第16話 仮面ヒーロー

 目が覚めると、俺は悪の組織に拉致されて改造されていた。

 パンイチの姿で、俺は手術台の上で目が覚めたんだ。


 ……確か昨日、俺は学校そっちのけで手に入れたばかりの名作RPGを攻略していたハズ……?


 俺の傍には博士っぽい老人がいて、白衣姿のそいつが、俺に説明をしてくれた。


「お前はバッタをメインに、鷹と虎などの猛禽類、猛獣の遺伝子を組み合わせたハイブリット改造人間に仕上げた。あとは最後の仕上げをしてやる。……しばらく待っていろ」


 やせ細った老人の姿のそいつが、ニヤリと悪魔の笑みを浮かべてそう言って。

 その手術室を出て行った。


 俺はすぐさま理解した。

 その後に待っていることを。


 ……きっと脳改造だ!


 俺の意識は改造前と何も変わっていないんだ。

 身体は改造し終えたらしいし。あとはもう、脳改造しかあり得ない!


 逃げよう!


 俺は手術台に手錠と足錠で拘束されていたけど。

 しばらく考えて一言、ダメもとで「変身!」コールをしたら俺は変身して。

 その状態で力任せに引き千切ろうとしたら、アッサリいけた。


 ……よし! 逃げるぞ!

 脳改造なんてされてたまるか!


 起き上がり、あの博士っぽい老人が出て行ったドアから外に出ようとした。


 そこしか出入り口が無かったから。

 ……ここから出たら、多分敵がいっぱい襲って来るよな。

 でも、それを潜り抜けて行くしかない。


 ……行くぞ!


 俺の長所、決断の速さ。

 即決して、俺は部屋を出ようとした。


 そのときだった。


 あの老人が戻って来たのだ。

 ……一人の少女を連れて。




「おお! すでに拘束を引き千切っていたか! 素晴らしい行動力だ!」


 老人は嬉しそうだった。


 ……なんで?

 俺、今逃げようとしてるんだけど。

 立ち塞がる相手を軒並みブチ倒して。


 混乱する。だけど老人はそんな俺にお構いなしに


「それでこそ我々の最強の剣として期待できる逸材だ!」


 そう、捲し立てて、こう言った。


「……ところでキミは彼女が欲しくないかね?」


 ……え?

 そこでようやく少女の方に注意が行った。


 ……可愛かった。


 清楚な黒髪の、セミロング。

 目は丸く大きくて、小さめの輪郭。

 そしてスラリとした体形。

 ……胸の大きさ、腰の括れ、お尻の幅。

 とてもいい感じだった。


 年齢は高校生くらいかなぁ?

 着ているものが、妙な感じの全身タイツに似たスーツだから確証は無いけど。


 彼女は、潤んだ瞳でドキドキしているのか、女の子の顏で俺を見つめている。


 そんな彼女を見た感想。


 ……えっと、100点の女の子?

 俺的に。


 老人は言う。


「キミが我々の最強の剣である『エクスカリバー』の任を引き受けてくれるなら、この娘は君のものだ!」


 ……マジで?

 あんな美少女が俺のものになるの?


 ……


「なりまーす!」


 俺は即答した。

 決断の速さは俺の長所だ。


 俺の答えを聞いた老人は、満面の笑みを浮かべて


「やっぱ脳改造、洗脳よりも、本心でこちら側についてもらうのが一番だよ。歪な方法で味方にしても、そんなものは必ず破られてしまうしな。……やはり誠実が一番だ」


 そう、感慨深げに言ったのだった。

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