第208話 ヤンキーに絡まれるわんちゃん

 突然俺達の前に現れたチャーリーに乗った男は、言動もあれなら姿もあれだった。


「あぁん?何黙ってメンチ切ってんだぁゴルゥァ!?」『ユッサユッサ』


 その男は『何故頭にフランスパン乗っけてるのっ!?』と言いたくなるような髪型・・・リーゼントをしており、服装も『何故そんな服がこの世界にっ!?』と言いたくなるような長ラン・・・特攻服を着ていて、どこからどう見ても『THE日本のヤンキー』(しかもオールドタイプ)というような姿をした・・・馬だった。


 ・・・馬?そう、馬なのだ。

 その男は馬面とか言うレベルを超えた馬そのモノの顔をしており、尚且つ体は人間という、馬人間?とでも呼べるような人物?であった。


 そんな馬人間とも呼べる男・・・DQNが何故バイクとかではなくチャーリーに乗ってやって来たのか・・・


 ああ、因みにチャーリー、これは誤字では無く・・・



 名前:チャーリー

 種族:魔グリーンイグアナ(マケンタウロス)

 年齢:2

 レベル:(53)

 str:(2035)

 vit:(1893)

 agi:(1921)

 dex:(1806)

 int:(291)

 luk:(315)

 スキル:(ひっかき テイルアタック 疾走 硬化 脚力強化・中)

 ユニークスキル:合身

 称号:転生者 ダンジョン1階層突破 マサシのペット ご主人様と一緒



 魔グリーンイグアナという魔物の名前がチャーリーなのだ。

 この魔グリーンイグアナというかつての俺を思わせる適当なネーミングの魔物だが、かつての俺とは違い、従来のグリーンイグアナと少し姿が違った。

 大体の箇所・・・顔や皮膚、足の形や尻尾等は同じなのだが、脚が長く、馬みたいな感じになっていた。

 つまりだ、突然現れたチャーリー&DQNは馬(魔グリーンイグアナ)が馬(馬人間)を乗せているといった、不思議な感じの奴らだった。


「おぉん?何か行ったらどぅだぁグラァっ?」


 と、この不思議なコンビ、どうやら問答無用で襲い掛かってくるわけでもなさそうなので、この隙に馬人間の方のステータスも確認しておく事にしよう。



 名前:マサシ

 種族:マケンタウロス

 年齢:2

 レベル:53

 str:2035

 vit:1893

 agi:1921

 dex:1806

 int:291

 luk:315

 スキル:パンチ キック 癒し撫で 消化 威嚇 魔剣術 

 ユニークスキル:魔剣召喚

 称号:転生者 ダンジョン1階層突破 愛されご主人



(ん?何かステータスが・・・)


 馬人間・・・マサシのステータスを確認したのだが、なにやら俺は違和感を感じる。だが今は先にスキルの確認もした方が良いと思い、スキルにも鑑定をかけようとしたのだが・・・


「ごぶ?何で頭に棒乗せてるごぶ?・・・ごぶ?違ったごぶ!パンごぶ!」


「・・・・・・」


「っちょ・・・ごぶ助さんそれはあかんて・・・」


 なんとごぶ助がDQNさんにナチュラル煽りを決めてくださったではありませんか。


 そして煽りをされたDQNさんは勿論?



