第257話 未来予知とわんちゃん
「あの子から聞いたのは以上さ」
「ふむ・・・」
ルキから緊急事態だと言う事を聞いた俺達は、慌てて悪鬼ダンジョンから引き揚げた。
そして自分達のダンジョンへ着くなりルキへと会いに行き、聞かされたのが・・・先程の『とある未来の出来事』だった。
「ちょっと待ってくれな・・・一旦考えさせてくれ」
「りょーかい」
先程の事があまりにも衝撃的な内容だったので、俺は考えをまとめる為ルキへとそう言うと目を瞑り、再度先程の内容を反芻してみた。
(攻め込んできたのは魔王と言う事だったな。更に理由も無く・・・いや、理由はあるのか?んー・・・でも話からすると典型的な脳筋魔族の線もあるか?しかしルキに勝てるほどで脳筋だったら、タチが悪すぎるぞ)
しかし反芻した所で解ったのは、『攻めてきたのは魔王』『強い』くらいだ。いや、後『少なくとも攻めて来るのは半年ほど後』と言うのもあったか。
「しかし今回は半年くらい後の事が予知できたんだな?前聞いた感じだと1週間とかそこらだと思ったんだが?」
「ん?あー、偶にだけどかなり先の事もあるみたいだよ」
「そうなのか。っとまぁいいや、相手が来る時期が魔王選がある半年後位なら、それまでにダンジョンを移動させてしまえば万事解決だ。って事で、緊急会議終了な」
攻めて来るのが明日とかなら無理だったかもしれないが、半年も余裕があるのならそれまでにトンズラをコケバいいと俺は対処方法を言ってやった。
「ダンジョンに住処を作ると直ぐ逃げれると言うメリットもあるんだ。すげぇだろ?」
俺は『ダンジョンってすげぇだろ?』と言う意味を込めてドヤ顔を決めてやった。
が、直ぐに真顔となった。
「いやいや、それが出来たなら緊急って呼び出さないし。それが無理だったから呼び出したんだよね」
「は?」
「いやね、ポンコに聞いてみたら『リソースが足りないデス』だってさ。張り切って作ったばっかりだから、現状維持だけでカツカツだって」
「あ、はい」
こんなに簡単に思いつく事が思いつかない筈もなく、ダンジョンを移動させる案は既に検討した後だったらしい。
しかし匠が張り切り過ぎた事もありリソース不足、魔王選が終わる半年後だと回復していない可能性の方が高いとの事だった。
「ま、あの予知が1年、2年先とかだったらいいんだけどさ、楽観視するのは危険っしょ?」
予知の話だと規模が規模だ。細心の注意を払って行動するほかない。が、そうはいっても情報が少なすぎるので、このままだと動くに動けない。
「だな。ふむ・・・じゃあ・・・」
・
・
・
考えた結果取りあえず再度あの町『パンディム』へ情報収集に赴く他ないと言う事で、翌日俺達は町へと出向いた。
「次ぃ~!ん?あぁ、その間抜け面はいつぞやの・・・」
入口で門番にまたもや『○ァック!』と叫びそうになったのをこらえ、俺達は例の場所へと向かう。
「大将やってるぅ?」
「未だ開店準備中デース!・・・ンー?オーッ!イチローさん達じゃありませんカー。如何したんデース?」
いやまぁ、普通にヤマトさんの店なんだがさ。・・・俺達にはこの町に他に知り合いが居るわけでもないので、選択肢がここか役所くらいしかないのである。
「いやね、ちょっと聞きたい事があってさ」
「オー、何ですカー?あぁ・・・娘に彼氏はいませんガ、許しませんヨ?」
「そんな事聞いていないが?」
俺達は少し頭がピキピキしていたヤマトさんに事情を話してみる。
するとヤマトさんは2本の腕を組み、残りの2本の腕で顎、頭に触りながら考えだした。
「そうやって考え事するのね・・・」
「面白いでショー?アー、それで、何が知りたいんデース?」
「魔王選の候補者の中に、さっき話したような奴がいるかが知りたいんだ」
「見た目がヒューマンみたいで、羽がある奴デスカー。フーム・・・」
「解らなかったら役所に行って来るからアレだが・・・」
「アア、イヤ、思い出しましタ。2人それらしき奴が居た筈デース」
「ふむふむ」
ヤマトさんはそう言ってその2人を教えてくれたのだが、2人とも微妙にルキから聞いた特徴と違っていた。
