第237話 お話と建築とわんちゃん

『修羅の国過ぎる・・・』と嘆いてから1月後、俺は今日も元気に敵を倒していた。


「ラストっ!」


「任せて」


「剥ぎ取りはごぶに任せるごぶ!」


 この1月の間に5回という、『週1ペース以上じゃねぇか!』と言いたくなるような頻度で戦いが起こっていたのだが、俺達はそれに毎回参加していた。

 それというのも、『気の良い人達が暮らす村が襲われるのは我慢ならない』と思ったからと、なんだかんだ仲良くなったルキのお誘いを断る事が出来なかったからだ。


『また戦いがあるんだけどさー、一緒に行かない?』


 こんな感じで誘われ、それを断ろうとすると『そっかぁ・・・』と言いながら


(´・ω・`)


 こんな感じの顔をして来るので、『行く』と言わざるを得ないのだ。


 だがしかしこのエンドレスバトル、悪い事ばかりではない。

 ごぶ蔵が言った様に、倒した敵から剥ぎ取りをしてそれが収入になったりするし、村のお土産に変わったりもした。更にルキが1人で戦っていた所を『任せてくれ』と交代させてもらい、経験値稼ぎもそこそこ捗ったりしていた。

 因みにだが、ごぶ蔵なんかはそれのお陰で進化していたりする。



 名前:ごぶ蔵

 種族:ゴブリンシェフ

 年齢:3

 レベル:2

 str:164(74↑)

 vit:159(74↑)

 agi:201(104↑)

 dex:333(160↑)

 int:179(104↑)

 luk:161(90↑)

 スキル:短剣術 鈍器術 建設術 解体術

 ユニークスキル:料理魔法 

 称号:ダンジョン1階層突破 特殊進化体 料理道2段 建設人 匠



 こう見るとごぶ蔵も強くなったモノだと称賛したいのだが、『建設』がフラグの建設も兼ねてそうなので素直に称賛しづらい所である。


「ごぶ?」


「・・・なんでもない」


「ごぶ。あ、剥ぎ取りは完了ごぶ」


『なんぞ?』と見て来たごぶ蔵が剥ぎ取りの完了を知らせてきたので、俺達は後方で漏れた敵を狩っていたルキの所へと行き戦いと剥ぎ取りの終了を知らせた。

 すると彼女の方も色々終わっていた様なので、そこで帰る事にした。


 ・

 ・

 ・


「お疲れ様!今日の分ね!」


「おう」


 救援が終わり、ルキの村へと帰って来た俺達は会議場へと移動し、そこで報酬のやり取りをしていた。


「じゃ、買い物してくるごぶ」


「行って来る」


「おぉ、行ってらー」


 もう慣れたモノで、報酬を貰った後には買い物というルーティンはごぶ蔵とエペシュ2人で済ます事もあり、今日は正にそんな感じだった。

 そして俺はと言うと、のんびりとお茶?を飲みつつルキと話をしていた。

 その話題はと言えば勿論、次の戦争の話だ。


「で、また戦いがあるんだろ?次は何処で何日後なんだ?」


「ん?取りあえずはナイよ?」


「え?」


「戦争が始まるって情報は無いよ。平和な期間だね!」


「お・・・おぉ・・・」


 と思っていたら、戦いはお休みらしい。

 俺は少しホッとしたが、どうせまた直ぐに知らせが来るんだろうなと思い、安堵の息は憂鬱なため息に変わった。

 するとそれを見てルキはおかしそうに笑う。


「あははっ!好戦的な性格だなと思ってたけど、戦うのは楽しくないのかい?」


「ん?戦わなくて済むならそれに越した事は無いだろ?それに俺は好戦的なんじゃない、戦わないと強くなれないから戦ってるだけだ」


「え?矛盾してない?」


「そんな事は・・・あるな!?」


「だよね?あはははは!」


「まぁあれよ、色々あるんだよ」


 戦いの話も無いので雑談でも・・・と言う雰囲気だったので話し始めたのだが、その際『俺が何故戦っているのか』という話になった。これは別に隠す事でもないので話していったのだが、それを聞いた後ルキは少し優しい顔になっていた。


「一狼も色々あったんだね」


「まぁな」


「よしよし~」


「おっふ・・・そこは・・・」


 意外にも母性に溢れているのだろうか、ルキは抱擁感を出しつつ俺を撫でて来た。それがあまりにテクニシャンだったので俺は唸ってしまったのだが、何時の間にか横に居たニアからなんとなく視線を感じた気がしたので気をそらすために新たな話題を振ってみた。


「そういえばルキ、こうやって頻繁に戦いが起こっている訳だが・・・」


「うん?」


「友好的な村をまとめて、何処か1か所にデカい村でも造れば防衛とか楽なんじゃないか?」


「んー、そりゃできたら楽だけど、そうもいかないっしょー?」


「ふむ?」


 何となく思っていた事を言ったのだが、それは色々な理由があり無理だという事だった。

 例えば、大きい村にすると防衛力は高くなるだろうけれど、狙って来る勢力も強大になり、それが四方八方から来ると厳しくなるとかだったり、一番大きな理由としては、それぞれの種族特性があるという。


