第227話 儀式と新大陸探索を行うわんちゃん

「「「ごーぶごぶごぶー」」」


「「「がーるがるがるー」」」


 レモン空間内にある森、その中でも開けて広場になっている場所にて、俺達は火を囲んで歌い、踊り、祈っていた。


「わおーんわんわんわおーん」


 それは居なくなった友を送り出すためのモノでもあり、俺達の新たな門出を祝うためのモノでもある、一種の儀式の様なモノだった。


「わおーんわんわんわおーん。・・・はぁ」


 そんな中、俺も歌とは呼べない様なモノを歌いながら踊り、祈っていたのだが、精神的に疲れたのでその輪から抜け出し、少し離れたところに腰を下ろした。


「ふぅ・・・うまくいかないもんだなぁ・・・」


 そうして少し離れたところから皆の事を見ていると、少し前の事がジンワリと頭に浮かんできた。

 それは倒した草原の主の事だったり、その後に現れたヤバイ奴、そしてそのヤバイ奴から俺達を逃がすために時間稼ぎを買って出てくれた仲間の事だったりだ。


「何だよ・・・最後の言葉が『いつかリベンジかましてくれや』って。ああ、やってやるよ・・・いずれ最強にもなってやるよ・・・」


 俺はニアから真実を聞く事となったのだが、その際マサシの最後の言葉というのが『いつかリベンジかましてくれや。いずれ最強になるんなら余裕だろう?』だった。

 これを聞いた時は『は?』ともなったし、ニアにもあたったモノだが、今となっては俺の中に残った友との誓いにもなったこの言葉を、俺は繰り返し呟く。


「ごぶ」


「リベンジ・・・最強・・・リベンジ・・・ああ、ごぶ助か」


 そうしていると皆に混ざり歌って踊っていたごぶ助が輪を外れ、俺の傍へとやって来た。そして俺の傍へと近づくと真横に腰を下ろし、そのまま俺の横っ腹辺りをポンポンと優しく叩いて来た。


「ごぶ。忘れるのは勿論駄目ごぶ。でも捕らわれ過ぎるのも駄目ごぶ。だから一旦頭の中に棚を作り、そこに入れて置くごぶ。それが我らゴブリンに伝わるやり過ごし方ごぶ」


「・・・成程」


 俺はごぶ助の言葉を聞き感謝の念を抱くと共に、ゴブリンの新たな生態に驚愕していた。まぁその後直ぐに『まぁ今考えた方法ごぶが』とか言われて『おい!』とか言ってしまったが。

 それは兎も角だ、ごぶ助もごぶ助なりに思う所もあるのだろう、その後ぽつぽつとマサシ達についてやあのヤバい奴についてを語り出した。

 俺はそれを聞き、偶に俺からの意見も言い語り合った。そうしているといくらか心が軽くなった気がしたので、話が終わったタイミングで立ち上がり、ごぶ助に輪の中へと戻ろうと提案した。


「ごぶ。それがいいごぶ。大いに歌って踊れば色々吐き出せて良くなるごぶ」


「ああ。そうだな」


 するとごぶ助もそれに賛成の様だったので、俺達は皆の輪の中へと戻り、再び歌い踊り、祈り始めた。


「わおーんわんわんわおーん」


「ごーぶごぶぶーごぶごぶぶー」


 ・

 ・

 ・


 そんな事があった日の翌日、俺は朝から集会場に何時もの面々を集めた。


「おはようみんな」


「「「おはよう」」」


「昨日のあれで一区切りついた・・・うん、ついたことにするので次に進もうと思う。というか、次に進まなきゃやばいだろうから次に進むぞ!」


「ゴブゴブ。昨日は大丈夫そうでしたが、今日はダンジョンへの侵入者も居りますしなゴブ」


「ああ」


 何時もの面々を集めたのは次の動きを決めるためでもあったが、早急に対応しなければならないダンジョンへの侵入者の事もあったからだ。


「しかし色んな生き物がひしめき合う大陸だ、ってのは聞いていたが、早速来るとはなぁ・・・」


 俺達が新たに移動して来た場所というのが『中央大陸』なのだが、ここは割といろんな魔物や魔族、人等がひしめき合う場所らしい。その為安全な地帯は無いと聞いていたのだが、こんなに直ぐにダンジョンの入口が見つかるとは思っていなかった。


