第235話 2度目の村防衛戦とわんちゃん

「それじゃあ行って来るわ。お土産も楽しみにしてていいからな」


「行って来ます」


「行って来るごぶ!」


「「「いってらっしゃーい」」」


 結果、何ら揉めることなく『行ってヨシ』となった。


 と、予想外の展開も起こる事無く他の村の救援に向かう事になった俺達は、戦争が起こるであろう1日前にルキの居る村へと出かけた。


「おはよう。中に入ってもいいか?」


「お、おはよう。いいぞー」


 ルキの村へと着くと、門番とも慣れた感じで挨拶をし、ルキの家へと向かった。

 そして彼女の家へと着くと、ドアをノックしながら彼女を呼ぶ。

 すると直ぐに返事が有り、準備を整えた彼女が出て来た。


「やぁやぁおはよう」


「おはようさん」


「おはよ」


「ごっぶごぶー」


「そっちの準備も大丈夫だよね?だったらトゴヤギ村に向かおっか」


「おう。了解だ」


 走ったら直ぐ着くらしいが、念の為に早めに向かおうとなったので俺達は早速出発する。その際ルキは自分の脚で走るとの事だったので、俺の背中への人員追加は見送られた。まぁこれ以上は乗ろうとしても鞍のスペース的に乗れないだろうが。


 そんなこんなで出発し始めたのだが、ルキの言う通り走って向かったら2時間程でトゴヤギ村へと着く事が出来た。


「ここがそうなのか?」


「そだよー」


 俺はトゴヤギ村を見て、中々景観の良い所だと思い感嘆の息を吐く。

 そこは湖の傍にある村で、村の中にも水路が張り巡らされていたのだ。これでもっと規模がデカい町になっていたら、地球にある水の都みたいな感じだっただろう。


「ま、水が近くないと生きれない種族達が多く住んでるからね。こんな感じになるのさー」


「へぇ・・・」


 どうやらここはフロギー族と呼ばれる蛙に似た種族や、半魚族と呼ばれる自ら長く離れられない種族が住んでいる様だ。

 俺達が話をしに向かったトゴヤギ村の村長もそんな人で、彼は水蛇族という体表が乾ききってしまうと倒れてしまうと言う種族だった。その為彼の家に入ったのだが、そこは半分水で埋まっている家だった。


「いやぁ、毎度こんな家に招いてしまってすまないなルキ村長。そして客人よ」


「ボクは全然気にしてないよ。寧ろ『面白くていいじゃん、この家』って感じだし」


「俺も同じくだな。自分が住むならあれだが、遊びに来るくらいだったら『すげぇ』くらいだ」


「うんうん」


「ごぶごぶ」


「ハッハッハ!ありがとう皆!ささ、まぁお茶でも飲みながら話そうじゃないか」


 トゴヤギ村の村長『リョシン』は中々気さくな人で、初対面の俺達を警戒する事もなく接してくれた。

 そんなリョシンと話し始めたのだが、やはり予測通りゾフュル村という村の者がここへと攻めて来るのは確実らしく、今は罠を設置している真っ最中だという事だった。


「私達の特性上、ここから離れて戦うのはかなり不利だからな。どうしても罠を使った戦い方にならざるを得ないのだ」


「リョシンも水の中で戦うなら強いんだけどね」


「まぁぼちぼちとはですが、ね」


 相手方のゾフュル村は殆どが屍族というゾンビみたいな陸生生物らしいので、罠戦法に頼らざるを得ないらしい。

 だが俺達が来た事でその問題は解決したので、罠はこれ以上増やす事を止めるとの事だった。


「代わりに半数程水桶を持って、君達と一緒に陸で戦うとしよう。私達だけだと厳しいが、君達が一緒なら短期戦でイケそうだからな」


「何なら俺が水の魔法を使えるからな。言ってくれれば辺り一帯に雨みたいに水降らせられるぞ?」


「おぉ・・・いいな。厳しくなってきたら頼むよ」


 その他にも、大体の作戦を決めてその場はお開きとなった。トゴヤギ村に居る数少ない陸生の者がゾフュル村の動きを見張ってくれているそうなので、連絡があるまでは自由にしていていいとの事だった。


