第259話 インテリジェンス&パワーとワンチャン

 魔王選の準備を開始した俺達は・・・また悪鬼ダンジョンに居た。


「まぁ俺ってばインテリジェンスは溢れてるからな。今必要なのはパワーだろパワー」


 学がいると言ってはいたが、脳筋野郎でも通るテストだ。前世で一応大学を卒業している俺の壁にはならないだろう。

 なので今必要なモノは力だと考えた俺は、再びレベル上げ作業に戻って来たわけだ。


「ごぶ。確かにパワーは重要ごぶ。でも相棒、先に受付やって来なくて良かったごぶ?」


「ぁ・・・。お・・・おう!あれだ!今の時間から役所行っても閉まってそうだったからな!明日を昼で切り上げる事にして行こうと思ってたんだワ!」


「ごぶごぶ」


 インテリジェンスも時にはうっかりするものなのだ。


 ・・・という事で、明日は探索を早めに切り上げてパンディムへと行く事にした。が、それは明日の予定。今日は頑張って続きを探索していこうと思う。


「28層もこれだけ探索したら終盤な筈。頑張ろう」


「ごぶ!」


 因みに現在の階層は26階層のヴァンパイアが居た階層から少し進み、28階層となっており・・・



 名前:

 種族:レッドキャップ

 年齢:-

 レベル:28

 str:1403

 vit:811

 agi:1395

 dex:1218

 int:639

 luk:310

 スキル:短剣術 脚力強化・小 血の快感 

 ユニークスキル:

 称号:血大好き


 名前:

 種族:瘴鬼

 年齢:-

 レベル:28

 str:1299

 vit:1093

 agi:1116

 dex:971

 int:991

 luk:241

 スキル:不浄の衣 腕力強化・小 爪術 再生・小 

 ユニークスキル:

 称号:地獄から来た者



 敵の強さがこんな感じで、未だ俺達のステータスを上回ってはいなかったが大分近づいて来ているといった具合だ。

 ああ、因みに敵のスキルなんだが・・・



『スキル:血の快感

 ・血を浴びれば浴びるほど快感を感じ痛覚耐性・ステータスに補正がかかる。』


『スキル:不浄の衣

 ・瘴気を身に纏う。攻防時、敵に瘴毒を付与できる。』



 こんな感じとなっており、このスキルの所為でステータス以上の強さとなっていた。


「ま、しっかりと対処すればそうでもないんだがなっと・・・ごぶ助!レッドキャップ2と瘴鬼が1だ!レッドキャップの方を頼む!」


「ごぶ!」


 だがしかし、要はスキルを上手く活用させなければステータス通り位の強さしかないので・・・


「ごぶ!まだまだ甘いごぶ!それにリーチが足りないごぶよ!」


「「ギッ!ギギャァッ!」」


 短剣を巧みに使って来る奴らには、それ以上の剣術を使うごぶ助を当て・・・


「多少硬いし攻撃をうけりゃあ厄介だが・・・こうするとどうよ!?敵をすり潰せ黒風!そしてついでに燃えちまいな!ファイアースロアー!」


「ギャァァッァアアアッ!!」


 瘴気を纏う敵には俺が魔法を使い遠距離で戦えば・・・


「ごぶ!余裕ごぶ!」


「こっちも負傷0で片が付いた」


 この様に苦戦や負傷を負う事無く、余裕で倒す事が出来ていた。

 と言っても最初からこんなに余裕で戦えていた訳ではなく、幾度か戦い負傷を負いながら得た結果なのだが。


(最初は勝手が解らずゴブリンライダーフォームで戦っていたから、かなり手ひどい反撃を受けたもんなぁ・・・)


 要するに、ステータスでごり押しが効くのはこの辺りまで、という事なのだろう。

 となるとだ、俺は少し考えてしまう。


「ん~・・・」


「ごぶ?」


「いやな、別に俺達は強い奴と戦いたいわけじゃなくてレベルアップをしたいだけだから、この辺りで周回した方がいいのかな~ってな」


「ごぶごぶ」


 そう、効率の問題である。


「強い敵をチョコチョコと狩ってドカンと経験値を稼ぐ方か・・・。それとも弱い敵を一気に狩って稼いだ方がいいのか・・・う~ん・・・」


 どちらの考えも間違いではない故、余計に悩んでしまう所だった。

 これがゲームであれば攻略情報を調べて比較したりするのだが・・・


「ま、悩んでても仕方ないか。進んで丁度いい塩梅っぽい所探すか」


「ごぶ」


 しかしそんなものはある筈もないので、取りあえずいい感じの所が見つかるまで進もうとごぶ助へと提案し、俺達はダンジョンの奥へと歩を進めた。


「ワンチャン、稼ぎ用の魔物でも配置してくれてねぇかなぁ・・・」


 ・

 ・

 ・


 あれから更に数日が経ち、経験値稼ぎに適した場所を探して探索を続けていた俺達だったのだが・・・未だいい場所が見つからず、30階層にまで降りて来ていた。

 30階層ともなるとボスが出る確率が高く、更に次の階層から敵の強さが跳ね上がる確率も高くなるため、『出来ればこの辺でいい感じの敵出ないかなぁ・・・』なんて思っていた・・・そんな矢先・・・


