第238話 建築計画を話し合うわんちゃん
皆が安全に暮らせるような住処を作る筈だったのに、何時の間にか国を建国する話になっていたでござる。
「村や町の域を超えて大勢が住んでれば、もうそれは国じゃなーい?」
「まぁ間違っては無い・・・のか?」
間違ってはいないかもしれないが、言い過ぎだとは思う今日この頃。
とまぁ国云々は後で考えるとして、取りあえず色々な種族が住めるようなダンジョンを構築する事は決まったので、もう少しそれを詰めていく事にしよう。
そんな時に頼りになるのは・・・
「長老、どんな感じにしたらいいかどしどし意見を言ってくれ」
我らがダンジョンの頭脳、長老である。
普通ならば『ゴブリンでしょ?頼りにならんやろ?』となるかも知れないが、長老は下手したら俺より賢いので頼りになりまくるのである。
「ごぶ蔵も頼りにしてるから、どんな感じにしたらいいか言ってってほしい」
そしてもう1人。少し遺憾ではあるが頼りになるであろう、レモン空間内の建物も作り上げた匠、ごぶ蔵にも頼る事にする。
すっとぼけた奴ではあるが、ダンジョン弄りの実績は大いにあるので頼りになる・・・はずなのである。
「取りあえずは、ダンジョン牧場みたいなフロアを幾つか作ってそこを格種族の為に特化してく。そんな感じで考えているんだが、どう思う?」
「ゴブゴブ・・・そうですゴブな。しかしそうなると、かなりのコストが必要なのではないですゴブ?」
俺は早速これならどうだと素案を言ってみるが、頼りにしてると言っただけあり、早速長老は意見を言ってくれる。それに触発されたのか、話を聞いていたニコパパやごぶ助、エペシュにルキもぼちぼちと意見を言い出してくれ、イイ感じに意見が揃って来る。
「ごぶごぶ・・・」
しかしそんな中、匠は目を瞑り腕を組んで何かを考え込んでいた。
一体どうしたのだろうと声を掛けようとすると、匠はカッと目を見開き収納からホワイトボードを取り出した。
「・・・んん?何でホワイトボードがあるんだ?」
「気にしちゃ駄目ごぶ!それより見るごぶ!」
何故そんなものがと思ったが、そう言われたので大人しく従う事にした。・・・何故なら、深く考えたら何にかは解らないが負けるからだ。
と、俺が死んだ魚の目をしていると、ごぶ蔵はホワイトボードにペンを使いすらすらと図を描いていく。
そしてそれが描きあがると、それを俺達へとアピールして来た。
「ごぶ!ごぶが考えた最強の町を紹介するごぶ!さっき確認もしたから、造れる筈ではあるごぶ!」
そう言うとごぶ蔵は描いた図の解説をしていくのだが・・・確かに最強かもしれない。
「ふむ。神造ダンジョンで似た様なのはあるが、よう考え付いたもんじゃの」
「マジ?」
「うむ。マなのじゃ」
そんなニアが褒めるごぶ蔵考案最強の住処ダンジョンを説明するとだ・・・
現在のポンコダンジョンは上が平らになった台形のデカい岩山に入口があるのだが、ごぶ蔵の案ではその岩山を丸々ダンジョンへと組み込み、岩山内部に町を、上の平部分に城を造り、ダンジョンの形態を地上に外装を建てて上へ上へと獲物を誘う『塔型ダンジョン』に改造するのだと言う。
しかしそれだと従来のポンコダンジョンや、他に潜って来た所謂『洞窟型ダンジョン』みたいな拡張性があまりなく、将来的に微妙なダンジョンになるのではないかという問題が・・・と思いきや、中はちゃんと異次元で拡張し放題。問題はなかった。
更に最強ダンジョンと言うだけあり、そんな『塔型ダンジョン』にすると言うのは序の口で、何と・・・町はダンジョンの謎パワーを使い、どんな種族でも一緒に生活ができるらしい(例えば、陸上なのに水棲の魔物でも普通に暮らせるとかだ)。
しかも防衛力もすごく、入口を町と従来の様なダンジョンへと切り替えが可能だと言う。
「マジでぶっ飛び過ぎだわ・・・」
俺は説明して見て改めてぶっ飛び具合に驚愕する。・・・だがしかしこれ、本当に実現できるのだろうか?話を聞いた感じ、最初に俺が言ったモノよりよっぽどコストがかかりそうなのだが?
