第209話 甘くないDQNとわんちゃん
「どうだっ!?」
ごぶ助のスキルを使った攻撃がモロに決まったのだ。これならば俺達のステータスを圧倒しているアイツも多少なりともダメージが・・・
「・・・あめぇ・・・あめぇなぁぁぁああ!!」
ダメージが・・・なかった・・・。なんとマサシはごぶ助のスキルを使った攻撃を、体勢を崩し俺の魔法で拘束もされていた筈なのにその魔剣で受け止めていた。
「うううるぁぁぁああああ!!」
「ごぶっ!?」
「ごぶ助っ!?」
そして反撃だとばかりに気合を入れた叫びで一括し拘束を突破、ごぶ助にその魔剣を振るう。
「・・・へっ。オメェも気合入ってんじゃねぇか」
「ご・・・ごぶぶっ・・・!」
だがそれにごぶ助は反応しごぶ助カリバーで受け止める。
俺はそれを確認するとボーっとしている場合じゃないと次の行動を起こし始める。
「水よっ!降り注げっ!」
「・・・あん?」
「・・・ごぶ?」
俺は次の行動として辺り一面に魔法を使い水をばら撒く。しかし何故そんな事をしたのか解らなかったマサシとごぶ助は、突然降って来た水にキョトンとした顔をしていた。
「んだぁ?あぁん?」
「ごぶ助!一旦こっちへっ!」
「・・・あぁ?・・・っ!また凍らす気か!チャーリー!」
「ガァッ!」
マサシはキョトンとしつつも俺の言葉に次の行動を予測したのか、また凍らせられるわけにはいかないと下半身のチャーリーに声を掛けて移動し始める。
・・・だが俺が水を撒いたのは敵を凍らせる為ではない。
「ごぶ助、足に氷でスパイクをつけるからちょっと動かないでくれ」
「ごぶ?ごぶ」
「・・・うし、もういいぞ。んで俺にもっと・・・」
俺が水を撒いたのは・・・
「クハハハハッ!おらおらおらぁっ!次はどうすんだぁ?あぁん?「ガ・・・ガァァッ・・・」あぁ?滑りそうだぁ?」
そう、足場を悪くして相手の機動力を削ぐためだ。
勿論の事ながらこっちにも影響が出るのだが、それは氷魔法で足にスパイクを作り滑り防止を行う。
「さぁて・・・第2ラウンドの開始だ。ごぶ助、ここからは別れて戦うぞっ!」
「ごぶっ!」
・
・
・
何て感じで格好をつけて戦い始めた訳だが、状況は相変わらず俺達が劣勢のままだった。小細工で足場を悪くしたり、ごぶ助が俺から降りて戦ったりと色々していたが、相手はステータスと人馬一体状態(馬蜥蜴一体?)というアドバンテージを上手く使い、俺達をものともしていない様子だったのだ。
「ガァ!ガアァッ!」
「クハハハハッ!慣れてきたかチャーリー!っしゃあ!ギア上げて行けっ!」
「ガァッ!」
更にチャーリーがこの足場に慣れて来たらしく、あちらはノリノリになっていた。
(かなり不味いな・・・こうなれば・・・)
俺は一向に好転しない事態を鑑みて新たな作戦を立て、それを伝えるためにマサシ達が一旦引いたタイミングでごぶ助に声を掛ける。
「ごぶ助、新しい作戦だ」
「ごぶ!どうするごぶ!?」
「あぁ、えっとだな・・・ゴニョゴニョ・・・」
「おぉん?悠長に作戦会議たぁいい度胸だな!・・・まぁいい、待ってやるよぉ!だからよぉ・・・もっと派手に
マサシは余裕なのか戦闘狂なのか、はたまた
そうして作戦会議と準備が終わった所で、俺とごぶ助は動ける様に構えてから口を開いた。
「待ってもらって悪いなマサシさんよぉ・・・アッと驚かせてやんよぉ・・・」
「ごぶぶぶぅ!」
「クハハハハッ!威勢がいいじゃねぇか犬とガキャァ!かかってこいよおらぁっ!」
「なら行かせてもらおうじゃねえか!ごぶ助っ!」
「ごぶっ!」
待ってもらったので、一応礼儀かなと思い口上を上げる。
(けどまぁ先に魔法は仕込ませてもらっているんだがな、悪いなマサシ&チャーリーよ)
最低限の礼儀は保ったことで許してくれるだろう・・・という事で、俺は仕込んでおいた魔法を発動させる。
『・・・パキキッ・・・ビュゴォォォオオッ!!・・・』
『う・・・!?何・・こ・・っ!?』
俺は仕込んでおいた『氷魔法』で氷のドーム、更に『黒風』で氷のドームの内部に乱気流流れる風のドームを展開させた。
いきなり使われた魔法に驚く声が微かに聞こえるので、今から行われる行動には十分役立つだろう。
「今だごぶ助!」
「ごぶっ!」
俺は早速ごぶ助に声を掛け、行動を起こし始める。
先ず行動の第一段階眼はごぶ助を俺の背中の上に乗せる事。これは声を掛けた直後にごぶ助が飛び乗って来たのでクリアーだ。
「・・・風よ!我へと纏われ!」
次に俺の手足や体に風を纏わせる。
「ごぶ助っ!しっかり捕まれよっ!?」
「ごぶっ!」
最後にごぶ助へと声を掛け、しっかりと鞍にしがみ付かせたら完成だ。ごぶ助の力ならばこの先起こす行動で振り落とされる事は無いだろう。
「うしっ!行くぞっ!」
「ごぶっ!」
そしてこの完成させた準備を持って俺は行動を起こす為・・・
『・・・グッ・・・』
爆発的な力を発生させる為に四肢を弛ませ・・・
『・・・スゥ~~~・・・』
息を溜め・・・
『・・・キッ・・・』
目標を見据えた。
そして・・・
「・・・っ!!」
走り出したっ!
