第258話 (完璧美)少女とわんちゃん
魔王座す町パンディムからポンコダンジョンへと帰って来た俺達は、情報を報告する為ルキの元へと向かった。
「ただいまー」
「ごぶ。ただいまごぶ」
「お?おっかえりー」
「お帰りなさいませゴブ」
魔王城の執務室へと入室すると、ソファーに寝そべったルキと立派な机と椅子に座った長老に出迎えられた。
「ん?おかしくないか?」
「え?あー、だってさー、ボクがするよりも長老がした方がはやいんだもん。だから、ね?」
「まぁ・・・一家に一台長老だからな。解らんでもない!が!お前もやれ!」
ルキが長老の優秀さに気付いてしまって手抜きをし始めていたので、俺は怒っておく。助けてもらう位は良いだろうが、丸投げは駄目だ。
という事で、今より仕事をしてもらう事にする。
「パンディムから情報仕入れてきたから聞いてくれ」
俺はルキへと仕入れてきた情報を話し始めた。ルキとしても生来の怠け者という訳でもないので、俺が話し始めると真面目に聞き始めてくれたので安心して内容を伝える。
「なるほどね・・・」
「ゴブゴブ・・・」
すると長老も話を聞いていたみたいで、書類を片付けつつ頷いていた。
俺は『やっぱり長老ってすげぇんだワ』と思いつつ、2人に意見を求めてみた。
「で、どうすればいいと思う?やっぱ候補者を探って強襲とかした方がいいか?」
「んー・・・いや、相手は仮にもボクを倒せるほどだからね。見つかるとも限らないし探すのは保留かな」
「ゴブ。それに相手は1人ですゴブ。逃げられたらまた振出しに戻るので探すのは儂もお勧めしませんゴブ。それよりは・・・」
「うん。それよりは
意見を求めてみると、ルキと長老は目で合図しながらウンウンと言いだした。が、俺にはさっぱり解らなかったので・・・
「ごぶ助(わかるか?)」
「ごぶ?・・・ごぶ!」
こちらもごぶ助とアイコンタクトで話をしてみた。
「ごぶ!勿論夕ご飯はお肉希望ごぶ!」
「・・・おう」
まぁ、全く持って伝わらなかったが。・・・何時もは伝わってるのに何故だろう?
と、ごぶ助の夕ご飯リクエストは置いて置き、ルキと長老へ
「で?それよりはなんなんだ?」
すると・・・驚きの答えが返って来た。
「一狼、魔王選でなよ。そんで魔王になって?」
「ふむ・・・ふむ?」
俺は何を言われたのかが直ぐに理解できず、宇宙猫みたいな表情になってしまった。いや、俺は犬なんだがさ。
と、深淵へと意識が浮遊していると、長老が追加の説明をし始めたため俺は意識を宇宙から地上へと戻し、話に耳を傾けた。
「一狼様、予知ですと相手は魔王になりこちらを攻めてきましたゴブ。ならそれは逆に考えると、『魔王にならなければこちらを攻めてこない』という事が言えますゴブ」
「あ・・・あぁ~!成程!そう言う事か!」
「ゴブ。まぁ、と言ってもそれは確実ではないと言えば確実ではないのですがゴブ」
「確かに」
ルキと長老が言った事はあくまで
「けど予知通りにならない可能性の方が高いよな。しかもパンディムの兵をゾロゾロ連れて来られるよりかは対処がしやすくなるはずだし、それに相手の計画が遅れるかもしれないもんな」
「ゴブ」
だがその方法をとってマイナスになる事は無いだろうと思い、俺は前向きに検討し始めた・・・のだが、言いたい事があったので言ってみた。
「めっちゃいい案かもしれないな、それ」
「でしょ?」
「けどさ・・・」
「ん?」
「ゴブ?」
「俺が魔王選に勝って魔王になるって言っても・・・確実じゃないよな?というか、無理なんじゃね?」
俺は問題としては致命的なそれを言ってみた。
しかもだ・・・
「そもそも魔王選って何するんだ?そこまで詳しく知らないんだが?」
そもそも論、俺は『魔王選』というのが何をするものなのかを知らなかった。断片的に知っているのは『優勝という概念があるので試合やコンテストの様なモノ』くらいだ。
「力isパワーの魔族だから武闘会でもするのか?いや、流石にそれは無いか?」
だから適当に内容を言ってみたのだが・・・
「いや、やる事は正にそれだね」
「えぇ・・・」
何と当たってしまった。
(本当にそれでいいのか魔王の決め方・・・)
「あ、いや、戦って強い奴が魔王って言う訳じゃないからね?安心して?」