「って今の奴、そうなんじゃね?」


「もぐ?・・・もぐもぐ。ごぶ?」


 遂にいい感じの敵を発見してしまった!・・・いや、まだ恐らくだったが。


「いや、今さっきチラッと敵見えただろ?あれがなんか経験値を良くくれる気がするんだ」


「ごぶ?一瞬で消えた奴ごぶ?」


 30階層は敵の反応が少なく、見つけたのは・・・『剛鬼』という、以前出てきた『鉄鬼』の強化バージョンみたいな、ごりごりの物理パワータイプの強い敵だった。

 そしてこの『剛鬼』なのだが、物理パワータイプというだけあり速度はあまりなく、『索敵』でも動きは緩やかだった。


(1種類しか敵が居ない階層もあるから、ここもそうなんだなぁくらいにしか思っていなかったけど・・・あれは確実に剛鬼じゃなかった。シルエットも小さかったし、別物だ)


 しかしだ、先程一瞬だけ姿を見せ、『索敵』の範囲内からも脱兎のごとく消えていった反応は確実に剛鬼ではなかった。

 いや、それだけなら普通『ああ、素早い敵もいるんだな』と思うだけなのだが、俺には確信があった。

 それというのも・・・


「そうそう、さっきのみたいなやつだ」


 そう、今まで『悪』ダンジョンと言うだけあり鬼の魔物しか出てこなかったのに、先程の素早い魔物はの形をしていたのだ。

 しかもウサギ型の魔物と来れば・・・


「初期のポンコダンジョンに『四つ葉ウサギ』っていただろ?アイツみたいに特殊な魔物じゃないかなって思うんだ」


 かなり懐かしい記憶だが、初期のポンコダンジョンで俺達は『四つ葉ウサギ』という魔物と遭遇した事がある。コイツは4匹倒すと特殊な称号が手に入った魔物で、今の俺達があるのもあいつのお陰と言っても過言ではない魔物だった。

 そしてそんな魔物がこの鬼に関連する魔物しか出ないダンジョンに居たのだ。これはもう、『稼ぎ用の魔物だよ』という天からの啓示だろう。


「ってなわけで、ちょっと今さっきの奴を倒すまで粘ってみようぜ。ボス部屋見つけても突っ込まずにさ」


 なので俺はごぶ助へとここで少しレベルアップ作業をする事を提案してみた。

 するとごぶ助は2つ返事で了解をしてくれたので、俺達は先程のウサギ型っぽい魔物を倒す事にしたのだが・・・


 ・

 ・

 ・


「中々見つからんな・・・『索敵』に反応があったとしても、即逃げやがるし・・・」


「ごぶ」


 ウサギ型の魔物を倒す事は難航を極めていた。

 ただでさえ個体数が少ない上に物凄く素早く、更に俺達の気配を察してか索敵の範囲に入った途端逃げていくのだ。


「っくぅ・・・あの時影が見えたのは運が良かったのか・・・ちくしょう・・・」


 そんなあまりの難易度に、俺は地団駄を踏んでしまう。


「ごぶ。ごぶぶぶぶ。ごぶっ!」


 そして地団駄を踏んでいると上に乗ったごぶ助が揺らされ、ごぶ助が齧っていたおやつが降って来た。


「って、おやつを食っとる場合カァーッ!?・・・ん?おやつ?」


 が、しかし、ここで俺の頭にある閃きが浮かんだ。


「そう言えばあの時も・・・ふむ・・・これはいけるか?」


「もぐ?もぐもぐ・・・」


「ふむむ・・・」


 その閃きは俺の記憶を刺激し、少し前の一場面を思い出させた。そして俺はその記憶を元に、ある作戦を練り上げた。


「よし、物は試しだ。やってみよう」


「もぐ?」


「っていつまで食ってんだよ。・・・まぁいいや、ちょっとごぶ蔵に用があるから、一旦帰ろう」


 その作戦にはごぶ助ではなく、ごぶ蔵の協力が必要だったため、俺は一旦ダンジョン町へと戻る事にした。


 そしてダンジョン町へと戻ると俺はごぶ蔵へと事の経緯を話し、ある物を用意してもらった。

 そして用意してもらうと、それを持って再び悪鬼ダンジョンへと戻った。


「ごぶ?なにするごぶ?」


「ん?まぁ見てな。これをこうして、んでこうで・・・っと、よし完了だ。後はっと・・・」


 悪鬼ダンジョン30階層へと戻ると、俺はごぶ蔵に用意してもらった『魔石と野菜で作ってもらった料理』を通路へと放置し、少し離れた所で『レモンの入れもん』を使い、レモン型の入れ物も設置した。

