第210話 甘いCDYとわんちゃん
再びマサシ&チャーリーの前に立った俺達は、奴に威嚇を受けていた。
「あぁん?リベンジしに来たんかガキとワンコロォ・・・上等だぁグルゥァ」
奴は自慢のリーゼントを揺らしながら俺達へと『オラオラ』と迫って来る。
だが俺達も無策で来たわけではないので舐めてもらっては困る。・・・この前の時とは違うのだ!
「ごぶ助」
「ごぶ」
俺はニヤリと笑いながら、ごぶ助に声を掛ける。するとごぶ助は『任せておけ』と、自身のアイテムボックスから1つの箱・・・秘密兵器を取り出した。
それを見てマサシは少し警戒した様な雰囲気を出したが、直ぐに『上等ぉ・・・』と言いながら前のめりになり、臨戦態勢に入った。
だがしかし、箱の中身を見ても同じ様に出来るかな?
「マサシさんよぉ・・・」
「ぁあ?」
「これ・・・受け取ってくれやっ!」
「ごぶっ!」
俺の言葉を合図に、ごぶ助は持っていた箱の蓋を開け・・・マサシへと差し出した!
「なっ・・・」
「ふっ・・・」
箱の中身を見てマサシが一瞬固まる。俺はそれをチャンスと見て奴の射程圏内へと瞬時に近づき、再びごぶ助にそれを奴の前に突き付けさせる。
「何のつもりだテメェ・・・」
「ごぶ。受け取るごぶ」
「・・・」
マサシはごぶ助から箱を受け取り、それを怪訝な目で見つめていた。
・・・まぁそれはそうだと思う。なんせ箱の中に入っているのは・・・キャンディなのだから。
「マサシさんよぉ・・・」
「・・・あ?」
「これも受け取ってくれや!ごぶ助っ!」
「ごぶっ!」
そうしてマサシが油断している隙に、俺は再びごぶ助に合図をだし更に箱を出させる。箱は1つ2つではないので、マサシの前には箱が重なっていった。
この状況にマサシは何が何だかわからなくなり、心なしか下半身のチャーリーも不思議そうな顔をしていた。
(・・・今だっ!)
俺は『畳みかけるならココ!』と感じ、マサシへと口を開く!
「マサシさん・・・この前は済まんかった!」
「・・・は?」
「ごぶ。ごめんごぶ」
マサシは
「結果的に戦うことになったんだが、あれは決してあんたを害そうとか、あんたの縄張りを犯そうだとかそういう訳じゃないんだ!という事で、和解しないか!?話せばわかると思うんだっ!」
「ごぶごぶ。そうごぶ。らぶあんどぴーす?ごぶ。あ、お詫びの品もう一個あったごぶ。はいこれごぶ」
ごぶ助が追加でもう1つ箱を出し、その前に出していた箱の上へと重ねる。
・・・とまぁ、前日に『このまま済ませるつもりはない!(キリッ』と言っていたわけだが、見事『このまま済ませず、謝ってやった』ぜっ!
え?戦いでリベンジしないのかって?・・・完全に何となくなのだが、俺はマサシは話が通じる相手だと思っていた。
それというのも完全に偏見なのだが、何となくオールドヤンキースタイルをしている奴は『硬派』だとか『筋を通す』、はたまた『実は意外といい奴』という奴が多いイメージがある。なのでこのマサシも、話せば意外と解ってくれる奴かもしれないのだ。
(『詫びの品』も渡してるし、ヤンキー的にはポイント高いだろう!・・・多分。まぁ駄目なら駄目でまた逃げりゃいいしな。それにこっそりと保険でこの前のステータスチェックの続きもやらせてもらってるから、もしも奴が襲ってきた場合でも十分な収穫にはなるだろ)
と、俺がそんな事を考えているとはいざ知らず、マサシはマサシで何かを考えている様だった。考えるという事は俺の話に乗る余地があるという事でもあるので、良い傾向ではあるのだが・・・
「そぉだな・・・まぁ、話す位はいいだろう」
「・・・!」
『如何だろう?』なんて思っていたら、本当にマサシは話し合いに応じてくれる様だった。が、マサシは続けて言う。
「けどよぉ・・・話次第じゃまたオメェら敵認定だかんな?ぉ?」
「お・・・おう」
話し合いには応じるらしいが、どうにも油断はならなさそうだ。なのでここは慎重に話をするとしよう・・・
・
・
・
「おぅごぶ助!いいじゃねぇか!似合ってんぞっ!」
「ごぶ。何か強くなった気がするごぶ」
「おうよ!リーゼントはな!気合の象徴なんよ!そりゃぁ強くなった気もすらぁな!」
「ごぶごぶ」
「・・・」
まぁ慎重に話を・・・しなかった結果、こうなった。いや、慎重に話をしようとしたんだが、ごぶ助が何時ものゴブニュケーションを発揮し始め、何かあれよあれよという間に友好ムードになったのだ。
だが具体的な話は全然出来ていなかったので、場が温まったところで俺も口を挿むことにした。
「あのー・・・マサシさん、ちょっといいか?」
「おう!なんだワンコロ!」
「あ、自分一狼っす」
「おう!すまねぇな一狼!なんだ?」
「あのですねー・・・」
その後、この前戦った事等を話したのだが、意外なほどあっさりと話は進んだ。
その話した内容を簡単に纏めるとだ・・・
