おかあさん

 きがついたら、よるがきていました。

 ぼくはじぶんのへやにいて、ベッドでねてました。

 ”おかあさん”がきました。ぼくのじまんの”おかあさん”です。

 でも、ぼくとはちっともにていない。

 そのも、も、も、すべてぼくとちがいます。

 でも、このひとはぼくの”おかあさん”です。


 ――なんで、ぼくはこのひとを”おかあさん”だとおもうのだろう?

 にてないのに。

 ぼくがちいさいころの”おかあさん”とはちがうのに。

 

 ちいさいころ?へんだ。ぼくはいまがちいさいころなのに。

 じゃあ、このひとはだれ?

 とてもわかい。ぼくよりもずっとわかくみえる。

 ぼくよりも、わかい? それはへんだ。

 へんだ。

 へんだ。

 このひとは。

 ぼくは。

 おれは。

 一体、何なんだ。

 違う。違う。

 ここは俺の部屋じゃない。

 こいつは俺の母親じゃない。

 帰してくれ。

 ここはどこなんだ。

 お前は誰なんだ。

 なぜそんなに笑ってる?

 なぜ俺の手首とベッドは手錠で繋がれてる?


「もう起きちゃったの? まだ深夜よ、洸介こうすけ。ほら、お母さんが一緒に寝てあげるから」


 ――うん。

 おやすみ、おかあさん。

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