタシは少し考えた。なんだなんだごはんは楽しむものだぞ。
「……お弁当、作ってきてあげよっか」
『⁉』
金色の目がまん丸くなった。すごく、猫っぽい。いや、一応猫なのだけど。
『撫子さんの! 手作りの! お弁当!』
「あんまり期待しないでね。作り慣れてないんだから」
『未来の花嫁の手作りが嬉しくない筈がないのですよ!』
……あんまりにも寅さんが嬉しそうなので、帰り、本屋でお弁当レシピブックでも買って帰ろうかな、なんて思ってしまった。
翌朝、母親に「雪でも降るんじゃないの⁉」って目ェひん向かれた。失礼な。
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