「オイ。オイオイオイ?誰の頭がフランスパンみたいで美味しそうだごるぁぁっぁああっ!!??」



 そう、お怒りになられますよね。


「チャーリー!」


「ガアァァッ!」


「やばっ!」


 俺はマサシとチャーリーの声を聴き、慌てて斜め後ろへと飛ぶ。

 するとその判断は正解だった様で、あのまま居たら俺達は吹き飛ばされていたであろう場所へとマサシたちは移動をしていた。


「馬鹿ごぶ助!何怒らせてるんだ!」


「ごぶ?」


「ってナチュラルに言ったんだから解らんよな・・・」


「なぁ~にくっちゃべってんだぁぁん?ウルぁっ!」


「ごぶっ!」


「うおっ!?」


 ごぶ助へと注意していると、それを隙だと見たのかマサシは再び攻撃を繰り出してきた。

 俺達はそれを何とか、ごぶ助がごぶ助カリバーを使って防御する事により免れた・・・のだが、そのまま吹き飛ばされてしまった。


「っく・・・」


「ごぶっ!?相棒!?平気ごぶ!?」


「あぁ・・・何とか・・・」


 しかし何とか体勢を整え、たたらを踏みつつも上手く着地を決める。

 だがそれがマサシの何らかの琴線に触れたのか、奴の感情が怒りからやる気へと変化してしまう。


「ん・・・?なかなかやるじゃねぇか坊主。ってか、犬の方も喋れんのか?・・・面白れぇ・・・」


「・・・は?」


「ごぶ?」


「クハハハハッ!いっちょ遊んでやろうじゃねぇか?なぁ!・・・来い!佛血霧丸!」


 マサシが何か叫んだかと思うと、次の瞬間には奴の手に釘バットが握られていた。恐らくあれは奴のユニークスキル『魔剣召喚』なのだろう。・・・が、何故釘バット?


「行くぞウルゥァッ!?」


「ってそんなこと考えてる場合じゃねぇ!?」


「ごぶっ!?早いゴブッ!!」


 馬鹿な事を考えかけている間に奴が殴りかかって来たのだが、そのスピードはごぶ助がギリギリのところで防御が間に合う、それ位のモノだった。

 更に力の差もあるのか、マサシとごぶ助が打ち合うたびに俺の体が流され、上手く姿勢を保てないでいた。


「っぐ・・・!」


「クハハハハッ!うらうらうるぁっ!」


(なんだコイツ!やたらめったら振り回してるのに、騎乗の姿勢がブレねぇ!?・・・って!?)


 そしてこの時初めて気が付いたのだが、マサシとチャーリーの体は何と・・・合体していた。

 そんな風にケンタウロス下半身がトカゲverという感じになっているので、上半身が暴れまくっても下半身がそれを支え、マサシの無茶苦茶な剣術にごぶ助は押されまくっていた。


「ご・・・ごぶっ!」


 だがよっぽどごぶ助の剣捌きが上手いのだろう、ステータス差があるこの状況でも敵の攻撃をギリギリ何とか捌けていた。

 だがしかし、このままだといずれは押し切られてしまう事は必至だ。


「ごぶ助っ!一旦距離を取るっ!」


「ご・・・ごぶっ!」


 そうならないために俺は戦い方を少し変えようと距離を離そうとする。しかしだ、確認した感じ近距離攻撃主体だった敵がそれを許すはずもなく・・・


「ダボがっ!距離なんかとらせるかよっ!チャーリー!」


「ガァッ!」


 マサシとチャーリーはガンガン俺達に近寄り、距離を取らせない様にして来た。それでも俺は、フェイントを入れたりして何とか離れようと頑張ってみるのだが、有り余るステータス差の為だろうか、一向に敵と距離を開ける事が出来なかった。


「・・・っく!なら仕方ねぇ!俺が魔法とか使って何とか時間を稼ぐから、その間に一発デカいのを頼むごぶ助!」


「ごぶ!」


『ならばこの距離での戦法を!』と思い、敵の防御を突破できそうなごぶ助へと攻撃を指示する。


 ・・・一見無難に思える様なこの指示なのだが、これは俺の戦闘経験の浅さから来る明らかなるミスだった。と、言うよりだ、俺はマサシ&チャーリーと戦い始めてから、常にミスを犯していた。

 だがこの時の俺はそんな事を知る由もなく、唯々言った事を実行しようとしていた。


「ダボがっ!チャーリー!」


「ガァッ!」


 マサシはチャーリーの名を呼んだ後、持っていた釘バットを殴打に使うのではなく、突きへと使い出した。

 この攻撃、しょぼい攻撃の様で素早く、更に意外と威力もあり、その所為でごぶ助は集中を乱されスキル準備を失敗、俺も同じく集中を乱されスキル準備を失敗してしまう。しかも俺は顔や前足周辺に攻撃を仕掛けられ、視界を遮られたり、体勢を崩されたりとしてしまった。


