第250話 情報収集を終え、いよいよ・・・な、わんちゃん
「・・・まさか既婚者だとは」
ヤマトさんが俺の勧誘を断った理由、それは『妻と娘が引っ越しをしたがらないだろうと思う』だった。
「ごぶ。50年も生きてれば妻や娘の1人や2人いて当然ごぶ」
「まぁなぁ・・・ん?いや、娘は兎も角、妻が2人いたら問題だろ」
ヤマトさんは転生者なので違うが、妻と娘はこの町『パンゲア』で生まれ育っているとの事で、友人や親戚等もこの町に住んでいる。なので離れたくないだろうとの事だ。
俺としてもそれは十分理解が出来たので、粘る事もせず勧誘はさっくりと諦める事にした。
「すみまセーン。その代わり何かあったら気軽に言って来て下サーイ。お力貸しマース」
「ありがとうヤマトさん」
「イエイエー」
そして勧誘という恒例行事?も終わったので、今度こそ俺はお暇を告げる事にする。
「じゃ、そろそろ俺達は行く事にするわ。ほんとありがとでしたヤマトさん」
「ごぶ。ご飯美味しかったごぶ。ありがとごぶ」
「うむ、中々であった」
「オー、ドイタマシテー」
若干おかしい言葉で見送られた俺達は、ヤマトさんの店から町へとくりだした。取りあえずの向かう先としては、獲って来た獲物を換金する場所だ。
「えぇ~っと、向こうの方に行けば解体屋があるらしいから、そっちへ行こう」
「ごぶ」
魔物を換金するのなら『冒険者ギルドに行けばいいのでは?』と思うかもしれないが、魔族には冒険者という職がないらしい。
その為取って来た獲物は肉屋等のお店に持ち込めばいいらしいが、俺達が獲って来た魔物は解体もしていないので解体屋へと持っていき解体、そして買い取り価格は少し下がるが、そのまま買い取ってもらう事にした。
「換金の為に店を何件も回るの面倒だからなぁ」
「ごぶ。それに皆のお土産買うのに回らなきゃいけないから、時間が足りなくなるごぶ」
「だな」
ごぶ助とそんな事を話しながら解体屋へと向かい、着くと予定通り買取をしてもらう。
そしてその代金を受け取ったのだが、割と多く獲物を獲って来ていたのでお金自体は結構稼ぐことが出来た。
「うし、んじゃお土産買い集めるか」
「ごぶ」
これだけあれば皆に頼まれていたお土産も全部買えるだろうと考えた俺は、買い物を始める為店を回る。
「コレください」
「毎度ぉ~」
「あ、店主さん、俺達初めてここ来たんだけどさ・・・」
その際、折角なので回った先々で情報収集も並行して行う事にしたのだが、それはお金を払って買い物をしているだけあり、回った店の店主達は俺の話に応えてくれた。
なので情報はすんなりと集まったのだが・・・
「ん~・・・微妙」
それはどれもこれもヤマトさんに聞いた話の域を越えず、新たな情報は精々『暗殺された魔王がどれくらい駄目な人物だったか』や『暫定で魔王をしている人の好物は煎餅』位だった。
「まぁ買い物も終わったし、こんくらいにしとくか」
「ごぶ。これからどうするごぶ?」
「一旦帰るけど、もう一日くらい町を回ってみよう。城近くに行けばなんか新しい情報が聞けるかもしれないしな」
「ごぶごぶ」
なので一旦帰る事にした俺は、スキルを使い帰る事にしたのだが・・・
「こ・・・こんちは~・・・」
「ごぶ。ただいまごぶ」
「オヤ?どうしたんデース?早速何かトラブルですカー?」
「いや・・・ちょっと人目につかない場所を貸してほしいなーって・・・」
「フム?」
舌の根の乾かぬうちにとはまさにこの事か、早速ヤマトさんを頼る事になった。
いや、これは仕方ないのだ。なんせ俺がスキルを使い帰ろうとするとどうしても場所が必要になって来る。別に町の目立たない場所で使ってもいいのだが、もしかしたらという事もあるのでなるべく安全な場所で使いたいのだ。
「オーケーオーケー。ならウチの庭を貸しマース。そこまで広いスペースはいらないのデショー?」
「ああ。精々5ヤマトさんくらいだ」
「What's ?・・・アー、ウン。なら大丈夫そうですネー」
俺の言葉が絶妙に解りにくかったのか一瞬『ん?』という顔をしたが、ヤマトさんは快く場所を貸してくれるとの事だった。
その場所は店の裏にあるヤマトさんの自宅、その庭との事で、俺達はそこへと案内してもらう。
「ここで大丈夫デース?」
「十分十分。ありがとなヤマトさん」
庭はこじんまりとしたモノだったがスペース的には十分だったので、俺はそこへ中間ダンジョンを設置させてもらう。
そしてそのままヤマトさんへと挨拶をし、俺達は帰宅した。
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翌日、俺達は再びヤマトさんの家の庭へと転移すると、彼に挨拶をし町へとくりだした。
その際彼の妻子とも挨拶をしたのだが・・・奥さんはマジ美人だった。爆発すればいいと思う。が、娘さんが可愛かったので許す事にする。
