第232話 村の為に戦う事を決めたわんちゃん

『急募:戦える人 報酬:後で決めます ・・・5日後にナババ村が戦争を吹っかけて来る可能性が高いので、戦える人を募集しています。一緒に村を守ろう!』


 傭兵募集とも呼べるようなこの知らせを見て、俺はある事を思い出した。


(そう言えばレターユが戦いが頻発しているとか言っていたっけか)


 俺達とレターユに最初にあった日、彼女は確か『この森に点々とある村は敵対している所も多く、頻繁に戦いが起こっているんですよね。だからドランに乗り空から見回っているんです』と言っていた。

 なのでこれは恐らくその『よくある戦い』のお知らせなのだろうが、それにしても何故ここに張ってあるのだろうか?


「なぁ、何でこれはこんな所に『大根売ってます』みたいな感じで張り出してあるんだ?」


 俺はそれが気になったのでルキへと尋ねてみた。

 するとルキは笑いながら返してきた。


「あはは!大根って!いひひひ!」


「そんなにツボったのか?」


「ツ・・・ツボってなんか・・・いひひひひ・・・」


 何故か俺の言葉はルキのツボに入ったらしく、彼女は体をピクピクしながら笑っていた。そして暫く笑った後漸くそれが治まったのか、俺の質問の答えを返してきた。


「あー・・・何であんなにおかしかったんだろう。っと、そういえば何でこんな所に張り出してあるかだっけ?」


「おう」


「ま、あれさ。あくまで戦いは守備隊がメインなんだけど、一応戦いがありますよーってのを知らせるためと、もし手伝ってくれる人が居たらもうけものだなーって事で張り出してあるんだ」


「ふむ」


 どうやらここにこんなものが張ってあるのはそういう事らしかった。

 そして一応の効果はあるらしく、1回につき2,3人位は手伝いに来てくれる人もいるらしい。


「この村ってさー、守備隊に入ってないけど結構強い人も何人かいるんだ。その人達の手が空いてれば手伝ってくれるって感じなんだよね。まぁ手伝ってくれなかったらくれなかったで、村の守りが堅固になるからいいんだけどね」


「へぇ・・・」


 ルキの説明を聞く限り、戦争が始まるのにこの村の様子が普通なのはこの村の戦力が高いからということらしい。

 確かにレターユ位の実力や、目の前の推定強者であるルキが居れば敵方にやばい奴が居ない限りは大丈夫なのだろう。

 だがそれにしてもだ、随分戦争がスナック感覚なモノである。


(まぁ・・・死が割と近い世界だからな。そんなモノか?)


 要は価値観の違いなのだろうが、俺の価値観はどうやら未だに前世に引っ張られている部分があるらしい。魔物らしい価値観もあるにはあるかも知れないが、未だに俺は自分が地球の日本人でいるつもりなのかもしれない。


(これはぼちぼち慣れていくしかないな。っと、それよりもだ・・・)


 哲学的な事は置いておき、俺はそれよりも戦争の事が気になった。ルキの言う限りでは大丈夫だというが、戦争は戦争だ。もしかしたらこの村にも被害が出るかもしれない。

 俺としては俺的理想村のここが荒らされるのは見たくないので、出来る事ならば手助けしたい所だ。

 なので俺はルキへと聞いてみる事にした。


「なぁ、これって俺等でも参加できたりするか?」


「ん?別にいいよー?参加する?」


「ああ」


「ん、解った!」


 これまた軽ーい乗りで了承されてしまった。というかだ、了承するにしても村長也なんなりの責任者に許可を取るべきなのではないだろうか?

 俺はそれが気になったのでその事を言ってみる。すると・・・


「え?あぁ、大丈夫大丈夫。この村の村長はボクだから!」


「なん・・・だと・・・!?」


 衝撃的な事実だったが、どうやらこの村の村長は目の前の少女だったらしい。

 いや、確かにレターユの姉だとは言っていたが、このナリで村長だったとは驚きである。

 だが兎も角だ、そうだと言うのならこれについて問題は無いという事なのでいいだろう。というよりもだ、問題は他にあった。


「あー・・・すまんエペシュ、ごぶ蔵。勝手に戦いに参加する事にしてしまったわ」


 そう、問題は俺が勝手に戦いに参加する事を決めてしまった事だった。更にこれは突発的に決めたことであるのでごぶ助や長老にも相談していないので、帰ったら彼らにも謝らなければならない事だ。

