第228話 第1村人とわんちゃん
俺達の目の前に、
「ド・・・ドドド・・・ドラゴン!?」
「グルルルル・・・」
そう・・・ドラゴンだった。
「いや、ドレイクなのじゃ。しかもレッサーじゃな」
いや、レッサードレイクだったらしい。
更にこのレッサードレイク、空からまるで王者の様にバッサバッサと翼をはためかせながら降りてきたくせに、ニアに気付いてからはシューンと縮こまり、伏せの状態で止まってしまった。
「グルゥゥン・・・」
「ちょっと!どうしたのドラン!?何で伏せるの!ねえ!」
そうなると困るのは背中に乗っていた人だ。
「・・・っていうか、背中に人が居たのか」
レッサードレイクは体が大きかったから気づかなかったのだが、どうやら背中に人を乗せていたらしい。その人は急に伏せて動かなくなったレッサードレイクに慌てふためき、俺達の事等目に入らないと言うような感じでレッサードレイクを宥めていた。
「ふむ。チャンスだな」
そんな彼らには悪いが、俺は彼らの事を確認するには丁度イイと思い、この隙に彼らの事を鑑定してみる事にした。
「どれどれ・・・『鑑定』っと・・・」
名前:ドラン
種族:レッサーウィンドドレイク
年齢:16
レベル:20
str:693
vit:631
agi:772
dex:508
int:164
luk:153
スキル:ひっかき 咬みつき 筋力強化・小 風乗り
ユニークスキル:
称号:
名前:レターユ・マハベル
種族:羊魔族
年齢:98
レベル:63
str:662
vit:733
agi:520
dex:551
int:565
luk:133
スキル:雷魔法 裁縫 補助魔術 槍術 弓術
ユニークスキル:
称号:ダンジョン1階層突破 トトテカ村守備隊長 教育ママ
鑑定した結果、レッサードレイクのドランは中々に強く、背中の人物レターユも中々の実力を持っていた。・・・というか、背中の人物は全身鎧を着こんでいたので解らなかったが、どうやら女性だった様である。
「ドラン!いう事聞きなさい!めっ!ですよ!」
「グルゥ・・・」
そんなレターユお婆さん?は尚も伏せたままのドランに何か言っているのだが、ニアがいる限り無理だろう。
そしてこのままだと状況が変わらなさそうなので、俺はレターユお婆さんへと声を掛ける事にした。
「おーい。ちょっといいかー?」
「今はそれどころじゃ・・・って、え!?あ!そうだ!誰かいたんでしたね!」
レターユお婆さん?は漸く俺達の存在を思い出したのか、傍らに置いてあった槍を引っ掴みドランの上から飛び降りた。
そしてドランの目の前へと着地すると、軽く槍を構えながら話しかけてきた。
「ゴブリンとエルフ、それにウルフ?が2頭ですか」
「2人共ウルフではないけどな」
「む・・・言葉を喋るという事はその様ですね。それで、アナタ達は一体何処の村のモノですか?まさかウヤボ村のモノではないですよね・・・?」
「ん?あー、俺達は昨日ここに来たばっかりだから、何処の村のモノでもないな」
「え?」
「えっとだな・・・・」
俺はダンジョン移動によってこの大陸に来たばかりだと説明をする。初対面で武器を構えている人に対して無防備過ぎだろうと思われるかも知れないが、正直目の前の2人は俺の相手になるレベルではないので、あまり良くない人っぽかったら途中でやってしまう事も出来るのでこんなにペラペラと喋っている訳だ。・・・まぁ話している感じまともな良い人っぽいので、取りあえずは様子見だが。
(それに老人をやるのはちょっとアレだしな・・・)
余計な事を考えつつも大体の事を薄ーく説明し終わると、レターユお婆さんはふむふむと頷き、槍を降ろし構えを解いた。
「ふむふむ・・・アナタ達が誰か、そして害が無さそうな人物だという事は解りました。・・・まぁ気配は抑えてほしいのですが」
「抑えては居るんじゃがな。そいつはレッサーといえど竜じゃ、本能的に感じるんじゃろう」
「そうですか。それなら仕方ないですね。あ、私達の自己紹介をしていませんでしたね」
そしてレターユお婆さんはこちらの事を聞いてばかりだと悪いと思ったのか、自己紹介を始めた。その時被っていた兜を脱いだのだが・・・
(ああ・・・成程。羊魔族ってなってたが、長寿系種族だったか)
レターユお婆さんはレータユお姉さんだったようだ。
「私はレターユ・マハベルと言います。種族は羊魔族で、歳は・・・秘密です。そしてこの子はドラン。レッサーウィンドドレイクで、歳は16、私が卵の時から育てた息子の様な子です。私達は・・・近隣の村の守備隊、そのメンバーです」
優しい顔立ちをした美人のレターユお婆さん改めレターユお姉さんは名前なんかを名乗ってはくれたのだが、流石に何処に村があるのか等は教えてはくれなかった。だがそれはこちらもダンジョンの位置を教えてはいないのでどっこいどっこいだろう。・・・まぁ真下にあるのだが。
