第253話 『ふしぎなだんじょん』とわんちゃん

『そこは異世界だったからだ』、これは正に言葉のままだ。

 今いる世界でも無く、はたまた前世の地球でもない、全く見たことがない正にとしか言えないそんな光景・・・


「・・・」


 それが今、俺の目の前に広がっていた。


「ごぶ、ここも変わった町ごぶ」


「うむ」


 今までいた現代日本風の建築物もごぶ助やニアには変わった物に見えていた様だが、ここ・・・何の材質で作られたかも解らない、ブドウの房の様な建物?が立ち並ぶ光景にも2人はそんな印象を受けたらしい。


(というか、本当に何なんだここは?)


 改めて目の前の光景を見てみるのだが、それらは見れば見るほど不思議な建物?ばかりだった。

 先程も言った様によく解らない材質で作られ空中にブドウの房の様に鈴生りに浮いている物、それらと透明の管で繋がっているこれまた空中に浮いているピラミッドの様な物と、一見しただけでも『なにこれ?』となる物ばかりだ。

 あげく、町民?もピッタリ全身スーツやらラメラメでゴイスーな服と、『パリコレの前衛的な服かな?』と言わんばかりの装いをしているので、異世界間に拍車がかかっていた。


「あ、でもマッチョメイドはいるんだな」


 しかしそんな違和感の中に普通な装いの者を見つける事が出来たので、俺はホッと・・・はしない。


「いや、普通じゃねぇから!」


「ごぶ?」


「うん?」


「あ、いや、なんでもない」


 ついつい1人ノリツッコミをしてしまうとごぶ助とニアに不思議な顔をされたので誤魔化しておく。

 そして少し衝撃を受けていた頭の具合も収まったので、俺は2人へと声を掛けこの異世界町の中を回ってみる事にした。


 ・

 ・

 ・


「ごぶごぶ」


「ふむ。ここも22層の町とそう変わらんのじゃな」


「まぁ・・・そう?だな?」


 30分ほどぶらぶらと町の様子を見たりしながら歩いていたのだが、ごぶ助とニアの感想は22層と大して変わらないとの事だった。一方俺はというと・・・『思ったよりは普通』だった。


「(恐らく)食べ物や(多分)日用品、他は遊ぶため(どう遊ぶのかは謎)の施設。22層の町とそう変わらないな、うん」


 異世界の町とは言ったが町のコンセプトというかある物はそう変わらないみたいで、22層と23層の町では大して差が無いように思えたし、現代日本を知らない2人であれば更には無い事だろう。

 しかし現代日本を知っている俺としては明確に差があるので・・・こちらの町を回って1日を潰す事にした。


「折角なら知らない方回った方が面白そうだしな、うん」


「ごぶ?」


「む?」


「ああ、いやな、実は・・・」


 そんな思いを呟いていると『どうした?』と2人から不思議な顔をされたので、俺は22層の町と23層の町に感じた事を話してみた。・・・いや、別に転生者だとか前世の事だとかは一切秘密にしていないのでね、うん。

 そんなオープン系転生者一狼の話を聞いた2人は頷いていたのだが、ぶらぶらする階層に関しては22層がいいんじゃないかと言って来た。


「え?なんでだ?」


「ごぶ?相棒が前に住んでいた世界の町ごぶ。見てみたいごぶ」


「妾が口を出すのもあれじゃが、それには妾も賛成なのじゃ」


 理由を聞いてみると上記の通りで俺とは意見が見事に割れてしまったので、俺達はどうするかと相談をする事にした。

 という事で、俺達は異世界町の喫茶店?の様な店へと入り話し合いを始め・・・


 ・

 ・

 ・


「ふぅ・・・2日も遊んでしまった。今日からは探索を再開せねば・・・」


「ごぶ?もう行くごぶ?後1日くらい遊ぶごぶ」


「違うのじゃごぶ助。あれは遊びではなく探索なのじゃ」


「ごぶ?・・・ごぶ!探索なら仕方ないごぶ!やっぱりもう1日探索するごぶ!」


 とまぁ、この様に見事に2日間遊びほうけてしまい、更にごぶ助とニアはどっぷりと都会の面白さに嵌ってしまったのか延長を申し出て来ていた。


「えぇ~しかたないな~・・・じゃなくて、駄目だっ!唯でさえ一部の者から疑惑の目で見られているのに延長は出来ない!却下だ!マーラを退けるのだっ!」


 だがごぶ蔵やエペシュ、ルキなんかから『なんか妙に楽しそうにしてるし良い匂いがする。遊んでんジャネ?』と疑いを掛けられているし、レベルアップ作業を怠らせるわけにはいかないので俺はその申し出を却下した。


「確かに美味しいモノ食ったり遊んだりと楽しかったが・・・異世界の町も不思議な食べ物や遊びが新鮮で楽しかったが・・・きゃ・・・きゃっ・・・却下だっ!」


 現代日本町の楽しさも勿論だったが、異世界町も物凄く楽しかった。なんせ建物の中も独特だったし、空中に走っていた移動管なんかの移動方法も新鮮、更に今までにない遊び等もあったのだ。後ろ髪引かれない理由がない。