 まぁ・・・


「うん」


「問題無いごぶ」


 ごぶ助達も目の前の2人みたいに『ん?何か問題があった?』みたいに返してくるかもしれないが。

 とまぁ即お許しを貰った訳だが、その戦いの事をもう少し詳しく聞いてみる事にする。何故なら、それによってはこちらも出す戦力を変えようと思うからだ。


「んー・・・そうだねー・・・大体だけど、敵の戦力は3レターユ+ドランくらいかな?」


「・・・イマイチ微妙な言い方をするなぁ、おい。まぁ解りやすいが」


「でしょー?」


 しかし敵の戦力は3レターユ+ドラン位だという事なので、本物?のレターユ+ドランで1人前、ルキも出るとの事なので1人前以上となるので増援は必要なさそうだ。というか、もしかしたら俺達も要らないかもしれない。


「でも戦力はある事に越したことがないし、居てほしいかなー?」


 だがそれを言うとルキにそう言われてしまったので、俺+エペシュ+ごぶ蔵がその戦いに参加する事となった。

 と、そうと決まれば善は急げだ。俺はルキに『仲間に事情を話してくる』と説明し、直ぐに帰ると言って村の門まで移動した。

 そして別れる直前に『戦争が始まる1日前、4日後に再び来るわ』と言って帰ろうとしたのだが・・・


「あ、ごめん。あれ張ったのが3日前だから、戦争前日は明日になるんだよね!」


「・・・なら明日来るわ」


 掲示板に張ってあった物の更新をしていないというチョンボにより、俺達は明日再び村へと訪れる事となった。

 だがしかしそれならそれで問題は無いので、俺達はルキやレターユ、門番のおっちゃん達に挨拶をして村から出た。


 ・

 ・

 ・


 俺達は村から出るとダンジョンへと一直線に帰り、辿り着くとエペシュとごぶ蔵とはそこで一旦解散となった。

 そしてその代わりといってはなんだが、俺は3人のイツメンを招集し会議を開いた。


「実はカクカクシカジカ・・・・」


「ふむ、マルマルウマウマですかゴブ」


「カクマルウマーがうな」


「ごぶごぶごーぶごぶご?」


「いや、最後のはわからんわ」


 長老、ニコパパ、ごぶ助へと先程の事を話し、先ずは謝る。すると彼らはやはりエペシュ達と同じで即許してくれた。

 俺は彼らにお礼を言い、続いて明日直ぐに出ないといけない事を謝ると、その間の事について話す事にした。


「さっき言ったかも知れないけど、外の森には魔族が点々と村を作り暮らしているらしい。だからごぶ助以外だと下手に出歩くと危険かもしれないから、俺達が戻るまでは皆レモン空間かポンコのダンジョンで過ごしてもらうしかないかな」


「ごぶごぶ」


「それならごぶ助様に外の探索をしてもらうと言うのはどうですゴブ?半日くらいならば、もし侵入者が現れたとしても儂とニコパパ殿が居れば何とか凌げるはずですゴブ」


「がうがう」


「それもいいかもしれないな」


 そうして俺が居ない間の事を決めたのなら、俺は明日のために早く寝る事にした。

 だが寝るにも先ずはご飯だと思い、俺は会議場の下にあるごぶ蔵食堂へと向かった。


「おーいごぶ蔵、夕食いいかー?」


「ごぶ!かしこまりーごぶー!ごぶぉぉぉおお!!」


 食堂へと着きごぶ蔵に声を掛けると、奴は以上にテンションが高かった。だがそれも仕方ないのかもしれない。


「買って来た物の所為か」


 そう、ごぶ蔵はルキの村で買って来た新調理器具や新調味料等の所為でテンションがアゲアゲボンバーになっていたのだ。


「へい!おまちごぶ!」


「ありがとな。あ、ごぶ蔵。会議で明日ルキの村に行くってのを伝えてきたからな?お前も早く寝ろよ?」


「了解ごぶ!」


 そんなテンションアゲアゲのごぶ蔵へと明日出かける事を伝えたのだが、ごぶ蔵は聞いているのかいないのか微妙な感じで返してきた。


「ごちそうさまー。んじゃ俺は寝るわー」


「ごぶ!ごぶぶぶぶ!」


 だが正直ごぶ蔵は留守番となっても問題ないので、俺はそのまま放っておく事にしてご飯を食べたらさっさと寝床へと向かった。エペシュには声を掛けていないが、彼女はごぶ蔵と違うし早寝早起きだから大丈夫だろう。


「んっし・・・んじゃお休みっと・・・」


「うむ」



 そうして俺はいつの間にか姿を現したニアと共に眠りについた。



 余談だが、別に一緒に寝ているからと言って何もしていないのであしからず。・・・おぎゃぁ。



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 作者より:読んでいただきありがとうございます。

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 こちらも連載中です。↓『悪役令嬢は嫌なので、魔王になろうと思います。』

 https://kakuyomu.jp/works/16816927860702355532

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