「湖でも見てく~?」


「ふむ・・・行ってみるか」


「うんうん!」


「映えスポットに行くごぶ!」


 俺達はルキの提案で湖へと行く事にした。

 ごぶ蔵が謎に映えスポットと表現しただけは有り、太陽の光をキラキラと反射する美しい湖は中々に見物で、俺達は時が来るまでそこでのんびりと過ごす事にした。


 ・

 ・

 ・


 明けて翌日、映えスポットでご飯を食べたり寝転んだりしていたお陰でやる気がチャージされた俺達は、ゾフュル村の者が来たと知らせを受けたのでリョシンの元へと向かった。


「来たか。早速出悪いが、布陣先へ向かおう」


 湖から離れると厳しい村人達の事もあり、あまり村から離れていない場所を戦いの場へと選んだ俺達はそこへと向かい、予め決めておいた作戦通りに布陣を済ませた。


「よぉ~し、いつでもこ~い」


 まぁルキの村の時と同じく、ルキのワントップ陣形なのだが。


「ルキ村長の強さや性格はよく知っているからな。その結果、こうなるんだよ」


 リョシンはこう言っていたし、俺達としても少し前にルキの強さを目の当たりにしたので納得だった。

 まぁルキとしてもいいお隣さんと思っているトゴヤギ村のためなので、満更でもなさそうなのでいいだろう。


 と、リョシンらと話していると何処からか腐乱臭の様な臭いが流れてきた。俺が思わず『クサッ!?』というと同時、斥候に出ていた者がやって来てゾフュル村の者達がやって来た事を知らせて来た。


「ルキ村長!聞こえてたよな!?」


「聞こえてたよ~。りょうか~い」


「一狼達も・・・って、大丈夫か?」


「大丈夫・・・だ・・・」


 屍族はどうも俺の天敵らしい。

 まぁ暫くしたら慣れるだろうとそれまで我慢する事にし、俺は何とかやる気を出した。しかしだ、腐肉が体に着くとヤバそうなので、今回は遠距離攻撃に徹する事にしようと俺は心に決めた。


 そんな俺の決心なぞ知らぬルキは、目の前にやって来た相手と悠長に話をしていた。


「まてーい!」


「「「!!」」」


「お前達!ゾフュル村の者だろー!!トゴヤギ村へと攻め込む事は許さないからなー!でも今帰るなら許してやる!だからとっとと帰れ!」


「グババババ!そんなこと言われて帰る奴なんていなぃぃ!ぉい!ぉ前らぁ!戦闘開始だぁ!」


「「「ぉぉおぅ!」」」


「むー・・・やる気か!よぅし、ならかかってこーい!」


 そして数日前に見たのと同じようなやり取りの後、戦闘が始まってしまった。


 ・・・のだが、戦闘シーンも数日前見たのと同じような感じで、俺達が何かをする前に片は付いてしまった。


「ふっふーん。どーんなもんだいってね!」


「うっわぁ・・・ゲロゲロ・・・」


 特に何をする事もなく、少しだけ逃れてきた残党を相手する事には何ら思う事が無かったのだが、戦闘を終えたルキを見て俺はドン引いていた。

 なんせルキは前回もそうだったが、今回も接近戦で戦っていた。しかも武器を使わずに、殴る蹴るだ。

 魔力で何かしているのか、大体は敵から飛び散るモノを弾いてはいるが、それは全てではなくだ。つまり、彼女には屍族の返り血や肉片がついていて・・・


「とっても・・・ゲロいです・・・」


 そう、とってもゲロゲロな事になっていた。

 未だこれが以前の様な普通の敵ならばましだったのだが、今回戦っていたのは屍族という体が腐っている様な敵だ。・・・なのでとても近づきがたい臭いを発していた。


 だから俺はルキが笑顔で『終わったよ~』と近づいて来ても、引き攣った顔で離れざるを得なかった。


「ん?んん~?」


 しかしそんな事だとは知らないルキは不思議そうな顔をして、離れた俺に離れた分だけ近づいて来る。


「ん゛ん゛ん゛っ゛っ゛!!」


「む!?なんだよ~!何で逃げるのさ~!」


 俺の逃げ方が露骨だったからか、ルキはそれが気に入らないみたいだった。そして終には・・・


「捕まえたぞぉ~!いぇ~い!勝利の抱擁だぁ~!」


「ん゛あ゛あ゛あ゛っ゛!!」


 ルキに捕まり、ハグされてしまった。となると勿論俺の体には腐肉や血がべったりと付き・・・


「あぱぁ・・・」


「んぇ?」


「気絶した」


「白目向いてるごぶ」



 俺は気絶してしまった。



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 作者より:読んでいただきありがとうございます。

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 こちらも連載中です。↓『悪役令嬢は嫌なので、魔王になろうと思います。』

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