「なぁポンコ、これってさ・・・」
そしてそれはポンコに確認してみると案の上で・・・
【ソうですネ、確実に無理デス。今のポンコでハキャパオーバーでス】
「ごぶっ!?」
「いや、そりゃそうだろう・・・どんな種族でも一緒に暮らせるようになる機能とか聞いただけでもやべぇ機能だし」
『洞窟型』から『塔型』へと切り替えるだけでもギリギリだろうに、欲張り過ぎなのだ。
そうして『匠が考えた、夢しかないトンデモ建築』は日の目を見ることなく消えるかと思ったのだが・・・
「聞いた感じ、ポンコちゃんが育てば作れるの?」
「そうだな。ポンコに他のダンジョンコアを食わせれば育っていけるようにはなる。けどそこまで育てるのにかなりのダンジョンコアが要りそうだから、今回はパスって感じだな」
「なんなら、村に置いてあるやつ使ってもいいよ?」
「え?」
「周りに増えて来たり、周辺に攻撃してくるような迷宮は潰してたからね。何個かあるんだよね」
「なん・・・だと・・・っ!?」
・
・
・
「ね?」
「ほんまやんやんやん」
『ほんまかいな!?』となってルキの村へ行き見せてもらったのだが、確かにダンジョンコアはあった。・・・大量に。
「適当に放置しとくとまた出来ちゃうかもしれないから封印しといたんだ」
「何か変な感じがすると思ったが、封印してあったのか」
ルキ曰く『壊すとヤバそう』らしく、仕方なく封印してあったらしいのだが、俺達的にはグッジョブであった。
なので早速収納して持ち帰り、ポンコへと合成をしてみる。
「どうだ?」
【少しお待ちヲ、現在統合作業中デス】
「・・・ふむ」
『ナウローディング!』との事なので少し待つ事になったので、どうせならこの間に村々を廻り今回の事を周知してはどうだと俺はルキへと提案してみる。
すると『待ち時間に丁度イイね』となったので、俺達はルキの村に友好的な村々を廻る事にした。
「国をぶち建てるんだー!って言ったけど、そう言えば皆には何にも言ってなかったしね。来てくれるかもわからないし」
「あー・・・確かにそうだな」
そんな事を言いながら俺達はトゴヤギ村へと向かう。水棲種族が多く住むあの村の者達が住んでくれると賛同してくれたのなら、他の村々も賛同しやすくなるのではないかという狙いがあったからだ。
それに村長のリョシンも大分穏やかな人格者のように思えたので、彼を味方につけておくと後の話もスムーズに進むだろう。
と、そんな事を考えているとトゴヤギ村へと到着したので、俺達は早速リョシンの家を尋ねてみる。
「やほー!リョシーン、いるー?」
「ん?ルキ村長か?」
リョシンは家に居た様で、彼は俺達を快く迎えてくれた。
その後、家に上げてもらいお茶を出してもらったので、それを飲みつつ今日訪問した理由を彼に話してみた。
「・・・ってことなんだが、どうだ?」
「最近物騒だしさー。それにこういう事頻繁にあるじゃない?いい機会だからさ、どうかなー?どんな種族でも一気に住めるなんて、そうそうないよー?」
「ふむ・・・」
信頼のあるルキが居たからかリョシンは疑うことなく話を聞いてくれ、感触はマズマズといった感じに思えた。
これならば村々を廻り、同意を取る事は難しくなさそうだなと思っていると、リョシンは口を開き答えた。
「そうだな、今回の話なんだが・・・・」
・
・
・
「時間的にはさっきの村で終わりかなー?後は明日以降にしよーよ」
「ごぶごぶ。帰ったらご飯の用意しなきゃごぶ」
「今日は何?」
「そうごぶなー」
俺達はトゴヤギ村の後に3つ村を廻ったのだが、そこで時間が夕方近くになってしまったため帰る事にした。
その際ルキ達は今日の夕飯の事等を話し、いつもと全く変わらぬ感じだったのだが・・・
「・・・はぁ」
俺は彼女らとは逆に、ちょっとブルーになっていた。
しかしそれは仕方ないと思うのだ。なんせ・・・
「全滅かよ・・・」
廻った村々からの答えが、全て『否』だったからだ。
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作者より:読んでいただきありがとうございます。
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こちらも連載中です。↓『悪役令嬢は嫌なので、魔王になろうと思います。』
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