第11話

 彼女は悪くない。

 でも俺も何も悪くはない。

 なんなら、鷲森という姓を名乗ったご先祖様だって別に悪いわけではない。

 そう、誰も、誰も悪くはないんだ。悪い人なんてどこにもいない。

 時間が経って思い返すと、俺が彼女をロックオンしてしまうのはもしかしたら本能的に小鳥という餌食に見えたせいなのかもしれない、なんて、そんな穏やかではない言い訳を考えて呟いていた。

 さすがにそこまで思考が飛躍してしまった俺に、箭本も渡部も優しくしてくれた。

 持つべきものは友達だ、と本当にそう思った。

「俺は、良い友達に会えて幸せだ。」

 記憶があいまいなのだが、どうやら俺は無意識にそうも呟いたのだそうだ。箭本は、あの時はさすがに俺も泣きそうになったぞ、と言った。

 こうして一目惚れによる初恋はあっという間に砕け散った俺は、結果としてそれまで以上に名前を意識しながら恋には物凄く臆病なまま学生時代を終えた。

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