それはさておきだ、レターユはこの辺りの事は軽くだが教えてくれた。
それによるとこの辺りは中央大陸でも辺境の方にあるらしく、点々と魔族の人達が暮らす村があるのだとか。そしてその村々は仲が良く交流している所もあるにはあるのだが、大体の所が敵対しているらしく、戦いが頻発しているのだとか。
「その為私はドランに乗り、空から見回っている訳です」
「へぇ・・・」
空を飛べる魔族や魔物もいるには居るが、ドランの機動力とレターユの魔法でどうにかなるのでそこは大丈夫だという話だ。因みにこの岩山は見回る際の休憩ポイントの1つらしい。
「まぁここ広いもんな」
「ええ。何もなく広い、休憩ポイントとしては良いんですよね。中央辺りに居れば下からは見えませんし」
「確かに」
そうして軽い情報を教えてもらった訳だが、それが終わるとどうしたモノかとなった。なんせ互いに戦う気や騙す気は無さそうなモノの、自分達の住処は教えない位には心の距離がある。なので『この後家来てお茶飲まない?』とかにはならない訳だ。
「この後暇ごぶ?なんならごぶ達の家でお茶でも飲んでくごぶ?」
・・・約1名そうでも無いゴブリンが居たが。
「ごぶ蔵のお茶、美味しいよ?」
・・・訂正、2ゴブリン(!?)だ。
「あ~・・・いえいえ、お構いなく。まだ見回りの途中ですので、ええ」
しかし警戒心・・・というより、俺の事を考えてくれたのだろう、レターユは『ゴブリンはやはり無警戒ですねぇ・・・』みたいな顔をしながらその申し出を断ってくれた。・・・これはレターユの事は信じてもいいかもしれないな、うん。
まぁともあれだ、レターユはここで少し休んだら再び見回りに行くことになったので、俺達は先にお暇する事にした。
「そんじゃ俺達は行くわ。ここら辺の魔物は適当に狩っても問題ないんだよな?」
「はい。他者は全て敵って感じのダンジョンも偶にありますし、狩ってもらえるなら。あ、でも魔族を見たら、なるべく最初に話しかけてくれると嬉しいかもです。私の村の者かもしれないので・・・」
「ああ、出来る限りそうしよう。因みに、レターユの村の人は羊魔族だけなのか?」
「あ、いえ。色々居ますね」
「そうか」
「ええ。すいません」
最後に軽く挨拶だけ交わすと、俺達は岩山から降りた。その際岩山から下に向けてダイブしたのだが、レターユが後ろで『え!?ちょっと!?』とか叫んでいたが・・・俺はこれしき余裕なのだよ。
とまぁそんな感じで中央大陸第一村人との邂逅を終えた訳だが・・・
「運が良かったな」
「ごぶ」
「だね」
ここら辺の情報をくれた好戦的ではない人物に出会えたことは、俺達にとって幸運だった。なんせ0からのスタートだ、情報は少しでもある事に越したことはない。
更にだ・・・
「現地の人と仲良くなって、交流なんか出来るかもだなぁ」
「ごぶ。どんな料理をしているのか教えてもらいたいごぶ」
「ここだったら皆仲良く出来そう」
レターユは俺やごぶ蔵の様な魔物、エペシュの様なエルフにも何の偏見なく接してくれた。
・・・これが一番大きい収穫だった!
つまりここでなら俺達は近隣住民とも仲良く出来、更にダンジョンに籠らずとも自由に過ごせるかもしれないのだ。
「前の所でも人間がいるって解った方向には皆行きずらかったしな。万が一人間が様子を見に来ないかも注意していたみたいだし」
「ごぶごぶ」
なんだかんだ人間がいると、俺達は何時攻撃されるかと気に掛けざるを得ない。その点魔族なら攻撃されそうではないので一安心なのだ。・・・まぁ、レターユの話を聞く限り蛮族みたいな奴らもいるらしいが。
兎も角だ、人間がいるよりかは安心して暮らせそうでラッキーという事だ!
「前の所よりかは過酷かもしれないけど、明るく頑張れそうだな。頑張っていこうぜ!」
「ごぶ!」
「うん!」
俺達は希望に胸を膨らませながら、未知の土地の探索へと乗り出した。
「甘いのぉ・・・魔族もヒューマンと比べればマシじゃが複雑な社会をしておるというのに。ま、それにどう対応するかもお楽しみではあるがの」
ニアの不穏な言葉を背に受けながらだったが。
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作者より:読んでいただきありがとうございます。
「面白い」「続きが気になる」「警戒心0生物のゴブリンさん・・・」等思ったら☆で高評価や♡で応援してください。
☆や♡をもらえると ごぶ蔵が 家の扉を無警戒に開けてくれます。
こちらも連載中です。↓『悪役令嬢は嫌なので、魔王になろうと思います。』
https://kakuyomu.jp/works/16816927860702355532
お詫び:ドランのステータスを修正 2022/12/22
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