第225話 再びダンジョン移動と待つわんちゃん

「ごぶ助!誰も付いて来てないよな!?」


「ごぶ!」


「よしっ!じゃあここら辺で一旦止まるか・・・ふぅ・・・」


 戦いの途中から逃げる方向へとシフトした俺達だが、無事に逃げ切れた様だった。

 きっと逃げ切れたのは純粋な力押しだけではなく、策も使ったからなのだが・・・


「んでコイツ・・・どうしようかな・・・」


「ごぶ。・・・っきゅっとイっとくごぶ?」


「気を失っている奴をやるのはなんかなぁ・・・。それに、一応でもあるしさ」


「ごぶごぶ」


 その策に使った人質の女の子を如何するか、俺は迷っていた。


「いやしかし・・・もいるとはなぁ。ポコポコいすぎだろ転生者」


 この女の子を人質に取った理由は2つあり、1つは2人いた転生者の内の片方が強力な遠距離攻撃系ユニークスキルを持っていて、そいつと親しそうな感じだったので攻撃をさせない為。そしてもう1つは、もう片方の転生者に体を狙われていそうだったから、である。


「俺達も危ない状況だけど、流石にNTRされそうな状態の子を放って置くのもな。・・・まぁ逃げ出す策に使えなかったら放って置いたかもしれんが」


 実は先程戦力を調べたくて『鑑定』した際、俺は2人の転生者を見つけていた。そして例に漏れず2人共ユニークスキルを持っていたわけだが、1人は先程も言った遠距離攻撃系なのだが、もう1人の方がなんと・・・『NTR』とかいうクソスキルを持っていた上に称号も不穏なモノを持っていたのだ。



『ユニークスキル:NTR

 ・他人の恋人や伴侶を強制的に自分に惚れさせることが出来る。同性にも使用可。』


『称号:NTRの達人

 ・NTRの達人に送られる称号。刺される可能性がアップ』



 俺は少し前に同じようなスキルを持った転生者に出会ったのだが、その時に仲間を奪われそうになったり、とても胸糞悪い思いをしたことがある。

 そんな事があったので、俺は精神系スキルを使って人を弄ぶ野郎は許せないのだ。

 しかもだ、恐らくアイツは鑑定系も持っていたのだろう、明らかに俺達を見る目がおかしかった。


「しかし遠距離系ユニークスキルを持っていた方の転生者は奥手だったのかな?双方から互いの匂いがしていたからかなり親密ではあったはずだが・・・っと、のんびりもしていられないな」


 と、色々な思惑の元NTR絶対殺すマンになった俺だが、今は長々とそれに変身している場合じゃないので急ぎ次の動きをする事にする。

 先ずは人質の女の子を如何するかだが、結局ここにそのまま放置していく事にした。


「ごぶ。出来たごぶ」


「ありがとうなごぶ助。ま、これで他の魔物にやられたりしたら、それはそれで運がなかったって事で諦めてもらおうかな」


「ごぶ」


 といっても、気を失っている者をそのまま草原のど真ん中に放置していくのも忍びなかったので、ごぶ助に頼み『精霊術』で簡易的な家みたいなものを作ってもらった。

 そして人質問題が済んだら、後は俺達の逃走計画だ。


「ま、敵が居なくなったこの状況だと余裕で逃げれるんだがな。『レモンの入れもん』」


 敵が居ると駄目だが、今の状況ならばスキルを使ってレモン空間へと逃げ込みそのまま逃走する事が出来る。なので俺はレモン空間への入口を開き、その中へとごぶ助と共に入った。


「よし、逃げ切れた・・・が、やることがあるからここからは別行動だ。ごぶ助はポンコの所へ行ってダンジョン移動について確認して来てくれ」


 一時的に逃走は完了したモノの、この大陸から移動する勢いで移動しなければ安心は出来ないと考えた俺はごぶ助にダンジョン移動の準備を進める様お願いをし、自分は皆への説明と中間地点ダンジョンの閉鎖をする事にした。


【長老・・・俺の声が聞こえるか長老・・・】


 先ずは長老へと念話を飛ばし説明、次いでニコパパ、エペシュへも同様にする。そうしていっぱいいるゴブリンやコボルト達の事を長老達へと投げ終わると、続いてこの大陸に作った中間地点ダンジョンの取り壊しを行っていく。