「片方は完全に人間・・・ヒューマンみたいな男『ヨフィエル』と羽があるが尻尾もある男『ルーファス』か」
「イエース」
ヤマトさんが噂で聞いた限りではその2人が該当する人物らしく、他の者はヤマトさんの様に手足が多かったり、獣の様だったりと当てはまらないとの事だった。
と言ってもこれらはヤマトさんが実際に見て知っていると言う訳ではなく、店の客等から聞いた話による人物像との事だった。
「しかし大きくは外れていない筈デース。一応、簡単な似顔絵が描かれたお知らせが出回っていましたしネー」
「ふむふむ。あ、じゃあさ、そいつらが何処にいるとか知らないか?」
そう言う事ならヤマトさんの話に間違いはないだろうと考え、俺は2人の人物に狙いを絞った。
そして2人の人物へと『鑑定』を掛けたら確定するだろうと思い、2人の居場所を知っているかと尋ねてみる。
「ソーリー。流石にそれは知りまセーン。あ、何ならお店のお客さんに聞いてみましょうカー?」
「そうだな、そうしてもr・・・あ、いや、辞めておこう。それは聞かないでいい」
「そうですカー?」
すると知らないが尋ねてくれると嬉しい提案をしてくれたのだが、俺はそれを拒否しておく。と言うのも、相手がヤバメの人物だからだ。
「ああ。下手すると『何故俺を探っている』とか言って、ヤマトさんどころか奥さんと娘さんに害が及ぶ可能性もあるからな」
「アー・・・確かに無くはないですネー」
ルキに聞いた話だと相手はかなりのサイコ野郎らしいので、俺の考えている事はあり得なくもないのだ。
「ありがとなヤマトさん。また来るわ」
「イエース。今度はご飯食べに来てくだサーイ」
なので俺はヤマトさんからの情報収集はこの辺りにして、役所の方へと行ってみる事にした。
「ごぶ。なんならお昼はヤマトの所で食べるごぶ」
「うむ。それがよいじゃろ」
「了解了解。けどまずは情報収集な」
雑談をしながら町の中央方面へと歩いていき、魔王城に隣接された役所へと着くと前回同様、お知らせが乗っている掲示コーナーへと足を運んだ。
「ヤマトさんが言ったお知らせもあるといいんだが・・・」
『町のお知らせ』や『付近の魔物・盗賊情報』等もあったが今は省き、魔王選関係のモノだけをペラペラと調べていく。
するとヤマトさんが言っていた似顔絵入りのお知らせもあったのだが・・・
「デ・・・デフォルメが過ぎる。これじゃあわからんな」
その似顔絵はかなり簡単なモノで、大体の雰囲気くらいしか掴めそうになかった。だが一応と言う事で貰って行く事にする。
「ごぶ。勝手に持っていっていいごぶ?」
「ああ。それ用の奴だからな。でも一応は聞いておくか」
その際、役所の人間へと持ち出しの許可を聞くと同時に候補者の事も尋ねてみた。嗅ぎまわると危ないんじゃないのかいと思うかもしれないが、役所だし候補者の事が知りたいと言っておけば大丈夫だろう。・・・多分。
「他の場所から魔王選の為に出て来る方もいらっしゃいますから何とも・・・」
「そうか。ありがとう」
「いえいえ。また何かありましたらどうぞお尋ねください」
だが芳しい答えは返って来ず、候補者の事は直接鑑定する事は出来なさそうと言う結果となった。
しかし魔王選に関する情報自体はソコソコ仕入れる事が出来たので、これを持って俺達はダンジョンへと帰る事にした。
・
・
・
「ごぶ。ヤマトの所でお昼食べるごぶ!」
「あ、うん。そーね」
訂正。魔王選に関する情報を仕入れたので帰ろうとしたが、その前にヤマト屋へと行ってお昼を食べる事にした。
そして食べ終わり満足した所で、俺達はダンジョンへと帰る事にした。
------------------------------------
作者より:読んでいただきありがとうございます。
「面白い」「続きが気になる」「娘はやらん!」等思ったら☆で高評価や♡で応援してください。
☆や♡をもらえると ヤマトが 娘を嫁にくれ・・・ません。
こちらも連載中です。↓『悪役令嬢は嫌なので、魔王になろうと思います。』
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます