第211話 条件を出されたわんちゃん

 偶然に出会った転生者のマサシ&チャーリー。彼らとは出会い頭で戦闘になったモノの、話してみれば真面・・・ではないかもしれないが、少なくとも以前出会ったイカレタ奴らよりは普通で、話の分かる奴らではあった。

 そんな奴らだからこそ仲間になるのもいいのではないかと考え、それを提案した訳だが・・・


「・・・」


 マサシは手を『待て』とばかりに突き出したまま固まってしまっていた。『待て』という事は考えている、つまり一考の余地はあるのだろうが、そこまで悩む事だっただろうか?

 とはいえだ、待てと言われたのなら待つしかないので、俺達は前向きな返事が聞けることを期待し待つ事にした。


 そして待つ事10分程だろうか・・・マサシが手を降ろして口を開いた。


「・・・保留させてくれや」


「・・・保留・・・か?」


「ぁあ」


「ごぶごぶ」


 こんな性格であるからして『はい』か『いいえ』のどちらかをズバッと言って来る物だと思っていたのだが、マサシの答えはまさかの『保留』だった。

 俺は何故『保留』にしたのかが気になり、マサシに問いかけてみた。


「なんでなんだ?もしかして誰ともつるむつもりがないとかなのか?」


「いや・・・そんなわけじゃねぇが・・・仮にも愚理院怒羅魂グリーンドラゴンの看板しょってる俺が、そう易々と他の奴の下に付くのもな・・・」


「ぐりーんどらごん?」


愚理院怒羅魂グリーンドラゴン、だ」


 いや、だからそれは何だと問いたいのだが・・・と思ったところでマサシは『ぐりーんどらごん』とやらについて話してくれたのだが、要は前世でマサシが入っていた暴走族の名前らしい。

 マサシはどうやらそのチームのトップだったらしく、トップが易々と他のチーム(俺達の事らしい)に降る様に加入すると、前世の仲間に悪いんだとかどうとか・・・。


「それによぉ・・・正直オメェらと話すの実質今日が初めてだろ?流石にホイホイとは信じられんだろぉが?」


「あ、はい。たしかにそっすね」


 更にマサシはそんな当たり前のことを言ってきた。考えてみれば至極当然の答えなのだが、半分頭がゴブリンに浸食されていた俺はそれに気付けなかったみたいだ。


「ゴブリンはラブ&ピースならぬキル&ケアフリー(能天気)だもんな・・・」


「ごぶ?」


「いや、なんでもない。・・・っと、話は分かった」


「おぅ、すまんな」


「じゃあ・・・どうすれば仲間になるよ?」


「ぁ?」


 話は解ったといったが、マサシを仲間にする事を諦めたとは言っていない。なので俺は彼に『どうすれば俺達を信じて仲間になってくれるのか?』を聞いてみた。

 その問いにマサシは一瞬ポカーンとした馬鹿面を晒していたが、直ぐに笑い出した。


「クハハハハッ!おもしれぇじゃねぇか!そうだな・・・なら・・・」


 ・

 ・

 ・


「あれ・・・か?」


「おぉよ。あ、これ以上近づくんじゃねぇぞ?感知して襲ってくっからよ」


「ごぶ?」


「あ!だから近づくんじゃねぇって!逃げられるがめんでェンだよ!」


 あの後マサシは仲間になる条件として『ある敵を一緒に倒す事』を条件として来た。

 俺達はあまり深く考えずそれを引き受け、取りあえず『どんな敵なんだ?』と尋ねてみた。すると『実際に見てみるか?』と言われたので見に来たのだが・・・


「いやあれってさ・・・」


 実際にを見て思った感想は『何アレ?』としか言いようがなかった。と言うかだ、俺にはが森にしか見えなかったのだが、あの森が敵なのだろうか?


