第7話
結局、俺は自分が何かの病気なのだと思い込んだ。翌週の授業のときにはもう動悸や手汗に加えて手や声が震えだした。箭本と渡部は俺の異変に気付いたらしく、心配そうに声をかけてくれた。
「それが・・・どうも俺、病気みたいなんだ。」
「まじか。どこが悪いんだよ?大丈夫なのか?」
心配そうな二人に、俺は思い切って症状を打ち明けた。
「動悸と手の震え。手汗。集中力が低下していて、食欲もなくて。」
「おい、本当に深刻だな。病院行っていないのか?」
「うん。まだ。っていうか、どこに行けばいいのかわからなくて。」
二人は顔を見合わせて心配そうに言った。
「とりあえず、医務室ついて行ってやろうか?この授業の出席は俺が先生に言っておくから。」
そう言われた俺はまたしても心臓がばぐばぐ言い出した。
「いや、この授業に出ない方が体に悪いみたいだ。」
そういいながら俺はもう入室してきた彼女の姿を目で追っている。
「無理するなよ、気分悪くなったらすぐ連れて行ってやるからな。」
そういって二人は俺のカバンを持ってくれて、出口に近い席に移動したのだった。
お陰で、いつもよりも少し斜め後ろから彼女の様子を見ていることができた。
授業が終わると、渡部が
「ぼんやりして全然ノートもとれてなかったな。大丈夫か?」
と気にしてくれた。俺が慌ててノートを写させてもらっていると、箭本が
「よ。どもども。」
と誰かに手を振った。退出する人の中に知り合いがいたらしい。
顔を上げると、明らさまな愛想笑いで手を振りながら女子が去っていく。
か、彼女だ!!
俺はもう気が遠くなって生まれて初めて耳鳴りを経験した。口から心臓が飛び出しそうだった。
箭本と渡部はその日一日、俺の体調がずいぶんと悪い様に見えたらしくあれやこれやと世話を焼いてくれた。
持つべきものは友達だと、そう実感した。
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