「それでは・・・っていうか、ポンコのコアルームへと移動するか。ここだと状況が解らん・・・」


「確かにですゴブ」


 俺達はポンコのコアルームへと移動し、状況を尋ねてみる。すると侵入して来たのは1体の虫型魔物らしい。


【百足に近い魔物デスネ。尻尾も頭になってイル、普通の百足とは違う形態をしていマすガ】


「ふむ」


 強さ的にもモニターしている限りはそこまで強くも無さそうなので、放って置いても大丈夫かもという事なのだが、ここはあえて俺が出ようと思う。

 というのもだ、コイツを倒すついでに外へ行こうと思っているのだ。


「皆、大丈夫そうだから話を戻すんだが、これからの事だ」


 俺はそれを皆へと話し、結果それは認められた。


「早く行くごぶ!」


「行こ!」


 因みにだが、同行者としてごぶ蔵とエペシュが一緒に行くことになった。理由としては・・・なんとなくである。いや、嘘だ。唯単に、知らない土地という事で守りをごぶ助に任せることになったので、その代打としてコックと強さナンバー3の2人が選ばれたのだ。

 俺は『早く行こう』と急かす二人を背中に乗せ、取りあえずは侵入して来た百足の元へと向かった。


「「シャララララ!」」


「おおぅ・・・何か忙しそうなやつだな」


「だね」


 百足の元へと辿り着いたのだが、そいつは『ダブルヘッドセンチピード』というそのまんまな名前の魔物で、ステータス的にはごぶ蔵でも倒せそうな感じの敵だった。

 なので俺はごぶ蔵に任せる事にしたのだが・・・


「こいつは姿焼きにして塩草振ってが美味しそうごぶ」


 ごぶ蔵はさくっと両方の脳天?に包丁をぶっ刺して締め、そいつを収納してしまった。更に奴の呟きからするに、あれは食材にするのだろう。


「まぁ・・・毒だけは気にしてくれたら、うん」


「任せるごぶ!さぁ外へ行くごぶ!未知なる食料がごぶ達を待ってるごぶ!」


「待ってる!」


「お・・・おう」


 まぁ虫を食べるのも今更なのでサラッと流すと、外へ早く行こうと急かされてしまったのでそれに頷き、ごぶ蔵が再び背中へと乗ると外へと向けて歩き出した。


 そしてダンジョンから一歩外へと出たのだが・・・


 そこは・・・


「ふむ・・・」


「ごぶ」


「うん」


「うむ、森じゃな」


「ああ。・・・ってめっちゃサラッと会話に入って来たな!?」


「気にするでない。お主のおぷーなとでも思っておくが良いのじゃ」


「買う権利をくれるのか?・・・いや、オプションって言いたかったのか」


 ニアとの云々は兎も角だ、外へと出ると、そこは・・・唯の森っぽかった。

 一応後ろを振り返ってみると切り立ったデカい岩山があったので、どうやらダンジョンの入口は森の中のデカい岩山に出来たみたいだった。


「森の中だから百足が出たんだね」


「ぽいな。一応それをポンコに伝えて、この崖の上にでも登ってみるか」


 後ろに見える岩山はサッと見た感じだが高さがあるらしく周囲を見渡すのに最適そうだった。なので俺はそこへと上り、周辺の森がどうなっているのかを見渡す事にした。

 俺は一旦ダンジョンの中へとサッと入り、外の状況を宙に向けて喋る。知らない人から見たらアレな光景だが、これで恐らくポンコには伝わっている筈だ。


「うし、んじゃあこの崖の上に行くか」


 次に岩山へと登るのだが、俺達がいる場所からは切り立った崖にしか見えないので何処からか登る道を見つけなくてはいけない・・・普通なら。


「2人共、しっかり捕まってろよー」


「うん」


「ごぶ!」