「今日行ってた村なんかはいいだろうけど、トゴヤギ村なんかは水棲の人が殆どでしょ?そうなると色々大変なわけ」


「あー、確かになぁ」


 陸生や水棲、その他にも地下に家が無いと駄目だとか、逆に高い所に家が無いと駄目だとか、魔族はかなり種族差が激しいので、これが満たせるのはダンジョンの様な気軽に土地の構造を組み替えれる場所でないと難しいのだろう。


「・・・ん?」


「んー?」


 と、そこで俺はふと考えた。ダンジョンならイイのでは?と。


(いやいや、そんな事は・・・)


 だがそんな事は既にルキも考えていた後であろうと思い、俺は頭を振ってその考えを追いやる。

 しかしだ、一応聞いてみるくらいはいいだろうと思い、聞いてみる事にする。


「因みにだけどさルキ、ダンジョン作ってそこを弄る、とかは考えなかったのか?」


「え?」


「ダンジョンだったらさ、地形も弄れるじゃん?」


「ほぇ?」


「え?」


 それを聞いてみると、どうもダンジョンを作ってそこに住むという発想は無かった様なので、俺は詳しく説明してみる。するとルキは『え?そんな事出来るんだ?』と感心していた。


「・・・知らなかったんだな」


「うん。ダンジョンなんて『邪魔なモノだなぁ』か、『何か役に立つモノでもあるかなー?』くらいにしか思ってなかったし」


 世間一般的にはそんな認識なのかと思いつつ、ならばダンジョン生活も検討してみてはと俺はルキへと進めてみた。

 しかし・・・


「ん~・・・でもなぁ・・・」


 感触はどうやらイマイチだった。どうやら『宝狙いで狙われやすい』事や『ダンジョンコアを取られると全てが崩壊する』事がお気に召さないらしい。

 まぁ確かにそれはマイナスポイントではあるので、俺は素直に頷いておく。だがマイナスポイントばかり見られるのもあれなので、俺はプラスのポイントも推してみる。


「けどさ、さっき言った様に内部構造を結構自由に弄れるから今より快適に住めることは確かだぜ?何ならそこだけで一切外に出なくてもイケるほどだしな。しかも狙われて壊されるとか言っていたけど、極めてしまえばダンジョン程安全な住処もないとおもうぜ?神造迷宮クラスは攻略不可レベルだって言うしな」


 俺はいつぞやポンコに聞いた神造迷宮の事も交えて説明をする。するとルキもそれに心当たりがあったのか、『あー、それは確かに』と納得し、その後何かを考え始めた。


「ん~・・・」


「ん?どうした?」


「一狼達は現にダンジョンに住み着いてるんだよね?」


「だな。最近じゃ外の食べられる魔物とか捕まえて養殖し始めたし、結構いい感じだぜ?」


「ふむふむ・・・それじゃあさ、一狼達の所に住まわせてよ?駄目?」


「!?」


 俺はルキの不意打ちに驚いてしまう。ダンジョンを住処に改造すればいいとは言ったが、一緒に住ませてくれと言うなんて思っていなかったからだ。

 しかし、これはチャンスかもしれない。


(一気に防衛力を増やせる?しかもルキ程の強者なら最高じゃないか)


 今は戦力が微妙なのでごぶ助が守備のため動けなくなっているが、住人が一気に増えて防衛力が上がったのなら自由に動けるしいいことづくめだろう。

 なので俺はルキの提案を前向きに検討する事にし、もっと詳しく話を詰める事にした。


 ・

 ・

 ・


【オカえりなサイ。オヤ?お客様でスカ?】


「ただいまポンコ。ああ、こちらはルキだ」


「やーやーどうも?・・・結構喋れる核なんだね?」


「ごぶ助達も集まってくれてありがとう。こちらはルキ、俺達が最近出掛けている村の村長だ」


「やーやーどうも皆さん!ボクはルキフェル!ルキって呼んでね!」


 その結果、俺は一旦ルキをダンジョンへと招待し、ポンコやイツメンも交えて話をしてみる事にした。・・・というかルキ、お前そんな名前だったのか。

 プチ衝撃の事実に驚きつつも、俺は皆へとルキ達の村や周りの幾つかの村が仲間に加わるかも知れないと言い、それらの事を説明し始める。

 そしてポンコにも問題は無いのかとも確認したりし、話を続けていく。


 そうして話を続けた結果・・・



「ここにデカい国をぶちたてよう!」


「ごぶごぶ!」


「「「おー!!!」」」


「おー!・・・んん?」



 何故かこうなった。



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 作者より:読んでいただきありがとうございます。

「面白い」「続きが気になる」「実はステータスが出たのもフラグだった?」等思ったら☆で高評価や♡で応援してください。

 ☆や♡をもらえると ごぶ蔵が 建ててくれます。


 こちらも連載中です。↓『悪役令嬢は嫌なので、魔王になろうと思います。』

 https://kakuyomu.jp/works/16816927860702355532

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