第2話

 それからというもの、俺は異性を「姓」で選りすぐるという暴挙にでた。相手の性格とか容姿とか、そういうことは二の次だった。

 まずは名前だ。

 「一也」にしっくりくる姓をもつ異性を求めた。

 もちろん、そんなことで選り好みできるほど俺はモテる人間ではないし、そもそもいかなる姓の女子であっても当時の俺と付き合ってくれるような子はいなかった。

 今となればもっともだと思う。

 そもそも姓を気にしていただけで、恋のかけらも芽生えていなかったのだから。当時の俺は、名簿を眺めては「一也」と相性の良い苗字を、そう、その字面だけを探し求めていただけだった。そんなだから、当然ながら一度も彼女はできなかった。


 ただ一度だけ・・・まあ、これはちょっとした自慢に聞こえるかもしれないが・・・文化祭の実行委員を一緒にした女子から告白されたことがあった。当然ながら俺は人生初の告白を受けて浮足立った・・・のはほんの一瞬のことで、残念ながら俺は即座にお断りしなければならなかった。

 何故なら彼女は最初から俺の恋愛対象には成り得なかったのだ。

 彼女が「横瀬」という姓であったが故に。


 今思い返しても、本当に俺は馬鹿な男だ。

 そう思う。

 高校時代の俺は、名前に執着するがあまりに青春を謳歌し損ねたのだった。

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