第2話
それからというもの、俺は異性を「姓」で選りすぐるという暴挙にでた。相手の性格とか容姿とか、そういうことは二の次だった。
まずは名前だ。
「一也」にしっくりくる姓をもつ異性を求めた。
もちろん、そんなことで選り好みできるほど俺はモテる人間ではないし、そもそもいかなる姓の女子であっても当時の俺と付き合ってくれるような子はいなかった。
今となればもっともだと思う。
そもそも姓を気にしていただけで、恋のかけらも芽生えていなかったのだから。当時の俺は、名簿を眺めては「一也」と相性の良い苗字を、そう、その字面だけを探し求めていただけだった。そんなだから、当然ながら一度も彼女はできなかった。
ただ一度だけ・・・まあ、これはちょっとした自慢に聞こえるかもしれないが・・・文化祭の実行委員を一緒にした女子から告白されたことがあった。当然ながら俺は人生初の告白を受けて浮足立った・・・のはほんの一瞬のことで、残念ながら俺は即座にお断りしなければならなかった。
何故なら彼女は最初から俺の恋愛対象には成り得なかったのだ。
彼女が「横瀬」という姓であったが故に。
今思い返しても、本当に俺は馬鹿な男だ。
そう思う。
高校時代の俺は、名前に執着するがあまりに青春を謳歌し損ねたのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます