第220話 死神の影
≪ある転生者視点≫
「なぁシューヤ・・・俺達の実力でこんな奥まで来て大丈夫なんかな?」
「大丈夫・・・とは言えないと思う。けど大隊長達も一緒だし、何より直々に指名されたんだからやらない訳にはいかないよ」
「まぁ・・・そうか」
僕はシューヤ、転生者だ。
ひょんな事からこの世界に転生して来た僕は現在、ある草原で布教をする為に魔物退治なんかをしている。
そんな中隊長職を任されたりして頑張っていたわけだけど、この度目出度く・・・目出度いのかな?兎に角、いくつもの部隊をまとめている大隊長の隊と2つの隊、合計4つの隊で連隊を組んで草原の奥深くへと歩を進めていた。
「しっかし何で俺達の隊が選ばれたんかね・・・」
「さぁ・・・?」
「シューヤの頑張りが認められたからじゃないかな?」
「え?あ・・・うん。そうだと嬉しいけど」
「きっとそうだよ。そのお陰で私達の隊って評判いいんだよ?」
部隊員であり友達でもあるトマスと喋りながら歩いていると、部隊の癒し役(僕が勝手に決めた)であり幼馴染でもあるミレイラ・・・ミラが話に入って来た。
そうして新たにミラを加え、周囲を警戒しつつも喋りながら歩いていると、部隊を率いている大隊長から『休憩!』と指示が出た。
「各隊毎に警戒態勢を取りつつだぞ!そして各隊の隊長はこっちへ集まってくれ」
「あ、行って来るよ」
「いってらっしゃいシューヤ」
「おう、いってらー」
休憩と同時にミーティングもするみたいで、僕は呼ばれた場所に向かう。
「全隊長集まった様なので早速情報共有を始める。初めに、何か異変を感じたモノは?」
大隊長の元へと集まると早速ミーティングが始まり、異変を感じたか?隊員の状況は?物資の損耗具合は?等と聞かれ、格隊長がそれらに答えていく。
そして問題が無いと解ると、大隊長はミーティングを締めにかかった。
「今一度言うが、本日の作戦は発見された不審な森の探索だ。情報によると、樹を操る様な自然系列・・・トレントやドライアドの様な魔物が関与している確率が高いと思われる。気を抜かない様に」
大隊長が言ったが、本日の草原探索をする理由は発見された不審な森のせいだ。僕達が現在探索している一帯は草原しかないと言われていたのだが、そんな中にポツンと森があったのだ、怪しさマックスである。
なのでこれを調査、又は討伐する為、僕達はその森へと向かっているのだ。
「そしてこれは言っていなかったが、出発前に急きょ決まった事がある」
(・・・ん?)
これで終わりかな?と思った所に、大隊長はもう1つだけ伝えなければならない事があると言い話し始めたのだが・・・
(えぇっ!?あ・・・でもそうなると危険は減るからいいのか)
僕は大隊長の発言を聞き驚いてしまったが、同時に少し安心もした。
(しかし超越者かぁ・・・戦う所見れたりするのかな?)
そう、なんと超越者と呼ばれる凄い人がこの作戦に加わってくれると言うのだ。話によるとその名に相応しい力の持ち主だという事なので、万が一不審な森が魔物に関係しているモノだとしたらこれほど心強いモノもないだろう。
「未だお見えになられないが、森へ突入する前には来てくださるという事だ。合った事のないモノも彼のお方は見ればすぐに解るだろうが、一応特徴を告げておく」
そしてどうやら作戦には参加してくれるみたいだが、未だにここには居ないらしい。なので大隊長は超越者の特徴を言って来たのだが、確かに大隊長が言う様な容姿の人が居れば一発で解るので、未だここにはいないのだろう事が解った。
その話が終わるとミーティングも終わりとなったので、僕は自分の隊の元へと戻りミーティングでの話を隊の全員へと伝達した。
「へぇ・・・超越者様が・・・。そりゃ心強いな!」
すると予想はしていたが、超越者の件で場は盛り上がった。皆嬉しそうに『初めて見れるのか』とか『握手とかしてくれるかな?』等と言い、比較的若い者ばかりで構成されている僕の隊はキャッキャキャッキャとはしゃぎ出す。
しかしそんな中、ミラだけが少し険しい顔をしていた。
「でも、超越者様が来るほどの何かが・・・って事なのかな?そうなるとちょっと怖いね・・・」
「あ~・・・」
僕やトマス達は『超越者が来る=安心・安全』とばかり思っていたが、確かにミラの言う通り、それは裏を返せば『超越者が来る=それだけの事がある』という事で、それに気付いたミラが怖がるのも当然かもしれない。
「・・・おい、シューヤ・・・ここはそっと肩を抱く所だぞ(ぼそぼそ」
「え?」
そんな事を考えていると、トマスが周りに聞こえないような感じで僕に告げて来たのだが、僕は突然の事に反応が出来ず間の抜けた顔をしてしまう。
しかしトマスの言う事が頭に染み込んでくると、その意味が解って来た。
(あ・・・ミラ、少し肩が震えてる)
トマスはどうやら『ミラが怖がっている今がプッシュのタイミングだ!』という事を教えてくれた様だった。
(よ・・・よし)
確かにこれは中々関係を進ませる事が出来ない僕にとってはチャンスだったので、僕は乗る事にした!このビックウェーブに!
