椅子
夕日が差し込んでいるリサイクルショップに、心の惹かれる椅子があった。
質の良さそうな材木に、店内の淡いオレンジ色の日の光を受けて輝くニス。
高さもちょうどよく、男は半ば購入する気持ちで値札を確認した。
そこには500円と書かれていた。こんなに安いのは何か訳があるのではと思い、彼は店員にこの椅子について尋ねた。
案の定、店員は少し困ったような笑顔で答えた。
「この椅子の元の持ち主さん、別に亡くなったわけじゃないんですけどね? その、この椅子で自殺をしようとしたらしくて。首吊りで。それでこの椅子、0時になるとひとりでに倒れるんだそうです。『ガタン』って」
それでも購入しますか、と諦めるように店員は尋ねたが、男は意外にも
「こういうの、探してました。僕の心を押してくれる」
男はそれを車の後部座席に乗せ、家に持ち帰った。
生活感のないリビングの中心に、さきほど買って来た椅子を置く。
天井からはテレビの電源のコードが円形に結ばれてぶら下がっている。
男は椅子の上に立ち、コードを首にかけ、0時を待った。
そして、長針と短針が12を指す。
――ガタン。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます