第234話 修羅の国とわんちゃん
「ま、こんなもんだね」
「えぇ・・・すごすぎぃ・・・」
ルキが飛び出した事により戦いの火蓋は切られ、『いざ戦じゃぁ!』となったのだが、戦いは『2コマで即落ち、ありがとうございました』と言わんばかりの瞬殺劇となった。
戦いが始まった瞬間は、『適当な作戦で、大体の敵はルキが受け持つって言ってたけど俺も頑張らなきゃな』とか思っていたのだが、蓋を開けて見るとあら吃驚、本当に大体の敵はルキが瞬殺してしまった。更にルキが少し漏らしてしまった敵も、予めルキが言っていた通り広がっていた者達がしっかりと対処し、全てがあっという間に終わってしまった。
これはもう『すごすぎぃ』とか言うしかないだろう?
「さーてと、終わった事だし生きてるやつの身ぐるみだけ剥いで撤収しようかー」
俺がそんな風に呆気に取られていると、皆はルキの宣言通りに倒れている者達の身ぐるみを剥ぎ始めた。・・・というか、8割方の者が身ぐるみを剥がされているので、8割方は生きているらしい。
「殺さなかったのか?」
「ん?まーね?ほら、ボクってばさ、博愛の精神を持ってるからね」
「そうだな、うん」
博愛の精神を持っているならば剥ぎ取りなどするなと言いたいが、どうやら迷惑料みたいなモノらしい。そして死んでいる者から剥ぎ取らないのは『殺しちゃってごめんね?』という事だそうだ。
「下手にやっちゃうとね、色々面倒なんだ。だからさ、ほどほどにして追い返すのが一番なんだよね」
「へぇ?」
気になったので詳しく聞いてみると、昔は攻めて来た者だけでなく、相手方の村まで赴き全滅させていたそうだ。しかしそうした所で新しく同じようなのが何処からか流れて来るし、下手をしたら前より厄介なのが住み着く事もあったらしい。
それならと、辺り一帯の駄目な勢力を潰しもしたのだが、それも同じ様な結果になり、最終的には今の様な感じで妥協する事にしたのだそうだ。
「色々アレだな」
「でっしょー?」
それを聞き感想を述べたのだが、これにはルキが意外とやべぇやつという意味も入っていたりする。
しかし本人は俺の感想を聞き、『でっしょー?』と軽く返事をしていた。・・・ま、知らぬが仏か。
「姉さん、終わったよ」
と、俺達が話している内に作業は終わってしまったらしい。俺は軽くレターユに謝ったのだが、『そもそもそういう作業に向いていなさそうなので大丈夫ですよ?』と言われてしまった。・・・まぁ確かにだ。
そんな俺の手の事情は置いておき、作業も終わったので撤収することになった。
「あ、んじゃあ最後に忠告してくるね」
一応最後に敵方の大将へと忠告を入れるらしく、ルキは『また来たら今度は全滅させるからね!』と言っていた。ルキ曰く、これで暫くは大丈夫らしい。・・・まぁ、こういう手合いはアホらしく、暫くするとまた攻めて来る事が殆どだそうだが。
ともあれ、それを最後に俺達は村へと帰った。
そして村へと着くと、ルキが全員へとこの後のあれこれを言い始めた。俺達の様な有志はあの張り紙の通り何らかの報酬が貰えるそうなので、後で会議場へと来てくれとの事だ。
「んじゃあ解散~!各自後始末をお願いね~!」
ルキが各々のする事を言い終わるとそれで解散となったので、俺達は言われた通り会議場へと向かう事にした。
「あ、一緒に行こうよ」
「なら儂も一緒に行くかの」
俺達が歩き始めると、ルキ、それに俺達同様有志で参加したマウロも一緒に行くと言い出したので、俺達は一緒に会議場へと向かう事にした。
その際報酬の事をチラリと話したのだが、まぁ大体はお金が貰えるらしく、マウロもお金を貰うとの事だった。
「孫が甘いもんが好きでのぉ。買ってやるんじゃ」
因みにこのマウロだが、外見は頭に角、額に目が付いた大柄の老人だ。『鑑定』を掛けると『鬼眼族』という種族で、強さはなんと・・・俺と同程度だ。
「儂の孫はなぁ・・・それはもう可愛くてのぉ・・・」
一見唯の好々爺に見えるのだが、やはりこの世界の生き物だけあり見た目で判断してはいけない様だ。
「可愛いと同時にヤンチャでのぉ・・・婆さんにそっくりじゃ・・・」
「そ・・・そうか」
「あ、マウロ。そんなこと言ってるとビビデに言うよ?」
「・・・それは勘弁してくれんかのぉルキ」
そんなマウロの孫トークを聞きつつ会議場へと着くと、ルキが中に居た婦人部の人へと何かを言づけた。
何かと思っていると、婦人部の人は袋を持ってきたのだが、どうやらそれはお金が入っているらしく、ルキは同じく受け取った小袋にお金を入れると俺達へと差し出してきた。
「はいマウロ」
「うむ」
「一狼達もお金でいいんだよね?」
「だな」
「ん。じゃーこれね。エペシュとごぶ蔵の分もまとめて入ってるから」
「ありがとな」
「こっちこそありがとうね皆」
報酬を貰った事で一区切りとなり、突発的に起こった戦争のアレコレは漸くこれで終わりとなった。
俺は何事もなくて良かったとホッと安堵の息を吐き、今日はこれで帰るとルキ達に挨拶をする。
その後会議場の外へと出ると、エペシュ達が貰ったお金で何を買おうかと相談していたので雑貨屋へと寄る事にした。
「こんちはー」
「らっしゃい。ん?お前らか。今日はどうした?」
中へと入るとガインに何用か聞かれたので、戦争で貰った報酬を使いに来たと言っておいた。
それでガインも解ったらしく、『お疲れ。村の為にありがとうな』とお礼を言われてしまった。
俺達はそれに照れ、ウキウキ気分で買い物を始めた。
と、その時・・・
「こんにちはー」
「らっしゃいルキ」
「ん?」
先程別れたと思ったルキが現れた。
彼女はこちらに気付いた様で手を振って来たのだが、その手には何かが握られていた。
俺はなんとなくそれが気になったので、声を掛けるついでに聞いてみる事にした。
「さっき別れたばっかりだがまた会ったなルキ。どうしたんだ?また何かお知らせでも張りに来たのか?」
「やほやほ。うん、そうだよー」
ルキが持っていたのが掲示板に張ってあるような紙だったので言ってみると、どうやら正解だったらしく、ルキは戦争の人員募集の紙を剥がして代わりにそれを張り始めた。
俺はそれを見て、『ははぁ~ん。無事に終わったって言うお知らせだな?』と思っていたのだが・・・
「よしっと」
「ふむふむ。・・・ふむ?ふむぅぅ??」
それは戦いが無事に終わったという報告の類ではなかった。
なんとそれは・・・
『急募:戦える人 報酬:後で決めます ・・・6日後にゾフュル村がトゴヤギ村に戦争を吹っかける可能性が高いので、一緒に救援に行ってくれる人を募集しています。一緒にボク達の良き隣人を守ろう!』
再びの人員募集だった。
流石に俺はこれに突っ込まざるを得なく、もの凄い勢いで突っ込んでしまう。
「ちょ・・・ちょちょちょ!一体どういう事だ!?トゴギヤ村って何だ!?え?また戦いなのか!?」
「え?あ、うん。そうだよー」
「そうだよーって・・・!・・・ああ・・・うん。そうか・・・」
しかしルキの答えは数日前に聞いた返事と同じ感じで、もの凄い軽いモノだった。
俺はその感じにデジャヴを感じ、少し冷静になれたので再び詳しく聞いてみる。
するとこれも書いてあったことの通りらしく、この村と友好関係にあるトゴヤギ村にゾフュル村という所が戦争を吹っかける可能性があるらしく、それの救援に行く人を募集しているのだという。
唯今回と違う事は、こちらから救援に行くのはルキと募集で来てくれた人だけらしく、誰も来ない場合はルキのみが行くのだという。普通ならこれに『無謀じゃないか!?』とか言う所だろうが、先の事を思い出すとルキ単騎で出張るのは余裕だし、コスパがいいのでそちらのがイイのだろう。
「ま、そういうことさー。あ、もしかしてまた参加してくれたりする?」
「・・・ん~」
ルキ無双の事を思い出していると、彼女から救援戦のお誘いを受けてしまった。どんな人が暮らすかもわからぬ村の為に戦いに行くのはどうかと思うので考えた。
「そうだな。俺の仲間に聞いて問題ないなら参加する事にする」
だがこれも何かの縁かも知れないので、俺はそれを受ける事にした。他にも一応理由があり、感じのいいこの村に友好的な村なのでトゴヤギ村も中々いい村だろうと、そんな考えもあった。
(もしかしたらこの村みたいに買い物出来たり、気軽に遊びにいけたりするかもしれないからな、うん。これは是非助けに行って顔を繋ぐべしだ)
多少即物的考えもあったりするが、ぜひこの機会に俺達に友好的な村を増やしていくべきである。
なので俺は買い物を終わらせると足早にダンジョンへと戻る事にした。
そしてダンジョンへと戻ると再びいつメンを招集し、戦争の事の報告と、再度戦争に行って来ることを報告した。
その結果・・・
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作者より:読んでいただきありがとうございます。
「面白い」「続きが気になる」「驚きの戦闘描写0!?これは即落ちですわ」等思ったら☆で高評価や♡で応援してください。
☆や♡をもらえると ルキが 即落ち2コマ顔を見せてくれます。
こちらも連載中です。↓『悪役令嬢は嫌なので、魔王になろうと思います。』
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