と、そんな俺の妬み嫉みは置いて置きだ・・・俺達は昨日決めた通り、町の中央に建っている城近くへと行く事にした。
「ごぶごぶ。中々立派な城ごぶ」
「だなぁ・・・ま、俺達の所も負けてないがな!」
「ごぶ。勿論ごぶ」
本物の魔王が住む城というだけあり、その城は遠くからでも解るほど立派な城だった。
だが『力isパゥワァー!』の魔族だけあるのか、その造りはやや武骨で、どちらかと言うと見た目より実を取ったと言った方がいい様な、そんな造りとなっていた。
「えぇ~っと・・・聞いた話だと城の右側にあるらしいんだが・・・」
「ごぶごぶ・・・ごぶ、あれごぶ?」
そんな城へと近づいた俺達は、城に併設されていると言う役所へと向かった。
どうもこの役所は町の人が色々な手続きをする為に作られた場所らしく、誰でも出入り可能なのだそうだ。
「ごぶ。結構人いるごぶ」
「だな」
役所の中へと入ると、意外にも人が結構いた。・・・脳筋種族なのでてっきり閑散としているモノだと思っていたのだが。
「ま、町は普通に栄えてたし、当然っちゃ当然か」
余りにも失礼な考えだったなと反省し、俺は町の公示が掲載されていると言う掲示スペースへと向かう。それは意外にもこういう所に詳しい情報があったりするからだ。
「町に住んでても、頻繁に役所へと通う様な人でないとこういう場所は見ないだろうからな」
という訳で、意外と町の人達が知らない情報も載っているんじゃないかと思った俺はここをチェックする事にしたのだ。
「えぇ~っと・・・どれどれ・・・」
俺は早速張り付けてある掲示物を読んだり、ごぶ助に手伝ってもらって冊子等を読んで行く。
するとだ・・・俺はとても知りたかった情報が乗っているのを見つけてしまう。それは正にピンポイントで知りたかった『魔王選』についてのモノだった。
「ビンゴ!どれどれ・・・ん~結構先だな。もう出る候補も揃ってるぽいのに、直ぐやらないのか?」
詳しく読んで行くとどうやら魔王選が漸く開催されるとの事が書いてあり、『候補者はヨフィエル、ゴウシン、パソラケラス・・・』と10名程の名前が書かれ、更に『まだまだ募集中』と、更に参加者も募っていそうだった。だがこれ、募集期間がまだ結構あり、魔王選が開催される日時を見てみるとどうやら半年後らしい。
その他にも公示を見ていくのだが、特にめぼしい情報は見当たらなかったので、情報収集はそこで止める事にした。
「よし、そろそろ帰ろう」
俺達は読んでいた冊子などを元の場所へと返し、役所を出た。
「ごぶ?もういいごぶ?」
「ああ。これ以上知ろうと思うとリスクが出て来るだろうからな。この辺で終わりにしておこう」
「ごぶごぶ」
これらを調べて来てくれと言って来たルキにしても、リスクをとってまで詳しい情報が欲しいとも思えないので終わりにするべきだろうから、この件はこれをルキに報告して終わりにしようと考えたのだ。
と、調べ物が終わったとなると、次はいよいよお待ちかね・・・ダンジョンだ。
「っしゃ!ごぶ助!さっさと帰ってルキに報告!んでからダンジョンへ向かおうぜ!」
「ごぶ!?ごぶ!急ぐごぶ!」
俺はごぶ助に声を掛け、駆け足で移動を始める。ごぶ助もそれについてきたのでそのまま走り、先ずはヤマトさんの家へと移動をする。
そしてそのまま設置しっぱなしだった中間ダンジョンへと入り、ルキの元へと行く。
「ルキ!報告だ!」
「あ、おかえりー。うんうん、聞くよー」
ルキの元へと着くなり、俺は口早に先程の事を報告していく。
するとやはり十分な情報だった様で礼を言われた。
「っし、んじゃあ俺達は急ぐからこれで!また夜に会おう!」
「また夜にだなんてぇー・・・って、行っちゃった」
報告が済んだらもう用はない!という事で、俺は一方的に挨拶をすると速攻ダンジョンを出る。
そしてダンジョンを出たなら中間ダンジョンを壊し、ヤマトさんへと最後の挨拶をしてから町の外へと向かった。
そして町の外へと出ると・・・
「よーしごぶ助!全力で行くからな!しっかり捕まっとけよ!」
「ごぶ!」
「っしゃ!ゴーゴー!」
「ごーぶ!」
俺は目当てのダンジョンへ向けて全力で走り出した。
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そうして移動をする事2日程・・・俺達は目的の神造ダンジョン『悪鬼』へと辿り着いた。
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作者より:読んでいただきありがとうございます。
「面白い」「続きが気になる」「次回はダンジョン編ですね!?」等思ったら☆で高評価や♡で応援してください。
☆や♡をもらえると ごぶ助が 1日でダンジョンを攻略します。
こちらも連載中です。↓『悪役令嬢は嫌なので、魔王になろうと思います。』
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