「・・・っぐ」


「ガァァッ!」


 そしてその瞬間を待っていましたと言わんばかりに、俺に目掛けてチャーリーが尻尾をぶつけてきた。


「ぐおっ!?」


「ごぶっ!?」


 俺はその尻尾に胴体をガツンとやられ吹き飛ばされてしまう。魔力を使った身体強化で防御は固めていたので酷いダメージを受けはしなかったが、今度は受け身もとれず地面に叩きつけられてしまう。


「ごっごぶぅっ!」


 だがごぶ助が咄嗟に飛び降り補助してくれた事で、叩きつけられた後バウンドして地面を削るという事態は防げた。・・・しかしだ、そんな隙だらけ状態になった俺達を敵が見逃すはずもなく・・・


「クハハハハッ!そんなにのんびりしてちゃ的になんぞぉっ!?」


 マサシ&チャーリーが俺達目掛け突っ込んで来た。

 俺は酷いダメージこそ受けなかったものの、若干体が痺れていたので直ぐに立ち上がることが出来なかったので、せめてもと思い魔法で応戦をする。


(っく・・・魔力を練る様な魔法は無理だから、すぐ使えそうな魔法で・・・)


 俺は威力こそあまりないが、多少は目くらましにもなるだろうと氷の散弾を魔力をあまり練らず適当にぶっ放す。

 そしてそれを見てごぶ助も氷の散弾に続いて突っ込んで行った。


「ごぶっ!」


「ダボがっ!あめぇんじゃ!うるぁっ!」


「ごぶっ!ごぶっ!ごぶりゃぁっ!」


 ごぶ助は俺が復帰するまで時間を稼ぐつもりなのだろう、ヒット&ウェイで敵の周りをグルグルと回り攻撃を繰り出す。

 そんなごぶ助の攻撃に、敵は馬?の下半身に人間?の上半身が繋がっている状態なので小回りが利かず、中々捕らえられないでいた。


「っちぃ!ちょろちょろっとうっぜぇ!」


「・・・地面よ氷付け!」


「あ?」


「ガアッ!?」


「うおっ!?チャーリー!?」


 そうしている内に俺も段々と体の痺れが取れてきたので、ごぶ助を援護する為に地面を凍らす。

 すると敵は見事に足を取られ、体勢を崩しスッ転んだ。


「ごぶっ!?相棒っ!」


「っ!了解っ!」


 それをチャンスと見てごぶ助が叫ぶ。俺は何となくだがやってほしい事を理解し、瞬時にそれを実行に移した。


「・・・ぬぅぅん!氷付け!」


「あ!?地面とまとめて俺らを凍らすだと!?うっぜぇ!」


 俺は地面に倒れたマサシ達を巻き込ませる形で凍りつかせ、立ち上がれない様にする。奴の力だと数秒で出て来るだろうが、それで十分だろう。


「ごぶごぶ・・・ごぶ!オーラブレードごぶ!」


 そう、ごぶ助が攻撃の準備を整えるには十分なのだ。


「んだそりゃぁっ!?」


「・・・ごぶ!・・・『一転集中』ごぶ!」


 更にマサシが驚き固まったのを見てごぶ助は『一転集中』のスキルも使用。


 そして・・・


「ごぶ!食らうごぶ!ごぶりゃぁぁぁっ!」



 全力でパワーアタックをマサシへと叩き込んだ。



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 作者より:読んでいただきありがとうございます。

「面白い」「続きが気になる」「誰の頭がサザ○さんみたいだって!?」等思ったら☆で高評価や♡で応援してください。

 ☆や♡をもらえると フランスパンが マシマシになります。


 こちらも連載中です。↓『悪役令嬢は嫌なので、魔王になろうと思います。』

 https://kakuyomu.jp/works/16816927860702355532

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