「ミ・・・ミr「休憩終了だ!各自装備を点検せよ!」・・・ぅぉっほん。皆、点検を始めよう」
・・・ビックウェーブには乗れなかったみたいだ・・・トホホ・・・。
・
・
・
そうして再度探索を開始させる事数時間後、僕らは件の森と思わしき場所を発見した。
「全隊停止!警戒を保ったまま待機せよ!斥候を出す!」
発見した後は確認がとられ、目の前の森が件の森だという事が確定した。ならばこのまま進むのかとも思ったのだが、そう言えば例の超越者とやらがまだ来ていない事に気付く。
なので質問をしようとしたのだが・・・
「大隊長!質m・・・『・・・ズゴゴゴゴ・・・』ふぁ!?」
突如聞こえたものすごい音と地響きにその問いは中断された。
僕は一体何が起きたんだと周りを見渡すのだが、何が起きているのかを発見する事は出来なかった。
「何だ!?」「地震!?」「雷か!?」「!?!?」
だがそれは周りの人も同じ様で、皆キョロキョロして叫ぶばかりであった。
(音の出所は!?)
これが何か不味い事が起こる前兆だろうとは漠然と考えられたので、なるべく早く音の出所、そして地響きの原因を見つけようと、注意深く目を見開き周囲を探るのだが・・・一向にそれは見つける事は出来なかった。
(・・・仕方ない。あんまり大勢の前では使いたくないんだけど・・・)
しかし、だからと言って諦めると、この場にいる全員が危険に陥るかも知れない。
(トマスや部隊の皆・・・大隊長達も・・・それにミラを助ける為だっ!)
僕は・・・自身が持つ力を使い事の原因を調べる事にした。
「ふぅ~・・・晴天に座s「あら?呑気に詩でも朗読?それよりあっちを見なさいよあっちを。あーれ。遠くてもあれだけ大きかったら見えるでしょ?」・・・え?」
しかし、詠唱を言い出したところで声が遮られてしまい、一気に力が抜けてしまう。そしてその流れで声を掛けて来た者が示す方を見てしまったのだが・・・僕は顎が外れるかと思うほど口を開けてしまった。
「えぇぇぇええっ!?何アレ!?○ピュタ!?」
なんと・・・デカい島の様なモノが宙に浮いていたのだ。
「○ピュタ?・・・って何だあれは!?」「だ・・・大地が浮いている?」「天変地異か?」「もしや主の・・・」
そして僕の大声で他の人も気づいたのだろう、それを見て口々に言葉を漏らしていた。
「ん~?何かがあそこで戦ってるわねぇ・・・馬?と・・・花かしら?」
「え・・・?全然見えない・・・って・・・」
それは最初に声を掛けてきた人も同じみたいだったのだが・・・今更ながら誰だと思い僕は振り向いた。
するとそこには・・・オネェらしき人が居た!
「う・・・うわぁぁぁっ!?」
「まだまだ修行が足らないわねぇアナタ。オホホ」
僕は驚きのあまり尻もちを着いて倒れてしまうが、オネェの人はそんな事は気にせずにからからと笑い、そして手を差し出してきたので僕はそれを掴んだ。
「あ・・・ありがとうございます」
「イーのよ。さぁて大隊長さんはぁ・・・あ、いたいた」
僕の手を取り起こすと、オネェの人はオネェっぽい感じで体をクネッとさせた後大隊長の方へと言ってしまった。・・・と、ここでよくよくその人を見ると僕はある事に気付く。
「あ・・・あの人ってまさか・・・」
「ちょっ!?シューヤ!あの人って!!」
「シューヤいいなぁ。握手してもらえたんだね」
どうやら予想は合っていた様で、あのオネェの人は超越者と呼ばれる人だったらしい。
僕は『あの人が・・・ねぇ?』と思い、改めてオネェの人の方を見る。
(・・・ひっ!)
・・・見なければよかったかもしれない。いや、逆だろう。見てよかった筈だ。
何故なら、あの人がニタリと笑う様を見て、僕はあの人の
(あれは・・・あの人には逆らってはいけない・・・)
理解できたのはあの人が持つ
と、そんな超越者様だが、大隊長と話している途中にニタリと笑った後、1人で森の中へと入って行ってしまった。
それを大隊長が説明してくれたのだが、どうやら『面白そうだから、私がまず見て来るわね。アナタ達はゆっくりいらっしゃい』と言われたらしい。
それを聞き僕は森の中にいるモノに対して冥福を祈った。
何故かって?そりゃ
「隊長格は集まれ!その他は警戒!」
「っと、集合か・・・」
なんてことを考えていると集合が掛かったので、僕は大隊長の元へと歩いて行ったのだが・・・大隊長の話を聞いている最中も、僕はチラリとあの人の事を考えてしまった。
『超越者カマエル・・・あの人が居ればこの任務、もう楽勝で終わるな』と。
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作者より:読んでいただきありがとうございます。
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こちらも連載中です。↓『悪役令嬢は嫌なので、魔王になろうと思います。』
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