○この前の事はすまなかった→双方大きな怪我も無かったので水に流す。
○縄張り云々→自由に狩ってよし。
○これから敵対するか?→しない。
こんな感じだった。その他にもマサシは俺達が渡した土産を食べて機嫌が良くなったのか、自分の事についても話してくれた。
「俺はよぉ、ペットのチャーリーを連れて電車で病院に向かっていたんだが・・・・・・」
始まりは今まであった事のある転生者達と同じみたいで、『電車事故→神様に会って転生』という流れらしい。
他の人と違う点と言えばペットのチャーリー(グリーンイグアナ)で、神様に『あ、彼って君の家族なの?じゃあ一緒の所に飛ばしてあげよう』となったらしい。・・・少し前に会ったトキコと同じで、関係がある者だと融通してくれたのだろう。
「んでよぉ、この草原・・・つっても最初はもっとのんびりしたトコだが、気が付いたらそこに居てよ、色々あって戦ってたらここに居るわけよ」
「へぇ・・・、あ、ちなみにダンジョンって知ってるか?」
「ぁ?あ~・・・ゲームか?俺ぁゲームはやんねえんだよな」
「ああ、違う違う。えっと・・・」
ステータスを見るとダンジョンに入った様な称号があったり、更に名前を持ったりしているので聞いてみたのだがどうやら解っていなかったらしく、説明をした所『あぁ、そういやそんな洞窟入ったわ』と心当たりがあった様子だった。
更に詳しく聞くと、『攻略→ダンジョンコア到達→名前を付ける→ダンジョンコアを持って出たらそのうち消えた』との事だった。
「成程。因みにそのダンジョンコアはどうしたんだ?」
「ぁ?ん~・・・あ~・・・どうしたんだっけか」
「ガァ!ガアガアッ!」
「ああ。そういやそうだったな」
「ん?」
「いやな・・・・・」
要らなさそうなら貰おうとダンジョンコアの行方を聞いたのだが、チャーリーが何かを知っているらしく何かを訴えていた。
それを聞いて思い出したのだろう、マサシはダンジョンコアの行方を話してくれたのだが・・・どうやらチャーリーが食べてしまったらしい。
というのも、今でこそ奇怪な生物と化しているマサシ&チャーリーだが、元はちゃんとマサシとチャーリーだったらしく、その状態の時にマサシがダンジョンコアを使ってチャーリーに『とってこーい』と犬の様にダンジョンコアを投げて遊んでいた所、チャーリーはそれが面白かったらしく興奮した拍子に食べてしまったのだそうな。
「・・・チャーリー腹、壊して無い?」
「ガァ?ガァッ」
「大丈夫だとよ」
「そう・・・それならいいんだが」
ダンジョンコアを食べても大丈夫なのだろうかと心配して尋ねてみたのだが、今の所は問題が無いらしい。・・・後でポンコかスラミーに大丈夫なのか聞いておく事にしよう。
「ふむ・・・」
「ぁ?」
「あ、いや・・・」
聞きたい事は粗方聞けたし、当初の目標であった和解も済んだのでそろそろお暇しようかと思ったのだが、そういえばまだ聞いていなかった事があったのでそれを聞いてみる事にした。
「そういえばさ、色々あってここに居るって言ってたけど、ここで何してるんだ?」
「ぁ?特に何も?しいて言えば強くなる為に戦ってるくらいだな」
「そ・・・そうなのか・・・」
色々あってここに居ると言っていたくらいなので何かやる事でもあるのかと思っていたのだがそうでも無かったらしく、更に続けて話してくれたのだが、そろそろこの草原にも飽きてきたから何処かへ行こうかと思っていたのだとか。
「ふむ・・・ふむふむ・・・」
「ぁ?」
「あ、いや、何でもないんだけどちょっと待った。ごぶ助、ちょいちょい」
「ごぶ?」
俺は少し思うところがありごぶ助へと相談を持ちかける。するとごぶ助はその相談を聞き、前向きな返答を返してきた。
「ならいいか?」
「ごぶ」
「ぁ?何言ってんだぁ?」
「いやな・・・」
俺がごぶ助に相談した事は、俺1人で決めるにはあまり良くない事だし、早々に決める事でもない。
しかし『思い立ったら吉日』というような言葉がある様に、考えを即実行する事は悪い事ばかりではないのだ。しかもだ、勘が優れているごぶ助も良いと言っているのだからほぼほぼ大丈夫だろう。
・・・まぁつまり何が言いたいかと言えばだ、
「なぁマサシ、良かったら俺達と一緒に来ないか?」
こういう事である。
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作者より:読んでいただきありがとうございます。
「面白い」「続きが気になる」「え?マサシ仲間になんの!?」等思ったら☆で高評価や♡で応援してください。
☆や♡をもらえると 一狼が 土下座します。
こちらも連載中です。↓『悪役令嬢は嫌なので、魔王になろうと思います。』
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