第254話 呪われたごぶ助とわんちゃん

 よくよく思い返せば、確かにそんな感じだったのだ。

 曲がり角があったりもするが直線ばかりの通路、進むと絶対現れる小部屋、そこに落ちているアイテムに、なぜか時々眠っていた魔物達。更にこの魔物達は通路で出会うと、姿は見えている筈なのに3,4メートルくらいまで近寄らないとこちらに気付いた素振りもせずにただ歩くだけだったのだ。


「んでさらに呪われた装備って・・・マジで、何処のローグライクゲームだよ」


 これらの事から、俺の頭の中にはこの階層がどう考えても髭のぽっちゃり商人が主人公のローグライクゲームとしか思えなくなってしまい、ついつい叫んでしまっていた。


「ごぶぶぶっ!離れ無いごぶ!」


 が、相棒であるごぶ助はそれどころではないらしく、手から離れない呪われた武器をブンブンと振り回していた。

 俺はそれにハァっとため息を吐き、手から離れない原因を教えてやった。


「ごぶ助、ソレ呪われてるから離れないんだよ。頑張っても多分取れない」


「ごぶ!?」


「取るためには解呪のアイテムが必要だ」


 呪いを解く様な魔法が使えたのならいけるかもしれないが、生憎と俺はそんな魔法は使えない。なのでゲームのセオリーに従い、呪いを解く巻物か何かを手に入れるしかないだろう。


「取りあえず探索を続けよう。くまなく回ればあるかも知れないし、ワンチャン次の階層もこんな感じで、そこに落ちてるかも」


「ごぶ・・・」


 俺は吃驚していたごぶ助を説得し、解呪のアイテムがあると信じて探索を続けることにした・・・のだが、ローグライクゲームをしたことがある人ならこう思う事だろう。


『結構無謀な挑戦だぞ、それ』、と。


 ・

 ・

 ・


 ローグライクゲームは色々あるのだが、拾ったアイテムは名前だけが解る状態という作品が殆どだ。更にその中にはその名前すらも適当で、効果は使ってみなければ解らないという作品もある。

 そしてどうやら俺達が居るここもその様で・・・


「ごぶっ!ごぶっ!?火が出たごぶ」


「・・・外れだな」


 落ちているアイテムを鑑定しても『○○のスクロール』としか表示されず、使ってみないと効果が解らなかった。あ、因みにパンだけは例外の様で、腐っている等が表示された。・・・いやまぁ見たら解るか腐ってるパン。


「次行こう」


「・・・ごぶ」


 そんなこんなで・・・ごぶ助が呪われてから6時間、23層を出発してからは8時間程が経過していた。

 しかし先程のやり取りを見てくれたら解ったとは思うが未だ解呪のアイテムは見つかっていなかった。

 そんな事もあり、俺は念のために降りて横を歩いているごぶ助と愚痴りながら歩いていた。


「厄介だから早く見つかってほしいなホント。けど直ぐ壊れるとか、使い物になんねぇもんなぁ」


「ごぶごぶ。こんなのごぶ助カリバー2とは呼べないごぶ。精々ごぶ助カリパーごぶ」


 この呪いの武器なのだが、敵に切りつけるとあっさりと折れ・・・そして即座に

 一見聞くと『自動修復とか・・・ええやん?』となるのだが、問題は敵を折れてしまうので、ダメージが小さな打撲程度しか与えられない点だった。それでいて外せないのだから・・・まさに呪いの武器だろう。


「はぁ・・・でもあれだな、呪いの盾と一緒に拾って一緒に装備しなかっただけ良かったか」


 これでもしも『敵の攻撃を受け止めきれず壊れるが、直ぐに修復し手から離れない盾』を装備していたのなら、いくらごぶ助と言えど戦闘力が激減になるだろう。

 なので『そこだけはセーフだったな』なんて事を思い浮かべ、俺は呟いた。・・・


「・・・ッハ!?いやいや、違う。違うよ?」


 俺はそれに気付き、誰ともなく言い訳をしてしまう。いや・・・解るだろう?だってこんな事を言うとさ・・・


「ごぶごぶ・・・あ、盾が落ちてるごぶ」


 そう・・・こういう事が起こるからだ。


「は?ちょ!まっ!」


「ごぶ?『デロデロデロデロ、デッデデロン』ごぶっ!?」


「オーマイゴォ・・・」


 フラグを建てた方が悪いのか、それとも実行した方が悪いのかは解らないが、俺は俺達の迂闊さを嘆いてしまった。

 そして同時にやる気パワーみたいなものを全部失ってしまった気がしたので・・・


「今日はもう帰ろっか・・・」


「ごぶ!?」


 俺は帰宅する事にした。


 ・

 ・

 ・


「うし、今日はフラグを建てない。建てないぞぉ~」


 翌日、やる気パワーが充填されたので探索を再開する事にした。

 ああ、因みになんだが、誰も解呪の魔法を使う事が出来なかったので、ごぶ助は昨日剣と盾を持ったまま過ごす事になってしまった。

 そんな状態なのでごぶ助はご飯も食べる事が出来ず、俺が介護する羽目になってしまった。え?犬がどうやって介護するのかって?そりゃスキルを使って変身したんだ。流石に犬の手じゃ無理だったからな。


