第207話 順調にレベルアップなわんちゃん

 放牧民の村へと再訪問した俺達だが、あれからも毎日『充足』エリアへと通い、なるべく人間達を避けながらエリア中心部へと進みつつ経験値稼ぎに励んでいた。



「よし、出発するか。今日も頑張ろうぜ!」


「ごぶ」


 そんな日常をすごしていたある朝、俺達は今日も頑張ろうと気合を入れ、『充足』エリアと『衰退』エリアの境目に作った中間地点から出発した。


 ・・・あれ?『充足』エリアに中間地点ダンジョンを作りながら進んでいるのでは?と思ったかも知れないが、現在はそれをしていない。それというのも、途中までその方式で進んでいたある日に事件が発生したからだ。


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 とある日、それまでの様に、進んだ先へ中間地点ダンジョンを作って帰宅し、ご飯を食べて休んでいた時の事だ。


『・・・ッポーン・・・ダンジョン部に侵入者ごぶ~。たいへんごぶ~』


「「「!?」」」


「何だ今の変なアナウンス!?」


 突如レモン空間内にごぶ蔵の声で変なアナウンスが流れた。

 俺は『一体何だ!?』と思いながら、近くに座って何かを飲んでいたごぶ蔵の方へと顔を向けた。


「・・・ごぶ?」


 するとごぶ蔵は何故か首を傾げていた。・・・いや、お前が何かしたんじゃないのかい!?


「・・・!ごぶ!」


 俺の心の中での突っ込みが聞こえたのか、ごぶ蔵はハッと何かを思い出したらしく、俺に向かって走って来た。

 そして先程のアナウンスが何なのかを話し出した。


「侵入者ごぶ!」


「・・・うん。らしいね?で、何なんだあれ?」


「ごぶ?万が一侵入者が入ってきたら解る様にしたごぶ。解りやすいごぶ?」


「だな」


「ごぶ。・・・って、侵入者ごぶよ?倒さなくていいごぶ?」


「・・・!そうじゃん!倒さなきゃいけないよな!?」


「ごぶ。あ、敵の姿はこうすると見れるごぶ」


「・・・何で俺より使いこなしてるんだよ。ってまぁ良い、どれどれ・・・あ、こいつ『充足』エリアにいた奴じゃん!あそこの中間地点ダンジョンから入って来たのかっ!?」


 一応防護策として長老に魔法で隠蔽してもらっていたのだが・・・効かなかったのだろうか?


「って今はどうにかしなきゃか!ごぶ助!出動だ!」


「ごぶっ!」




 ・

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 と、この様にダンジョンへの侵入事件があった為、中間地点ダンジョンを作りながら進む方式は中止となった。・・・因みにこの原因だが、後で長老とニアへと問い合わせたところどうやら『充足』エリアの奥へ行くにつれて敵が強くなってきていたので、長老の魔法のキャパシティーを越えたのだそうな。


「ま、ゲームじゃあるまいし、そうそう旨い話は無かったって事だな」


「ごぶ?」


「あ、いや、中間地点ダンジョンの話さ」


「ごぶ。地道に実力を上げてタイムアタックごぶ」


 ごぶ助曰く、『気合があれば一日で奥まで進めるだろう!』との事だが・・・流石にそれは無理だろう。


「いやいや・・・草原がどのくらい広いと・・・。まぁあれよ、その内物足りなくなってきたらさ、侵入者が来る覚悟を決めてもう一回中間地点作って、そんで奥まで行こうぜ?」


「ごぶ?了解ごぶ」


 了解してくれた様なので、取りあえず関係ない雑談を止め、今日の狩りについて話す事にする。


「うっし、じゃあ今日は昨日よりちょい奥くらいで狩ろうか」


 俺達は現在、毎回エリアの境目から出発している訳だが、ある程度奥へと進んだらその後は横へ進む様にしている。要するに次々に強い敵と戦うのではなく、程よい敵と戦う事によって、遅々としてだが確実にパワーアップしていく方法を採っているのだ。


「ごぶ。着実に行くごぶ」


「だな。しかし・・・今日は人間が居ないといいんだが・・・」


「ごぶ。最近よく会うから面倒ごぶ」


 狩りの場所を奥へ奥へと進む方法から変えたせいか、最近はよく人間を見る様になってしまった。狩りの場所をもう少し奥に設定した方が良いのだろうか?


「ま、あんまりにも会う様だったら、想定しているより2段階くらい奥へと進む様にしようか」


「ごぶ。それがいいごぶ」


「っと、この辺でいいかな?」


「ごぶ」


 なんだかんだ喋ってはいたがゆるゆると走っている内に目的地付近まで到達したので、俺は『索敵』を使う。

 すると近くに反応があったのでそちらへと向かった。


 と、この様な日々を過ごした俺達は、徐々に徐々に強くなり、その度に奥へと戦いの場を移していった。

 そうするといつの間にか移動だけで一日近く費やす様になってしまい、そろそろ言っていた様に覚悟を決めて中間地点ダンジョンを設置するか?となり・・・


 ・

 ・

 ・


「ついには大分奥まで来ましたよっと」


「ごぶ?」


「独り言だ」


『充足』エリアの中心が何処かは解らないが、俺達は大分奥にまで歩を進めていた。

 この頃になると人間達もあまり姿を見なくなり、俺達は魔物への警戒を強くした。

 なんせこの頃になると敵はかなり強く、一筋縄では行かない敵が多かったからだ。


 ・・・この様に。


「・・・おわっち!何か足に引っかかった!?」


「危ないごぶ!」


「シャァァァアアッ!」


「敵っ!?」


 そいつは俺が『索敵』を展開しているにもかかわらずいきなり現れ、何かに気を取られている間に攻撃を仕掛けてきた。

 幸いにも気づいたごぶ助がごぶ助カリバーで打ち払ってくれたから助かったが、そうでなければガブリとやられていただろう。


「クソ・・・いきなり現れやがって!しかも何だこの足に付いた奴・・・べとべとして取れない」


「ごぶ。きっと蜘蛛の糸ごぶ」


「蜘蛛の糸?」


 ごぶ助は敵が飛びかかってくる前に付いたモノを断定して見せたが、何故解ったのだろう・・・と思ったが、飛びかかって来ていた相手を見て納得出来た。


 相手は・・・蜘蛛だったのだ。



 名前:

 種族:草地蜘蛛

 年齢:20

 レベル:44

 str:1115

 vit:1062

 agi:1208

 dex:933

 int:401

 luk:129

 スキル:猛毒牙 麻痺毒牙 糸生成 地形把握 穴掘り 隠蔽 土魔法 毒毛針  

 ユニークスキル:

 称号:



「成程・・・蜘蛛だから蜘蛛の糸ね」


 ソイツ・・・草地蜘蛛のステータスを確認しても『糸生成』という物があり、恐らくそれを仕掛けられたのだろう。更にだ、ステータスのスキル欄をみると『隠蔽』があったので、『索敵』に反応が無くいきなり現れたのはその所為だったのだろう。