「良かった・・・」
少し遠い目をしながら『魔族ェ・・・』と思っていると、ルキが追加情報を話し出してくれる。どうやら本当に戦いだけで決めると言う事ではない様だ。
「えっとねー・・・」
その内容をまとめるとこうだ・・・
◎知能テスト。
・魔王ともなると流石に少しは学がいる様で、簡単な学力テストがある。ここで酷すぎると失格。
◎演説。
・皆の前で演説をし、そこで明らかにやべぇ奴だと失格。
◎戦い。
・魔王は強くなくてはならないので戦う。が、必ずしも勝ち残った者が優勝という訳ではないらしく、観客判断になるらしい。とは言っても、大体が勝ち残った者が魔王になるらしい。
と、概ねまとめるとこの様な感じだった。
「成程な」
「まぁ、ボクみたいに他に人を雇って仕事するだろうから知能テストとかは本当に最低でもいいし、死んだ前魔王が就任したように演技して演説通ったりもするんだけどね」
「ふむふむ」
終わった後、更に補足として教えてくれたが・・・確かにという内容だったので頷き、それらを加味して考えてみる。
・・・考えてみたのだが、やはり俺は魔王に選ばれる自信が今ひとつなかった。
なので俺は、俺より魔王に相応しいと思う人物へと尋ねてみた。
「っていうかさ、俺じゃなくてルキが魔王選出ればいいんじゃね?賢いし(多分)口が達者(口調は緩めだが)、それに強い(予想)じゃん。あ、後可愛い(子供の様でマスコット感がある)」
「えぇ~・・・そんなに褒められちゃったら困っちゃうなぁ~・・・ンフフフ」
ルキも
とまぁ、煽てられると弱いのならこのまま乗せた方がいいだろうと考え、更にヨイショしていく。
「本当の事じゃないか完璧美少女魔王ルキよ。だからこの際自称魔王ではなく、本当に魔王の称号取りに行こうぜ?な?」
「ンフフ。ボクってば完璧美少女魔王かぁ~。いや~我ながら自分の才能と美貌が怖くなっちゃって来たよ。よっし、そこまで言われたら仕方がない」
「お?」
強い奴はどうしてこうも煽てに弱いのだろうかと俺は不思議に思ってしまう。いや、もしかしたら俺には才能があるのかもしれない。・・・あぁ、合ったわ詐じ・・・いや、話術。
とまぁ兎に角だ、これで魔王選とか言うヤバそうなイベントに出なくて済むので、俺は胸を撫で下ろした・・・
「だが断る!」
「え?」
のは間違いだった様で、何処かの漫画家の様な事を言われてしまった。
「いや~ごめんね?別に安心しきった奴を突き落とすために断った訳じゃないんだよ?」
「な・・・ならなんでだ?」
「万が一に備えて・・・さ。予知だとボク負けてたじゃん?」
「ああ」
「そんな奴が万が一ボクが居ない間にここに攻めて来たら確実終わりじゃない?だからボクがここを離れるのは良くないと思うんだよね~」
「あぁ~・・・成程」
愉悦を感じたかったのではなくちゃんとした理由があった様なので、俺は納得し頷いた。
だがそうなるとやはり俺が魔王選に挑むしかない様だ。
「本当にごめんね?一狼はボクが究極美少女魔王になるのを願っていたみたいだけど、それはまた今度ってことにしといてよ、ね?」
「いや、究極美少女は他にもう居るから大丈夫だ。ふぅ・・・なら頑張ってみるかぁ・・・」
「えっ?」
「ごぶ。修行するごぶ」
「だな。うっし、んじゃ俺達は行くわ。じゃ、また」
「えぇ???」
今までうだうだと言っていたが、逃げ道が無くなった事で俺の覚悟は決まった。
俺は魔王選に備えるべく、早速行動を開始する事にした。
・
・
・
尚、俺達が去った後にルキが『酷くない?』と長老に言っていたそうだが、俺の中の究極美少女はエペシュたんに決まっているので、後で『酷くないです』と返しておいた。
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作者より:読んでいただきありがとうございます。
「面白い」「続きが気になる」「るきちゃんはびしょうじょ」等思ったら☆で高評価や♡で応援してください。
☆や♡をもらえると ごぶ助が 超越美少女に進化します。
こちらも連載中です。↓『悪役令嬢は嫌なので、魔王になろうと思います。』
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