 だが俺は普通ではないわんちゃんなので、魔力や魔法を使い僅かにある凹凸等を使ってピョンピョンと切り立った崖を登って見せる。

 そうして暫くピョンピョンとしていると、崖の上へと到着した。


「ふぅ・・・ピョンピョントしてしまったぜ。心は別にピョンピョンしてないが」


「?」


「ごぶ?」


「まぁ気にしないでくれ。それよりもだ・・・ふむ」


「うむ。お主らが居った様な森じゃな。まぁ普通の森のようじゃが」


 台形の形をしていたらしい高い岩山の上から森を見渡すと、そこは俺達が居た『魔の森』の如くとても広い森林だった。しかしニアが言う分には『魔の森』の様に特殊な感じの森ではなく、唯の森との事だったが。

 という事はだ、『魔の森』の中心を塒にしているというニアと戦えるほどのヤバい魔物、それ級の魔物が居るという可能性は低そうだ。


「うむ。あそこまでのはおらんじゃろうな。しかし、ソコソコに強いのはおるかもしれんのじゃ」


「え?」


「それはそうじゃろう?強いモノでも弱いモノでも、気に入った場所に居るのは普通じゃないかや?」


「た・・・確かに・・・!」


 しかしそれはニアの言葉により否定されてしまった。更に事前に聞いていた情報だと『中央大陸は東西南北中央とある5つの大陸でレベルが高い魔物が多い』とも聞いていたのを思い出し、俺は尻尾をダラーんと垂らしてしまった。


「ぐぅ・・・強くなる為に強い所がイイとは言ったモノの、やべぇ奴はお断りだっつぅの・・・マジ○ぁっきんだわ・・・っは!」


 俺がシューンとしたままボソボソと呟くとそれを心配してくれたのか、小さな手が背中を撫でてくれた。

 俺はそれを受けて嬉しくなり、『流石俺のマイスィートゴッデスエペシュたん!』と叫びそうになったのだが・・・


「よしよし・・・元気出すごぶ」


「・・・オマエカーイ。まぁありがとうなんだが」


「ごぶ?」


 撫でてくれていたのはごぶ蔵だった。まぁありがたかったので礼は言ったけどさ!


「と、それは兎も角だ。ん~・・・取りあえずは何時もの様に適当に探索するか」


 マイスィートゴッデスはごぶ蔵だった?という全俺が泣きそうになる事態はさておき、ここからの方針を考えていると・・・ふとニアが何かを呟いた。


「む?ふむ、お客さんのようなのじゃ」


「ん?・・・ん!?何か来るぞ2人共!」


 一体なんだと思っていると俺の『索敵』が何かを捕らえた。なので俺は背中の2人へと警告を飛ばし、近づいて来る何かに対し備えた。備えたのだが・・・


『・・・バッサバッサ・・・』


「うそーん・・・」


「私も始めて見た・・・」


「美味そうごぶ」



 現れた者に対し俺達は驚愕のあまりポカーンとしてしまった。・・・まぁ1名感想が可笑しかったが。


 だがそれも仕方ないだろう、なんせ現れたのは・・・



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 作者より:読んでいただきありがとうございます。

「面白い」「続きが気になる」「え?ごぶ蔵女神だったん?」等思ったら☆で高評価や♡で応援してください。

 ☆や♡をもらえると ごぶ蔵が ゴブリンの女神に進化します。


 こちらも連載中です。↓『悪役令嬢は嫌なので、魔王になろうと思います。』

 https://kakuyomu.jp/works/16816927860702355532

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