第22話 人間社会とは折り合いをつけないと
私は所謂平安時代の生まれだ。
当時の私は貴族。
その時代に、私はある日を境に食人鬼に変貌した。
人間以外食物として受け入れられなくなったのだ。
……理由は分からない。
切っ掛けは、ある朝。
隣で寝ていた当時の恋人が、何故かとても美味しそうに見えたので。
耐えきれず、食べてしまった。
私の食人方法は、自分の身体に融合させて取り込んでしまう、現在で言うところの柱の男方式というやつで。
食べ残しはなく、着物だけ残る。
後は着物だけ処分するだけで良かった。
なので、発覚しなかった。
……とても悲しかったが。
私は恋人のことが好きだったし、自分が人間の敵になるのも嫌だった。
なので、せめてこれからは社会に影響を与えない方法で生きていこう。
彼女はその決意をするための尊い犠牲になったのだ。
そう思わないと……
彼女の死が無駄になる。
勝手かもしれないが、そう思ったんだ。
……幸いだが、私は年間1人食えれば飢えることはない。
まあ、それは必要最低限。いつも、耐えられる程度の空腹感を抱えることが前提になるのだが。
平安時代は楽だった。
死んでも誰も心配しないし気にもしない人間がたくさん居たから。
河原の乞食だとか、旅坊主。
そういう人間を襲えば、問題なく生きていける。
だが
時代が進むにつれ、私には生きづらい世の中になっていく。
何なんだこれは?
全ての人間を国家が管理し、その人間の生死を把握。
陰に隠れて人を捕食するという行為がしにくくなっていく。
……人間の社会は、食人鬼に死ねというのか?
私は別に、好きで食人鬼になったわけじゃないんだぞ!?
私は社会と折り合おうとしているのに、社会の方は私に折り合おうとしない。
その理不尽さに、私は憤った。
そしてとうとう……
人間社会が、私の存在に気づいてしまった。
こんな危ない存在は生かしておけない! 殺してしまおう!
すぐそうやって騒ぐんだ。
ずっと恐れていたこと。
だから、策は用意していた。
それは……
自分の細胞からダミーを作り、そいつに人間たちの相手をさせ。
最終的に倒されるように調整すること。
……死ねば、私の存在も無かったことになり、とりあえずは解決する。
そう思っていた。しかし……
「鬼山! 追い詰めたぞ! この人間を食する悪魔め!」
食人鬼討伐隊の勘の良い青年が、私を倒すために打ち上げたという専用の刀で斬り掛かってくる。
それを私は自分の骨を変形させて作りだした剣で受け止めて応戦。
そしてこう言ったんだ。
「何が悪魔だ! 私のお前たち人間との折り合いを、悉く邪魔をして私の居所を奪っていった本当の悪魔どもめ!」
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