第241話 ダンジョン攻略中のワンチャン

「アテンションプリーズ、右に見えますのがダンジョンの壁、左に見えますのがダンジョンの壁となっておりまーす」


「「「???」」」


「・・・すまん、忘れてくれ」


 気合を入れてダンジョンの紹介をしようと思ったら大滑りしたでござる。


 ・・・とまぁ気を取り直して、だ。


「一見普通のダンジョンだな」


 俺は周りを見ながら感想をぽつりと漏らす。

 と言うのもこのダンジョン、言っていた通り入口は水中に有ったので、『壁が珊瑚で出来てたり、そこらに海藻でも生えてたり』と、一風変わった様子を想像していたのだが、中は地上にあるダンジョンと何ら変わりがなかった。変わりすぎて攻略が難しいとかになったらアレなので良かったのかもしれないが、少し拍子抜けだ。


「水中にあるダンジョンだからもっと妙な感じがすると思っていたが普通だな。浮遊感なんかも・・・特にないな」


「一狼一狼、あれ」


「ん?どうしたエペ・・・シュァッ!?」


 前言撤回だ。


「何で空中を泳げるんだっ!?」


 今いる場所は一見すると普通の空間だと思っていたのだが、何故か連れて来たトゴヤギ村のメンバーの一部が空中を泳いでいたのだ。

 しかもその動きは本当に水中を泳いでいるかの様で、本人達も不思議そうにはしているが快適そうに動いていた。


「え?じゃあ俺も泳げ・・・ないな?」


 そんな事なので俺も試しに泳ごうとするのだがそれは出来ず、ならばとエペシュやルキにも試してもらうのだがそれも駄目だった。

 しかしリョシン達に試してもらうと、連れて来た8人中、6人が泳ぐ事が可能だった。・・・何か違いがあるのだろうか?


「ん~・・・」


 俺はこの現象が物凄く気になったので、トゴヤギ村のメンバーへと質問したり、ルキやエペシュとも相談して考えてみた。

 そしてその結果、『恐らくこれだろう』という答えが導き出された。


「普段泳いでるって言うか・・・水中の方が動きやすい奴が泳げる・・・のかな?」


 空中を泳げた6人に共通する事は、『水中の方が活動しやすい。早く動ける』と言うメンバーで、空中を泳げない残りの2人と俺達は『地上の方が動きやすい』という違いがあったので、つまりはそういう事なんだろう。


「やっぱダンジョンのシステムは謎システムだわ」


 俺がダンジョンの謎過ぎるシステムにぼやいていると、それを聞きつけたのかスイスイ~と滑らかな動きでリョシンが近づいて来る。


(一見するとリザードマンなんだが、やっぱ違うんだな)


 リョシンは水中に適した『水蛇族』という種族で、いつぞや言っていたかも知れないが彼も水中の方が動きやすいタイプらしく、空中を泳げたのだ。

 と、そんな彼が不思議そうな顔で尋ねて来た。


「ん?一狼達はダンジョンの事に詳しいのではなかったのか?」


「リョシン達よりかは詳しいが、全部を知っている訳じゃないからな。ダンジョンと関わり出してから1,2年くらいだし」


「成程」


 俺がリョシンの疑問に答えると、彼は『成程成程』と言って納得していた。

 そして俺も空中を泳げるという疑問が解決したので、そろそろ進む事にした。


「ま、疑問も解けたし進むか。言っていた通り、リョシン達は俺達の後に続いてくれ」


「ああ、了解した」


 リョシン達に声を掛けた後俺が進み始めると、ルキが走って来て俺の横に並び口を開いた。


「罠とかは任せて!ある場所は何となく解るからさ!」


「お、助かる。長老に魔法掛けてもらって来るの忘れてたんだよな」


「ほへ?そんな魔法あるんだ?」


「ああ」


「あ、私長老から教えてもらったから使えるよ」


「お、マジか」


 俺はエペシュを背中に乗せたままルキと並び、彼女らと会話をしつつダンジョンの奥へと進み始めた。


 ・

 ・

 ・


「よっ・・・と」


「あ、またお魚出たね」


「「「おぉ~・・・」」」


「ま、運が良いとこういう風に美味いモノがいっぱい出るわけよ」


 ぼちぼちと進み、現在は2階層まで進んだ俺達だが・・・俺はリョシン達へとドロップアイテムの事を話していた。


「ふむふむ・・・今まで私も入った事はあったが、その時は大概爪やら牙、ガラクタばかりだったからな。こうなると中々に美味しい状況だな」


「だねぇ。っていうか、え・・・ボクって運悪すぎ?今までダンジョンって結構潰してきたけど、ドロップアイテムほぼほぼガラクタだけだったんだけど・・・」


 今回のダンジョン攻略の目的には『トゴヤギ村の安全確保』の他、『ダンジョンの良い所アピールをする』という事もあるのだが、このドロップアイテムにより中々の好印象を与えられたようで、俺は内心ガッツポーズをしていた。


