第7話

『――とまあ、ザっと説明した感じですとこんな感じですかね。あのクソ神は見つけ次第、ぶっ飛ばしやるんだから』


 脳内に響く声は干し芋の神に対して怒りを露わにして投げやり気味にそう説明してくれた。その話をまとめると、まず最初にこの脳内に響く声の正体は俺のもう一つの人格――つまり、もう一人の俺であり、俺が淡い恋心を抱いていた相手でもある。何故、今まで話しかけてくれなかったかと聞くとあの干し芋の神が俺がピンチになるまで出れられない様に仕組んでたらしい。神がしたことなのでどうすることも出来なかったことが歯痒かったらしい。能力に関しても同じで俺がピンチにならないと使えない様にされていたらしい。能力ともう一つの人格はセットって訳だ。


「俺には二つの能力があるはずだろ。その能力の詳細って分かるか?」

『分かりますよ。ちゃんと二つあります。あのクソ神、私だけしょうもない能力にしやがって……』


 もう一人の俺に神が話していたらしく分かるようだ。しかし、ずいぶんと口調が悪いようだ。


『ああ、口が悪くてすみません。あのクソ神に人格同士で喋れるようにしたと聞いたときは跳ねる様に喜びましたが、いざ蓋を開けてみたらピンチになるまで会えませんって何事だよ。ゴミじゃねぇのあのクソ神――』


 もう一人の俺の長い愚痴が長かったので割愛。

 能力と詳細はこうだ。

 俺の能力は元の世界に買い置きしてある干し芋の子袋を呼び出してその芋けんぴで攻撃、回復、防御が出来るらしい。なんだそりゃ。

 もう一人の俺の能力は芋の声が聴こえるらしい。芋族の思考も読めるがあまりあってもなくても良い、無駄なの能力だ。


「――で、これからどうする? こんな大事起こしたんだ。ベニアズマさんのところにこのままお世話になることは迷惑になるのは確実だろうし」

『そうだね……割り切ることも大切だし、これからはあのクソ神をぶっ飛ばすたびにでも出かけようよ』

「それも良いかもね」


 ベニアズマさんの屋敷に戻ると屋敷の前には皆が立っていた。俺を見付けると駆け寄り、生きて帰ってきたことに安堵してくれた。俺は皆に事情を説明し今から旅に出る旨を伝えるとベニアズマさんから餞別として小さめな麻袋に詰められた薩摩芋十本と外套、日持ちする食べ物に着替えを貰った。


「こんなに貰って良いんですか……薩摩芋なんて貴重ですよね?」

「ああ、良いんだ。持ってけ。オデの畑で少量だか栽培してるがあまり使わないし、食べないからな」

「ありがとうございます」


 俺は泣いた。

 こんなにも優してくれたベニアズマさん達に感謝を伝える。


「ありがとう……ござい、ました!」


 その別れの言葉を最後に俺は屋敷に振り返ることをせず、神を殴る旅を始めた。

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