第9話

 大会本戦、朝から寝坊してコロッセオまでダッシュした。危うく失格になるところだったわ。

 本戦は準決勝までは余裕で勝ち上がった。というか昨日マオが言っていた三人以外は余裕だった。なんだろう、手応えが本当になかった。ということは強いんだろう。

 という訳で準決勝です。当たったのは大剣を持った蛇だった。芋けんぴの力を継続で使ってタコ殴りにしたら尻尾でもった大剣を振り回しすぎた蛇がそのままお空へ飛んで行って勝った。

 思った以上に時間が余ったのでそのまま次の試合のウサギと仮面を被った男の試合を観戦することにいた。

 その試合は一方的だった。ウサギが仮面を被った全身黒づくめをずっと殴りそれを受けている感じだ。このまま、ウサギの勝ちだろと思ったその時、黒づくめは叫んだ。


「くっ! 最終手段だ! 第三の目よ解放!」


 仮面を脱いだ黒づくめは目を大きく見開いた。


「この目は未来さえ見る! これでお前の行動は全て見え……あ、ちょっと待って!」


 ウサギはそんなことをお構いなしに物理とスピードでタコ殴りをした。ウサギの勝利。うーん、黒づくめの人が間抜けすぎたな。

 とまあ色々あって決勝戦になりました。俺はアナウンスで会場に向かう途中、ウサギがピョコピョコ会場まで歩いていた。


「あのー、ウサギさん。お互い全力で頑張りましょう?」


 ウサギはジッと俺を見る。


『対戦相手に声かけるのは良いけれどウサギさん困惑してるよ』


 そんなこと分かってるよ。でもなんか声を掛けたくなっただもの。こんなに可愛いんだよ?

 ウサギはその粒らな瞳で俺を見つめている。可愛い。


『かわいいな。モフモフしたいね』

「……モフモフしたい」


 マオにつられて口に出してしまった。その言葉に可愛くウサギは首を傾げる。


『モフれそうだね。モフって良いか聞いて見よいうよ』

「モフって……いいですか?」


 恐る恐る聞くとウサギはジャンプして俺の肩に乗る。


「わ、わわっ――なんだっ!」


 ウサギは耳を口元を近づける。


「――貴方、私と同じ匂いするね」

「え――?」


 ウサギは直ぐに俺の肩を降りて会場へと走り去った。


「今のどういう事だと思う?」

『うーん、簡単に考えるならあのウサギは私たちと同じ世界からやってきたって考えるのが妥当でしょう』

「そうだよね。でも、戦わないといけない相手でもあるのか……勝てるかな?」

『分からない、でも頑張ろう。野宿になりたくないのであれば』

「お~!」


 会場に出ると決勝戦という事もあり大歓声だ。

 ウサギは先に舞台の上に上がって仁王立ちで戦闘準備完了だ。俺も腰についているナイフを抜き、静かに構える。


「来い、芋けんぴ」

『私に力を』


 芋けんぴの子袋が現れると同時に消え身体がぽわぽわと温かくなる。身体強化が成功した合図だ。


「ウサギさん、貴方は僕と同じでこの世界にやってきたんですか?」


 答えてくれなくても良い、間違っていても良い。そう思って問いかける。


「ああ、そうだ。だが、私の正体を知りたければ戦って欲しい。その理由は終わった後にちゃんと言うから……どうかお願いだ。貴方が神から貰った力えを全部使ってくれないか?」


 そう言って一礼すると雰囲気が変わった。ウサギさんの後ろに青いオーラのようなものが見える。

 本当に本気で戦うつもりなのか。だとすると俺はどうすることが正解なのか。


『別に無視しても良いと思いますけど……似たような能力を持っていてウサギさんが本気を出すという事はこっちも本気で対応しないと最悪死にますね』


 と、マオは警戒している。


「じゃあ、最初っから本気の方が良いのか」

『だね』

「――分かった。来い、芋けんぴ」


 俺はマオの言う通り、本気を出すべく。芋けんぴの子袋を召喚しまくり、武器として大量の芋けんぴを空中に浮かせた。


「ありがとうございます。では、行きますよ」


 ウサギさんは何もないところから細長い薩摩芋を出し構えると同時に試合開始のコングが鳴った――。

 最初は俺もウサギさんも様子見で芋けんぴと薩摩芋で打ち合う。俺の芋けんぴは何回か打ち合うごとに消えるがストックをどんどん召喚していけば良いので大丈夫。

 先に仕掛けたのはウサギさんだった。


「往くぞ! 芋ブレードによる神聖な芋決闘によって人格破綻の芋を打ち倒す我が剣! 芋之剣、鳴動せし雷撃之太刀!」


 ウサギが宣言するとウサギの剣に空から雷が降りそれが剣に集まる。


「本気だよ。どうすれば良いんだよ!」

『パニくるな! こっちのやるしかないんだよ』

「――わ、分かった」


 俺も今まで一度も使っていない最終奥義で対抗するべく、天に手を差し向ける。真、魔法陣が現れ黒く影を落とす魔法陣が空に幾門と展開された。


「冥府を統べし常闇の使徒よ。今ここに力を貸し与えよ。怨嗟の果てに生み出されし絶剣の頂によって彼の者を討ち滅ぼせーー」


 暗雲から一筋の闇が、腕に絡みつき、大きな黒い剣を生成する。


「――宵闇の芋けんぴ」


 宣言すると同時に振りかぶる。黒い光線がウサギ目掛けてますっぐと飛ぶ。

 二つの芋の力がぶつかる。


「ああああああああああああああああ!」


 叫ぶ、ウサギ。黒い光線を雷を纏った剣で切ろうとする。

 拮抗する二つの芋の力――。

 俺とウサギさんは技の出力を上げる。最大出力になった時、二つの芋の力が爆破し世界を巻き込みながら空間が割れて飲み込まれた。

 戦っていた俺たちも巻き込まれるがウサギさんは少し口角を上げて喜ぶ表情をした。

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