・・・マサシ&チャーリーがいる方向と逆、『衰退』エリアの方へと向かって。
(戦略的撤退じゃぁぁぁああ!)
そう、俺は逃げる事・・・いや、戦略的撤退を決める事にしたのだ。
(まぁ敵いそうにない敵、更に逃げても良い状況だったらこれもありだろっ!ごぶ助も文句言わなかったしさ!)
これが引けない状況・・・例えば連れて逃げれそうにない仲間がいるとか、ここがポンコダンジョンの入口近くとかだったら別だが、今の状況はそうではないのだ。・・・となれば、逃げるだろう?え?逃げない?いやいや、逃げる・逃げよう・逃げるとき、だ(謎3段活用)。
まぁ・・・
「クソガァァァアッ!ぁにしとんじゃゴルゥァァァッ!?」
逃げられるかどうかは別なのだが。
(出て来るの早すぎぃっ!?)
「相棒っ!」
ごぶ助の言葉に『解ってるよっ!』との意味を込めて横方向へ方向転換した後、氷の壁や氷の床を適当に作る。
そして更にその方向からも方向転換し、相手を撒く為に行動を起こす。
「こっちかぁぁぁ!?待てやゴルゥァァァァっ!」
だがそれを看破しているのか、クソデカい声が相変わらず後方から聞こえて来る。
・・・こうして俺とごぶ助の、命がけの鬼ごっこが幕を開けた。
・
・
・
それから数時間後、俺達は・・・
「ぜぇ・・・はぁ・・・ぜぇ・・・はぁ・・・」
「ごぶぶぶ・・・」
「・・・」
「くそっ・・・」
「ごぶ・・・」
なんとか逃げる事に成功し、レモン空間内にある食堂の床で倒れ込んでいた。
「そんなに息を切らしてどうしたごぶ?」
逃げる事に成功し倒れ込んでいた俺達に、様子を見ていたごぶ蔵が何事かと尋ねてきたのだが、俺は疲れ切っていたので上手く口が回らなかった。
それを察してくれたのか、『疲れが取れる飲み物ごぶ』と言ってごぶ蔵が飲み物を出してくれたので、俺達はありがたくそれを受け取り飲んだ。
「・・・うめぇ」
「・・・ごぶ、生き返るごぶ」
ごぶ蔵の言葉は真実だったらしく、若干だが疲れが取れた様で口が回る様になった。なので俺はリクエスト通りに何があったかを話してあげる事にした。
「いやな・・・めっちゃ強い敵に合って逃げて来たんだ。マジでヤバかったわ・・・」
「そうだったごぶか」
「うむ。見事な逃走劇だったのじゃ」
「そうだったごぶ?」
「うむ」
不思議がるごぶ蔵に、いつも通り隠れて見ていたニアが喋りかけた。
「敵わぬと見た敵に対し、一狼は潔く逃げる事を選択したのじゃ。その敵というのがまたちと変わった奴での、奴は・・・・・・」
ニアは俺達の戦いを最初から話し始め、俺達がどう逃走したのかも語り始めた。結構詳細に語ってはいるが、俺達は唯魔法を使って時間を稼いだり、人間達にマサシ達を擦り付けて来ただけだ。
・・・え?敵を擦り付けるとは外道か?だって?
いやいや、逃走経路に居た方が悪いんです。ええ。
と、何とかと逃げ出した俺達なのだが・・・俺はこのままで済ませるつもりはない。
なので俺はニアの話を聞き終わったごぶ蔵へと声を掛けた。
「ごぶ蔵、手伝ってほしいことがある」
「ごぶ?何ごぶ?」
「えっとだな・・・・・」
・
・
・
そして翌日の事だ。
「おう、おうおうおう。よぉ面見せたもんだなぁダボハゼ共がぁ!あぁん?」
俺達は・・・再びマサシ&チャーリーの元へと訪れた。
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作者より:読んでいただきありがとうございます。
「面白い」「続きが気になる」「マケーヌ」等思ったら☆で高評価や♡で応援してください。
☆や♡をもらえると 一狼が リベンジします。
こちらも連載中です。↓『悪役令嬢は嫌なので、魔王になろうと思います。』
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