 が、俺は男らしくそれらを却下して次へと行く事にしたのだ。


「ごぶ?相棒、何で目が泳いでるごぶ?」


「お・・・およよ・・・およいでねーし!まわりをめっちゃけいかいしてるだけだし!」


「ごぶ?」


 兎に角却下し次へと進むことにしたので、俺は24層へと続く場所へと移動する。


「設置してある案内板にはこっちって書いてあったけど・・・お、これかな?」


 案内に従い移動した先には空港にあるセキリュティゲートの様な物があり、付いていた看板にはここを通れば24層に行けると書いてあった。


「ハイテクっぽい感じだなぁ」


 そんな事を呟きつつ俺はゲートをくぐる。

 すると次の瞬間には先程居た町の面影は何処にもなくなり、何時も通りの通路が顔を見せた。


「ごぶ?ごぶごぶ」


 何時も通りになった通路を見ているとごぶ助も来たので、俺はごぶ助を背中に乗せると通路を進み始めた。


「さぁて、セーフティエリアを抜けた先の階層はどんなもんだろうな」


 特に理由も無くセーフティエリアがある場合もあるだろうが、そこを境目にガラリと様子が変わるダンジョンもあると聞いたことがあったので、俺は少し身構えていた。

 そうやってそろそろ進んでいると・・・


「お、部屋だな」


 通路を抜けて開けた部屋が姿を現した。

 といってもだ、別にこの様な造りは珍しくも無いので驚く事は無い。


 ないのだが・・・


「ごぶ?相棒、何か落ちてるごぶ」


「ん?・・・え、パン?」


 流石に部屋にポツンとパンが落ちているのには少しだけ驚いてしまった。


「ごぶ。もったいないから食べるごぶ」


「いやいやいや、そうはならんやろごぶ助」


「ごぶ?」


 そんな明らか様におかしいパンだが、生粋のゴブリンであるごぶ助さんは何の疑いも浮かべず食べようとしていた。

 が、流石にそれはヤバいので俺はストップを掛け、そのパンが何なのかを探るために『鑑定』を掛けてみた。



『アイテム:パン

 ・唯のパン。食べるとお腹が少し膨れる。』



「ん?」


 が、結果は本当に唯のパン。何かが擬態している訳でも、毒物が仕込まれている訳でもなさそうだった。


「それなら・・・いや、ないのかい」


『なら周りに罠があるかも?』、そう疑ったので周辺を『鑑定』で確認してみるも・・・特に何もなかった。

 なのでなんとなく引っかかりはするが、取りあえずそれを拾ってみる事にした。


「ん~・・・匂いや触感も別段変わった所がないな。本当に唯のパンっぽいか」


 ごぶ助にも手に取ってもらい見てもらったが感想は俺と全く同じらしいので、俺達は本当にこれが『唯のパン』で『唯単に落ちていた物』だと結論付けた。いや、結論付けるしかなかった。


「だって何もないんだもんな・・・まぁいいや、取りあえずしまっといて進もう」


「ごぶ」


 訳が解らないモノはいくら考えたって解らないのだ。

 なので俺はそれを見ない事にして進むことにした・・・


「で、ごぶ助、前と左右、どっちに進みたい?」


 のだが、進む道が3つあったので、どの道を進みたいかをごぶ助に尋ねてみると、『前』と答えて来た。

 これは正直どちらに進んでも良かったので、俺はそちらへと進む事にした。


 ・

 ・

 ・


 そんな感じで探索を続けていたのだが、俺は何処かがおかしいと感じていた。


(普通に魔物も出て来るし罠もある。時々落ちてるパンも生えてる薬草もまぁ・・・許容範囲だ。けどなんか・・・)


 何時ものダンジョンと言えばダンジョンなのだが、何とも言えない違和感があったのだ。だがしかし、それは一体何なのかは解らない。


(なんかこう・・・う~ん・・・)


 そんな魚の骨が引っかかった感じで進んでいると、俺達は再び小部屋へと辿り着いた。


「ごぶごぶ。ごぶ?こん棒が落ちてるごぶ」


 そしてそこにはパン同様、こん棒が落ちていたのだが・・・


「ごぶ!予備のごぶ助カリバーにするごぶ!」



 これをごぶ助が俺から降りてヒョイっと拾った事により、この違和感の正体が判明する事となった。


「ごぶ!ごぶ助カリバー2を手に入れt『デロデロデロデロ、デッデデロン』ごぶ?」


「ローグライクゲームかよっ!」



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 作者より:読んでいただきありがとうございます。

「面白い」「続きが気になる」「パン・・・○ルネコですね?」等思ったら☆で高評価や♡で応援してください。

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 こちらも連載中です。↓『悪役令嬢は嫌なので、魔王になろうと思います。』

 https://kakuyomu.jp/works/16816927860702355532

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