第236話 少し大人になったわんちゃんとエンドレスバトル

『・・・ザァ~・・・シャカシャカ・・・』


(・・・ん?)


 俺が意識を取り戻すと、気絶する前に嗅いだあの匂いは完全に消え去っていた。寧ろ今は良い匂いが俺の鼻に届けられている。

 そして匂いもいいモノが届けられているのだが、体に感じる感触はそれ以上にいいモノだった。


(温かいし・・・体をこする何かが気持ちいぃんじゃ~~^^・・・。あ、そこそこ・・・ふぃぃ~・・・)


 一体なんだと目を開けようとしたのだが、あまりの気持ちよさに目を閉じて体を震わせてしまう。

 暫しそのままその気持ちよさに身を委ねていると、なんとなくだが今の状況が解ってしまった。


(温かい湯に体をこする感触と良い匂い。これは多分、体を洗ってくれているんだな)


 気絶する前に俺はルキに腐肉や腐った血をべったりと体に付けられてしまった。恐らくだが、俺が気絶している間に誰かが俺を洗い場に運んできて洗ってくれているのだろう。


「あんがとなぁ~・・・ふぃぃ~・・・」


「ん~?ん~」


 それに気付いた俺は、俺の体を洗っている者へと礼を言っておいた。

 すると返事が返って来たのだが、それは耳に心地よく入り込んでくる涼やかな声だった。


(ごぶ蔵だともっと低いからエペシュか。・・・流石俺の女神、慈愛に溢れておるわ。・・・おっふ・・・ぞごぞごぉ~・・・)


 俺は温水の気持ちよさに体を解され、更に体を洗うテクニシャンな指使いに魂まで洗われてデロンデロンに蕩かされていた。

 なのでついつい声が漏れてしまう。


「キュゥ~・・・キュゥ~ン・・・」


「んふふっ」


「スキュゥゥ~ン・・・」


 それが面白かったのだろう、小さく笑われてしまった。

 これで相手がごぶ蔵だったのなら『なに笑っとるんじゃぁ!もっふもふにしてやろうか!』と突っかかる所だが、相手は女神だ。俺を洗う手が顔付近にあった事もあり、鼻先に相手の体が当たったので丁度イイ?と思い、そのまま甘える様に体をペロペロ舐める事にした。


「んはっ!ふくくくっ・・・」


(ペロッ!・・・これはっ!素肌の味!)


 舐めるとどうやら相手が裸だという事が解ったので、俺はそのまま夢中で舐める事にした。・・・え?女神の体を舐めぬのは無作法というものだろう?


(んまっ!んまぁっ!風呂に入りながらだから何時もと味が違うが、んまぁっい!)


「くふぉっ!ふひひひ!」


 体を洗っている事もあり何時ものフルーティーな味は落ちているみたいだったが、現在のミルキーな感じもそれはそれでよかったので、俺はひたすらに舐め続けた。

 その際少しきわどい所を舐めてしまう事もあり、それが一層俺のペロリを加速させる。


(んめぇ・・・んめぇよぉ・・・)


「くひひひ!ちょ!まっ!」


『・・・ペロペロペロペロ・・・』


「んっ・・・ちょっ・・・そこは・・・」


(よいではないかよいではない・・・うっ・・・)


 するとだ・・・ええ・・・ちょっと下品な話になるんですがね・・・その・・・勃○・・・しちゃいましてね・・・


(ちょ・・・犬になってからの初○起・・・おっふ・・・今は不味いでしょう・・・)


 流石にこのまま舐め続けると不味い気がしたので、俺はぺロる事を止め、ちょっとアレになった所が見えない様に足をしっかりと閉じた。

 そしていきなり舐められるのがストップしたので気になったのだろう、相手が声を掛けて来た。


「ちょっとー!くすぐったいじゃんかー!あ!しかもボクも体洗ったのに、涎まみれじゃん!もー!」


「す・・・すまん・・・ん?」


 と、ここで漸くちょっとおかしい事に気付き、俺は目を開けた。

 するとだ・・・


「ん~?どうかした?」


「・・・おっふ」


 目の前に居たのはルキだった。・・・どおりでいつもと違う味がするわけだ。


(ん?という事は・・・おおぅっふっ!)


 ・

 ・

 ・


 と、そんな俺の『初めての人はルキ』事件があった訳だが、これは置いて置こう。いや、置いて置かせてくれ。


「ふぃ~。すっきりしたね~」


「デスネ」


 トゴヤギ村の公衆浴場から出て来た俺達は、トゴヤギ村村長リョシンの家へと向かい、そこに着くと彼と話をした。

 そこでしたのは主に報酬の話だったのだが、ルキとしては貰うつもりはなかったらしい。

 しかしだ、リョシンが『一狼にも報酬を払わなければならないだろう?』と言うと、『あ~・・・そうだねぇ』と受け取らざるを得なくなり、結局湖で取れた魚を一杯貰う事となった。


「あ、それなんだがリョシン」


 その際に、俺は生きた魚がほしいとリョシンへ申し出た。

 これは草原でも同じような事をしたが、生きた魚を持ち帰り養殖する為だ。


「生きた魚か。解った、だがそうなると少し待ってくれ。取ってこさせる」


 俺の提案をリョシンは快く受け入れてくれ、俺達は見事養殖用の生きた魚をゲットする事が出来た。最初はそんな事を全然考えていなかったので、棚からぼた餅といった所だろう。