「1個くらいは残して・・・いや、危険だからやめておこう」


 この草原に居る強敵位ならば、侵入して来た所で全員で力を合わせれば何とかなるだろうが、カマエルとかいうあの化け物は無理だ。

 なので俺は万が一にでも奴が侵入してこない様入口を全部潰す事にしたのだ。


「ヨシ完了だ」


 中間地点ダンジョンの全撤去が完了すると、先ずは全員の状況を確認する為長老達を探し報告を聞いた。

 すると未だ全員に連絡がついていなかった様なので、そちらは随時進めてもらう様にお願いをし、俺はごぶ助とポンコの元へと向かった。


「ごぶ助、ポンコ、どうだ!?」


「ごぶ」


【はイ。ポンコからご説明いたしマスネ】


 2人と合流すると話を進めておいてくれたみたいで、転移先の候補をいくつか選んでくれていたみたいなのだが・・・


「・・・没かな」


【はイ。ではここでハ?】


「それもだ」


 2人が選んでいたのはいずれもこの東大陸、又は以前居た西大陸で済んでいた場所の近くだった。流石にあんな化け物の活動圏内で生活するのはかなり不安なため、もう少し離れた場所がイイと思ったのだ。


「あんまり行きたくないけど、魔境地帯みたいな秘境とかどうだ?強い魔物はいるだろうけど、魔物絶対殺す集団や規格外の魔物絶対殺すマンが来るよりましだと思うんだが」


 何処に行っても強者はいるだろうが、あの人間が属する集団はヤバそうなので、出来るなら人間が居ない地域に行った方がいいと思ったので、俺はごぶ助とポンコにそう提案する。


「ごぶ。確かにごぶ」


 するとごぶ助もあの集団にはあまりいい印象が無かったのか、素直に頷き同意を示した。

 そしてポンコの方はというと、あくまでシステマティックな対応をしてきた。


【成程、ソレでは人間族が居ない場所がいいのデスカ?】


「まぁなるべくなら・・・」


 しかしその対応も今は心強く、俺は心の中で『ポンコさん頼りになるぅ!』と称賛を送り、他にも淡々と質問をして来るポンコへと回答をしていった。


 そうして質問と回答を続ける事3分ほど、ポンコが新たな候補地を表示して来た。


【ココはどうでショウ?】


「ふむ・・・ってここどこだ?」


 候補地を表示して来たのは良いのだが、ポンコが出したのは全く知らない地形の地図だった。一応周辺のスペック等も書いて合りそれはいい感じだったのだが、それにしてもその地図の場所が何処なのか、その検討がまったくもってつかなかったのだ。


「もうちょっと地図の縮尺変えれるか?あ、いや、世界地図みたいなの出して、今いる場所とこの候補地の両方にマーク付けるとかって出来るか?」


 なので俺は空中に投影されている映像を編集する様にポンコへと頼む。するといつの間にか出来る子へと進化していたポンコは直ぐに映像を切り替えてくれた。


「ふむ・・・成程・・・ってこの場所・・・」


 ・

 ・

 ・


 あの後少し悩んだのだが、結局ポンコの表示した場所へとダンジョンを移動させる事に決めたので、俺はその準備をポンコへと頼みコアルームを去った。

 そして俺達はその間に、全員戻って来ているかどうかを確認する事にした。


「一狼様、ゴブリンは皆帰りましたゴブ」


「がる、コボルトも全員帰ったがるボス」


「ウルフ達も全員いたよ」


「そうか、ありがとう皆」


 しかしこちらは予め長老達に言ってあった為、報告を受けるだけで終了となる。

 となればだ、後は・・・


「マサシとチャーリーだな・・・」


「ごぶ」


 俺達を逃がす為に時間稼ぎをしてくれた2人を待つだけとなった。


「あいつらは『後で追い突くから先に逃げてろ』って言っていた・・・もんな?あの場所から走って帰ってくるとなるとそれなりの時間がかかるだろうから・・・どうだろう?2,3日くらい待つべきだよな?」


「ごぶ。それだけあれば何時でもダンジョン移動できるようになってる筈だから、4,5日待機してても平気ごぶ」


「そうか。確かにだ」


 待っている間は狩りもいけないので厳しいだろうが、その為のダンジョン農場だからな、早速有効活用するとしよう。


 こうして俺達は幾日でも待つ心構えをし、待ち始めたのだが・・・



 ある時、ごぶ助がマサシから借りっ放しだった魔剣が突然消え・・・



 ニアから話を聞かされた俺達は・・・



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 作者より:読んでいただきありがとうございます。これで5章終了となります。次の更新は1週間程間が空くかもしれません。

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