 そして両方の設置が終わると、レモン型の入れ物を使いレモン空間へと入った。

 すると、そこまでの過程で俺が何をしているのか気づいたごぶ助がハッとし、俺がした事を口に出した。


「ごぶ?・・・罠ごぶ?」


「正解だ」


 そう、俺が考え付いた作戦とは『罠猟』だった。


「最初姿を見せた時ごぶ助何か食ってたじゃん?それでもしかしたらと思ってな」


「ごぶごぶ」


 因みにこの罠猟、目標が食べ物につられると言うのは完全なる推論で、全く根拠はなかった。が、他に方法も無いので、取りあえず試してみる事にしたのだ。


「ダンジョンの魔物が好きな魔石と、ウサギが好きそうな野菜を使って料理を作ってもらったんだ。かかる可能性はある筈・・・」


 これも昔の記憶だが、魔石を近くに投げた時、ダンジョンの魔物は魔石に引かれていた。つまり魔石に群がる習性があるという事なので、それを使った料理ならばかかる可能性は無きにしも非ずだ。

 なので俺はごぶ蔵へと頼み、トンデモユニークスキルで魔石と野菜を合体させた料理を作ってもらったのだが・・・後は天に運を任せるのみだった。


「罠猟って言っても、ここが奴の移動ポイントかもわからないからなぁ」


 普通罠猟をする場合には相手に餌を気づかせる為獲物の通り道へと仕掛けるのだが、俺は獲物の通り道が解らない為適当に仕掛けた。

 なので相手が通るかどうかが完全に運任せになる訳だが・・・


「ごぶ。あれ、そうじゃないごぶ?」


「その様だな!!」


 そこはそれ、剛運ゴブリンごぶ助さんの力があるので心配ご無用だった。更に・・・


「ごぶ。何かビクビクしだしたごぶ」


「その様だなぁ!!行くぞおらぁ!!」


 料理に仕掛けておいた毒も効いた様だった。

 とはいえど、この毒は麻痺毒だし、相手も完全にマヒしている訳ではなさそうだったので・・・


「氷の壁よ!行く手を阻め!」


 俺はレモン空間から出るなり魔法を使い、相手の逃げ道を防いでやった。逃げるウサギ型魔物のセオリーである。


「キュ・・・キュー・・・!」


「へへへ・・・もう逃げられないぞウサギちゃんめ・・・」


「ごぶ。大人しくお肉になるごぶ」


「いや、経験値になってもらわないと困るんだが?っと・・・どれどれ」



 名前:

 種族:幸運ウサギ

 年齢:-

 レベル:777

 str:777

 vit:777

 agi:7777

 dex:777

 int:777

 luk:777

 スキル:逃げ足

 ユニークスキル:脱兎

 称号:食いしん坊ウサギ



 取りあえずと思い『鑑定』を掛けてみると、ステータスは結構バグっていた。恐らく麻痺毒が効いていなかったら、魔法が発動する前に逃げられていただろうと、そんなバグり具合だった。


「けどなぁ、ウチのごぶ蔵の料理もバグってんのよ。って事で、大人しく経験値になりな!」


 しかし毒にかかればそのステータスも発揮される事はない。という事で俺は幸運ウサギへとトドメを刺そうと近寄って行くのだが・・・


「ごぶ!おにくごぶぅぅ!!」


「あ、っちょ!」


 いつぞやの記憶を思い出したのか、ごぶ助が俺の背中からジャンプし、そのまま切りかかろうとした。

 それに俺は経験値配分を少しでも多くするため、慌てて攻撃を加えた。


「・・・ギリセーフ。・・・ぉ?」


 そしてそれは間に合ったようで、俺の体は少し熱くなり、更に・・・


「・・・お?おおっ!?おおおぉぉぉっ!?!?」



 ステータスを確認するとそこには・・・≪進化可能≫の文字があった。



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 作者より:読んでいただきありがとうございます。

「面白い」「続きが気になる」「おいおいおい!来たナぁオィい!」等思ったら☆で高評価や♡で応援してください。

 ☆や♡をもらえると 一狼が ジロウに進化します。


 こちらも連載中です。↓『悪役令嬢は嫌なので、魔王になろうと思います。』

 https://kakuyomu.jp/works/16816927860702355532

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