「ごぶごぶ!」


 だがそんな介護状態がごぶ助はちょっと楽しかったらしく、朝からちょっとテンションが高かった。・・・反省してくれ!


「まぁでも、そのお陰で変身を初めて見たルキとかの驚く顔が見れたから、許してやろう・・・ふふふ」


「ごぶ?」


「いや、なんでもない。行こうぜ」


 思い出し笑いをしていると不思議な顔をされたので気持ちを切り替えて歩き出すのだが、俺は直ぐに妙な点に気が付いてしまった。


「あれ?」


 俺は辺りを見回すとちょっと考え、その後『ちょっと待っててくれ』と言ってごぶ助をその場に残し、昨日通って来たであろう通路の方へと駆けていく。

 そしてそのまま通路の先の小部屋まで行ったのだが、そこをみて確信した。


「あー、そう言う事」


 俺は謎が解けたのでごぶ助の元へと戻り、解ってしまった残念で目出度い事を話す事にした。


「ごぶ助、良い話と悪い話、どっちが聞きたい?」


「ごぶごぶ。良い話ごぶ」


「了解」


 人生で言ってみたい台詞ベスト10に入りそうな言葉をごぶ助へと投げかけると、『良い話』と答えが返ってきたので良い話をしてやることにする。・・・まぁ同時に悪い話でもあるんだがなこれ。


「どうも階層がリセットされてるっぽい。だから解呪の巻物が見つからないってことはなさそうだ」


「ごぶ。それは確かに良い事ごぶ」


「が、それは同時に解呪の巻物が100%落ちている訳じゃないって事でも確定した訳だから、見つかるまで延々と探さなきゃならない事が決定した。あ、因みにこれが悪い話な?」


「ごぶ!?」


 階層がリセットされないなら、恐らく何処かに解呪のアイテムがあった筈(ない可能性もあるにはあるだろうが)。だがリセットされるのならばアイテムは完全ランダムポップの可能性が高いので、正にローグライクゲームの様に周回する必要があるのだ。


「さて・・・面倒だが周回するかぁ。まぁレベル上げにもなるから悪いばかりでもないから、それだけが救いか」


 こうして俺達は24階層で解呪アイテム探索マラソンを始める事となった。


 ・

 ・

 ・


『ピロリン』


「ごぶ!外れたごぶ!」


「・・・そうだな」


 まぁ、事に定評があるごぶ助さんが居たので、2時間も探索すると解呪のスクロールを見つける事が出来たのだがね!・・・解せぬ。


「それなら昨日見つけとけよって話だもんな・・・」


「ごぶ?」


「なんでもない!外れたんなら行こうぜ!」


「ごぶ!解き放たれたごぶ助カリバーの力を見せるごぶ!」


「封印していたのはお前だがな」


「ごぶ?」


 言いたい事はまだあるのだが、これ以上言っても仕方がないと言う事で探索を再開する事にした。幸いと言っていいのか、次につながる階段も見つけていたので、俺達は階段即下りをする事にした。


「ごぶ?ボス居ないごぶ?」


「ん?ああ、ローグライクゲームには途中のボスが居ないんだ」


「ごぶ?」


「まぁそんなもんだと思って置いたらいいさ。っと、次の階層に付いたが、はてさてここも不思議なダンジョン何かねっと・・・ん?」


 25層に降りた俺はのっけから眉を顰める事となった。

 それは24層同様『ふしぎなだんじょん』風だったからでも、23,22層の様に町があったからでもない。


 トロッコに線路、それに銃の様な物が置いてあったからだ。



「・・・遊園地かな?」



 ------------------------------------

 作者より:読んでいただきありがとうございます。

「面白い」「続きが気になる」「ごぶ助さん、運良すぎでは?」等思ったら☆で高評価や♡で応援してください。

 ☆や♡をもらえると ごぶ助が 開運方法を教えてくれます。


 こちらも連載中です。↓『悪役令嬢は嫌なので、魔王になろうと思います。』

 https://kakuyomu.jp/works/16816927860702355532

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る