 そうして報酬の事も話終わるとそれにて救援のアレコレは終了となり、俺達は帰る事となった。

 俺達はリョシンやトゴヤギ村の人へと挨拶をし、トゴヤギ村を出る。そしてトゴヤギ村を出て10分ほど離れたところで、俺達もこのまま住処へと帰るとルキに申し出た。


「ん?そっかー。解った、まったねー」


 報酬もリョシンにもらった魚で十分だと思ったので、それも伝え俺達はルキと別れる。

 ルキ的には不満そうだったが、『また村へ行った時に仲良くしてくれたら十分だ』と言うと満足してくれたみたいで、彼女は笑顔で去って行った。


「んじゃ俺達も戻るか」


「うん。戻ってお魚さんの家つくろ」


「ごぶごぶ」


 ルキが見えなくなったところで、俺達もダンジョンへと帰るためレモン空間への入口を開いた。走って帰ってもいいのだが、少し遠いため横着したのだ。

 そうやって横着して一瞬でダンジョンへと帰り着くと、俺達は早速魚達の住処を作る事にした。何処に作ろうかと思ったのだが、魚は魔物の魚ではなく普通の魚だったのでレモン空間内に作る事にした。


「草原の魔物を放している所に湖作って荒らされてもアレだしな」


「うん」


 レモン空間内にある森に隣接する感じで作る事にしたので、森マイスターであるエペシュ監修の元、匠ごぶ蔵がレモン空間を弄っていく。・・・え?俺がしないのかって?だってごぶ蔵の方が弄るの美味いんだもん。

 そんな持ち主より何故かスキルを使いこなしている匠の作業を見ているとごぶ助がやって来た。


「ごぶ?何してるごぶ?」


「生きた魚をゲットしたからさ。繁殖用の湖作ってるんだ」


「ごぶごぶ」


 何をしているのかを説明し、ごぶ助と一緒にボケっと湖作りを眺めていると、『釣りとか久しぶりにやってみたいごぶ』という言葉を聞いてしまう。俺は知らなかったが、俺がごぶ助と出会う前は釣りをしていた事もあるのだと言う。


「そうか・・・」


「ごぶ」


 ちょっとしんみりし掛けてしまうが、ごぶ助が気にしていなさそうなのに俺がしんみりしてどうすると自分自身に喝を入れる。

 そうして気持ちを取り戻した所で、俺はごぶ助へと釣り竿を用意しようと提案をして見せた。


「ごぶ!」


「うし、・・・つっても針とかどうしてたんだ?」


「ごぶ?針代わりに使える植物の葉を使ってたごぶ。でも村一番の釣り名人は鉄製の針を持ってたごぶ」


「へぇ~・・・」


 提案をするとごぶ助が食いついてきたので、俺達は早速釣り竿の用意を始める事にした。


 ・

 ・

 ・


 そうして湖を作ったり釣り竿を作った日の翌日、俺達は再びルキの村へと出かけていた。

 出掛け過ぎじゃないか?とは思うかもしれないが、色々情報を集めるならあそこは最高の場所だし、何より釣り針がほしかったので行く事にしたのだ。


「流石に釣り針を生成するのにダンジョンのリソース使うのもアレだしな・・・」


 世界一しょぼそうなダンジョンリソースの使い方をぼやきつつ、門番の人に挨拶をし、先ずは雑貨屋へと向かう。

 そして雑貨屋へと入ると無事にあった釣り針を購入した。

 そのついで・・・とは違うかもしれないが、俺は掲示板を見に行く。何かいい情報でも書いてあるかもと期待したのだ。


「これよりも村人に話聞いた方が役に立ちそうだがなっと・・・どれどれ・・・ん?」


 その際俺はいい情報ではなく、不穏な情報を見てしまう。それを店主のガインに聞いてみても良かったのだが、それよりももっと知っていそうなルキに聞いた方がいいだろうと、雑貨屋を出るとルキの家へと向かう事にした。


「おーい、いるかー?」


「はいはーい?あ、一狼にエペシュ、ごぶ蔵じゃん。やっほー」


 運良くルキは家に居たみたいで、俺が家の扉をノックすると直ぐに出て来た。なので俺達はそのまま家に上がらせてもらい、先程知った不穏な情報の事を尋ねてみた。


「なぁルキ・・・また戦争があるって張り紙見たんだが・・・」


「ん?うん。あるよー?」


「・・・マジか・・・」


 俺が知った不穏な情報とは、またもや戦争があるとの事だったのだが・・・それはルキによってかるーく肯定されてしまった。

 俺は流石にこんなにも頻繁に戦いがあるのかと気になり、具体的にどのくらいの頻度で戦いが起こっているんだと聞いてみる。

 するとだ・・・


「んー・・・今は特に中央で大きな動きがあるからねぇ。その動きにより生まれる魔力に当てられたり、そのせいで流れて来る人が多いから・・・週1ペースくらいかな?ボクらの村だけじゃなくて、仲良くしている村にも救援に行くしねー」


「・・・まじか」


「まじまじー。まじだよー」



 思わぬ新事実も知ってしまったが、戦いは毎週起こるのだと言う事を聞いてしまった。

 これに俺は、『トンだタイミングで来ちまった・・・』と嘆く事しか出来なかった。



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 作者より:読んでいただきありがとうございます。

「面白い」「続きが気になる」「色を知る歳か一狼!」等思ったら☆で高評価や♡で応援してください。

 ☆や♡をもらえると ごぶ蔵が ペロペロさせてくれます。


 こちらも連載中です。↓『悪役令嬢は嫌なので、魔王になろうと思います。』

 https://kakuyomu.jp/works/16816927860702355532

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