(ナイスだこのダンジョン運営のモノよ!お礼に苦しまぬ様サクッと始末し、ポンコへと合体する権利をくれてやろう!・・・お礼にならんか)


 そのナイスアピールに一役買ってくれたダンジョン製作者に心の中でお礼を言い、俺はドロップアイテムを収納し終わると更に奥へと進む。


 この様に所々にダンジョンのステマを挿みつつ進んだのだが・・・


 ・

 ・

 ・


「・・・今日はここで休むか」


「長いね、ここ」


 気付けばダンジョンに入って5日が経っていた。


「だな。おーい、ここで休もう!」


「了解だ!皆!今日はここまでだと!」


「「「おう!」」」


「じゃあレモン空間の入口開くから入ってくれ」


 敵はそれほど強くなく、しかもドロップアイテムで食料は確保出来る。更に休むのは俺のレモン空間内を使えば解決し、何よりリョシン達が中々強い事も合って『このダンジョンツレェ・・・』という事は無かったのだが、このダンジョンは割と大きいダンジョンの様で中々に面倒なダンジョンだった。


「はぁ・・・もうちょっと短くて楽なダンジョンだと思っていたが現在16階層か・・・予想外だ」


「そなの?20階くらいあるのが普通かと思ってたんだけど?」


「20階もあったら割とデカいんじゃないか?ってかこれ、俺の考えでは楽々ツアーだと思ってたからちょっと悪い気がするな」


 このダンジョン攻略、俺的にはどちらかと言うとダンジョンの紹介の方がメインだったので、リョシン達には気楽に1日2日唯々付いて来てもらい、何なら楽しんで貰うつもりだった。

 しかし予想以上にダンジョンが長かった為、少し戦闘にも参加してもらっていたのだ。・・・といってもそれは、戦闘が俺達だけで辛かったという訳ではなかったのだが。


(見ているだけだと所在なさげだったんだもの・・・『手伝ってくれ!』って言っちゃうよそりゃ)


 リョシン達も1日2日くらいならば見学だけしていても苦にはならなかっただろうが、3日もすると彼らの中に罪悪感が生まれたらしく、非常に肩身が狭そうになっていた。なので俺は彼らにも戦闘に加わってもらう様お願いしたのだ。


「一狼!武器の手入れをしたいのだが、どうしたらいい!?」


「あ、道具持って来るわ」


「ああ!ありがとう!」


 まぁ結果的には出発時より仲が深まった気がするので、結果オーライだったかもしれないが。

 更にだ・・・


「中々不思議な家だよな」


「な?しかも色々揃ってて中々住みやすそうだし」


「だな。けどこれでもっと水場が近けりゃな」


「だよな。あ、でもプールつって、誰でも使えるデカい水場があるらしいぜ?泳いでいいらしいから、後でそこ行ってみようぜ?」


「あ、俺も行くわ」


「「「俺も俺も」」」


 レモン空間というダンジョンの有用さも体験してもらっているので、これはもう『結果オラァァイッ!』だろう。・・・違うか。

 と、そんなどうでもいい事を考えていると背中に居るエペシュに『手入れの道具、持ってかなくていいの?』と突っ込まれたので、俺は謝りながら道具が置いてある場所へと向かい、それを取るとリョシン達の元へと向かった。


「持って来たぞー」


「ありがとう」


 リョシン達へと道具を渡すと、そのまま武器の手入れを手伝う。・・・といっても、主に手伝うのはエペシュやルキだが。

 そうして手入れを終わらせたら後は自由時間だ。


「これまで同様指定した家を使ってくれ。あそこ意外だと未だ水棲種族に対応させてないからさ」


「了解だ。食堂も何時もの部屋を使えばいいんだな?」


「ああ、不便を掛けるが頼むよリョシン、それに皆。んじゃ、俺達はあの建物に居るから、他にもなんかあったら来てくれ」


「ありがとう一狼!じゃあまた!」



 リョシン達は先程話していたがプールに行く様なので、俺やエペシュ、ルキはリョシン達と別れを告げ食堂兼家へと向かった。



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 作者より:読んでいただきありがとうございます。

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 ☆や♡をもらえると 作者が ゴブリン推しを薦めてきます。


 こちらも連載中です。↓『悪役令嬢は嫌なので、魔王になろうと思います。』

 https://kakuyomu.jp/works/16816927860702355532

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