「なんだ・・・つまり、環境が敵ってことなのか?」


「いや、ちげぇ。今見えてるあれは、敵の一部みたいなもんだ」


「ふむ・・・?」


「ごぶ・・・?」


 マサシが言うには、あの森は敵の手足みたいなモノなんだそうだ。彼曰く、森の中に本体みたいな奴がいるらしいのだが・・・


「ふむ・・・『鑑定』してみるか」


「ぁ?んだそれ?」


「ん?まぁ敵の強さが解るスキルだな。因みにお前の事も『鑑定』したから名前とか知っていたんだ」


「・・・卑怯くせぇな。男なら強さ位戦って気合で感じろや。後勝手に個人情報見るとかプライバシーの侵害だろ、なぁ?」


「いや・・・この世界にはそういうの無いんで・・・」


「ぁ?」


 意外にもそんな事を気にするマサシをしり目に、俺は森へと『鑑定』を使ってみた。


 すると・・・確かにあれは、魔物の一部だった様だ。



 名前:

 種族:グラスランドドライアド

 年齢:??

 レベル:??

 str:???

 vit:???

 agi:???

 dex:???

 int:???

 luk:???

 スキル:??? ??? ??? ??? ??? ??? ??? ???

     ??? ??? ??? ??? ??? ??? ??? ???

 ユニークスキル:

 称号:??? ??? ??? ???



 森に『鑑定』をかけたらステータスがでたし、更に種族名的にドライアド・・・確か樹の精霊だったか妖怪だったかの筈なので、あの森も手足の様なモノなのだろう。


 というかだ・・・


「ステータスが見えねぇ・・・」


「ぁ?」


「俺とステータスが離れ過ぎていて、種族名くらいしか解らないんだ」


「ほー?」


 マサシのステータスは見えた筈なので、少なくともあのドライアドはマサシ以上の強さを誇るという事だ、確かにマサシが共闘を申し出てくるはずだろう。


「参考までに言っとくと、俺とかごぶ助の高いステータスで1600~1700、マサシだと2000位だな」


「たけぇのか低いのか解んねぇな」


「結構高い・・・はずだ」


「まぁそりゃそうか。俺らはソコソコつえぇし、あいつは俺以上に強かったしな」


「戦ったことがあったのか。ってそういや、何であいつを倒したいんだ?」


『ある敵を一緒に倒す』と条件を付けたので、『共闘して親睦でも深めるのかな?』なんて考えていたのだが、どうやらマサシにはドライアドと因縁があるようだった。それが少し気になったので理由を聞いてみると、マサシ、それにチャーリーは少し苦い顔をした。


「まぁ・・・情けねぇ話だがよ・・・おらぁあいつに一回ぶっ殺されかけてんだわ」


「・・・は?」


 そこからマサシはドライアドを倒したい理由・・・つまりその情けない話とやらを話してくれたのだが、要は『調子に乗ってブイブイ言わせている時に森を見つけ、偶々入ったら殺されかけたからリベンジしたい』、こういう事らしかった。

 更に殺されかけたとの事だったが、これがマサシ達の身に大きな変化をもたらしていたそうだ。


「その殺されかけた時なんだけどよ、実は上半身と下半身がスッパリと逝っちまってなぁ」


「え゛っ!?」


「ごぶっ!?」


「咄嗟にチャーリーが合体してくれて何とか助かったんだけどよ、それ以来分離できなくなっちまってな」


「・・・ガァァ・・・」


「いや、オメェの所為じゃねぇよチャーリー。寧ろ助けてくれて感謝してんだぜ?」


「ガァッ!」


 本来マサシ&チャーリーは『マサシ』と『チャーリー』だったらしい。それまでもチャーリーがユニークスキルを使い合体はしていたらしいのだが、分離は出来ていたらしいのだ。

 しかしマサシの体が泣き別れて以降、彼らは真に二心同体となってしまったのだとか・・・。


「ふむ・・・」


 それが不便だと感じるなら解決して上げたい所なので、思いついた解決方法を一応話してみる事にした。


「一応それをどうにかする案があるんだが・・・マサシ達は進化ってしってるか?」


「ぁ?進化?・・・あ~・・・なんか体が変わる奴か?」


「そうそう」


 マサシも最初は唯の馬・・・プチホースだったらしいが、ここまで進化したのだと説明してくれた。因みにチャーリーの方は姿は変わったが名前は変わっていないとの事。

 と余談は置いておきだ、知っているなら話は早いので、進化する時のメリット・・・体の欠損等も治る事を説明してみた。


「つーてっとなんだ、進化した時に俺の下半身が生えてくんのか?」


「・・・多分?」


「いや、生えてこんじゃろうの」


 何時もの事だが突如ニアが話に入って来た。

 コレ、俺やごぶ助は慣れているので『あ、ニア』位で済むのだが、マサシ&チャーリーはそうではなかったみたいで・・・


「・・・っ!?」


「・・・ッガァッ!?」


 物凄く吃驚していた。・・・というか、恐怖していた。


(うんうん・・・。俺にもこんな時がありましたね・・・っと、イカンイカン。説明しなきゃマサシ達が逃げ出しそうだ)


 後方腕組み教師面していたのだがのんびりしている暇じゃないと思い出し、マサシ達を『ドウドウ』と宥める事にした。

 その甲斐あってか未だプルプルしているが、何とか会話できるくらいになったマサシ&チャーリーへニアの事を紹介する。


「こちらはニア、俺のママ・・・じゃねぇ。・・・まぁなんだ、背後霊みたいなお方だ」


「うむ。ずっと見ては居ったが、よろしくなのじゃ」


「お・・・ぉぉ・・・押忍っ!自分愚理院怒羅魂グリーンドラゴンというチームで頭張らせてもらってるマサシと言います」


「ガ・・・ガァァ・・・」


 マサシはヤンキーなので絶対的な力には弱かったのか、滅茶苦茶下っ端ぽくなっていた。

 ニアにはそれが慣れた事だったのだろう、『楽にするのじゃ』と殿様みたいな感じでマサシ達に接していた。・・・だがそれが良かったのだろう、マサシ達は『押忍!』と言った後姿勢を正し、超絶話を聞く体勢となった。


「うむ。続けるのじゃが、恐らく馬小僧の下半身は進化しても生えてこんのじゃ。トカゲ娘のユニークスキルが関係しておると思うが、もうこ奴らは同じ存在になっておるからの」


「へぇ・・・」


 ニアが何かしらの方法で確認したのだと思うがどうやらそういう事らしく、俺の解決方法は試すことなくボツとなった様だった。・・・っていうか、チャーリーってメスだったのか!?

 地味に衝撃的な事実に驚いていたが、ニアは更に追加である情報を教えてくれた。


「あのドライアドを倒すと言っておったが、流石に今のままだと無理なのじゃ。だからもう少し鍛えるがよいのじゃ」


「そうなのか」


「ごぶごぶ」


「お・・・押忍っ!」


 マサシ次第では直ぐに挑む事となるかと思っていたのだが、この調子だとどうやらそれも無さそうなので、俺はマサシと相談する事にした。


「なぁ、ニアもこう言ってるし、もうちょい周辺で狩りを・・・・・」


「ぉう。オメェ等は俺よりよえぇし、そうだな・・・・・」


 俺達は地面へと座り、計画を練っていく。


 ・

 ・

 ・


 こうして俺達はマサシの仲間加入条件『グラスランドドライアドを一緒に倒す事』を目標に動き始める事となったのだが、後に待っていたのは・・・



 ------------------------------------

 作者より:読んでいただきありがとうございます。

「面白い」「続きが気になる」「ニアの姉御!押忍っ!」等思ったら☆で高評価や♡で応援してください。

 ☆や♡をもらえると チャーリーが 人間形態になります。


 こちらも連載中です。↓『悪役令嬢は嫌なので、魔王になろうと思います。』

 https://kakuyomu.jp/works/16816927860702355532

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る