「あれだな・・・『充足』エリアに来たばっかりの時に出て来たアサシンモールの強化版みたいな奴だな」


「ごぶ。待ち伏せ戦法ごぶ」


 敵はどうやらステータス、そして初撃を見る限り、罠を張って獲物を待ち伏せるタイプの様だ。

 しかし、それにもかかわらずステータス値は大分高い。・・・これは強敵の予感だ。


「ごぶ助、先制攻撃・・・仕掛けるか?」


「・・・ごぶ・・・ごぶ!先手必勝ごぶ!」


 幸いにも相手は吹き飛ばされた後こちらの様子を伺っていたので、俺はごぶ助に相談した。

 結果、攻めようとの声が出たので、俺はそれに乗る事にした。


「了解だ!目くらましを掛けながら突っ込む!」


「ごぶ!出来れば相手の周りをグルグル回ってほしいごぶ!オーラブレード使うごぶ!」


「了解!・・・氷の散弾っ!」


 俺は敵の顔辺りを目掛け魔法を使う。尚且つごぶ助のオーダーがあったので、そのまま何回か氷の散弾を敵へと放ちながら相手の死角へと回る様に走った。

 少しした所で背中のごぶ助から『準備完了ごぶ』と言われたので、タイミングを見計らい俺は敵へと接近する。


「シャァァッ!」


「うおっ!?」


 しかし敵は伊達に目が多くついているわけではないのか、死角から近づいたはずなのに直ぐに反応し、足で反撃して来た。


「ごぶっ!丁度いいごぶ!足から頂くぅぅぅごぶっっ!」


 だがごぶ助はそれを防御するついでとばかりに棒で薙ぎ払う。するとその攻撃に耐えられなかったのか・・・


「ギシャァァッ!?」


 蜘蛛の足は千切れ吹き飛んだ。


「チャンスっ!」


「ごぶっ!ごぶりゃぁぁっ!」


 蜘蛛は足を1本失った事に動揺したのだろう、暴れ始めた。俺がそれをチャンスだと感じ接近すると、ごぶ助はその意図を上手くくみ取り攻撃し始める。


「ギギッ!?ギシャァァァッ!?」


「ごぶっ!ごぶ!ごぶっ!」


 ごぶ助は敵の武器であり弱点でもありそうな蜘蛛の足に目を付け、脆そうな関節部分を狙い叩いた。

 すると蜘蛛の足はその攻撃に耐えきれず、1本、また1本と切り飛ばされていった。

 結局1,2分の短い交戦時間で蜘蛛の足は5本も切り飛ばされ、奴は通常の歩行すら困難な状態になった。


「うしっ!このまま・・・っと!」


「ごぶ?針ごぶ?」


「ああ。多分毒の針だな」


『瀕死の重傷を負っていたのでそのまま攻めてやるっ!』と思ったのだが、蜘蛛が毒の針を放ってきたので慌てて躱す。

 だがそんなモノ、虫の息状態である蜘蛛の悪あがきでしかない。

 俺は『黒風』を使い、風で自分とごぶ助の身を覆いながら慎重に蜘蛛に近づき、攻撃を続行する。

 だが蜘蛛は悪あがきを止めず、土魔法を使い攻撃と移動を行ってきた。


「けど悪あがきは悪あがき、終わりだっ!ごぶ助っ!」


「ごぶっ!パワーアタックごぶ!」


 しかし蜘蛛はあえなく俺達の攻撃に敗れ、その命を失った。・・・だがここで油断をすると『馬鹿め!俺は死んでいないっ!』と反撃を食らうので、気を抜く事無く蜘蛛を見つめる。


「・・・大丈夫・・・そうだな?」


「ごぶ」


「うしっ!勝った。・・・しかしあれだな、待ち伏せタイプは待ち伏せタイプって感じだな。真正面から戦うと、ステータスより弱く感じるわ」


「ごぶ?」


「あ、ごぶ助はそうだな。ステータスとか見れないから解らんか」


「ごぶ」


 俺は蜘蛛の死体を回収しながらごぶ助と喋る。・・・いや、一応狩った物は全て持って帰れとウチのシェフの言葉でね?


「まぁ一説にはカニの味がするって言うし・・・いけるだ「シャァァアア!」


 呑気に喋っていると、突然真横から声が聞こえた。視界の端に蜘蛛の足が映っているので、恐らく2匹目の蜘蛛なのだろう。

 俺はごぶ助の『ごぶっ!?』という叫び声を聞きながら、『そうか、馬鹿め!奴は囮だ!のパターンか』なんて何処か呑気に考えつつ、恐らく来るであろう痛みと衝撃に備えた。


 だが・・・


『・・・ダッダッダッ・・・ドーン!』


 結果的に痛みと衝撃は来ず・・・



「あぁん?オメェ誰に断ってここで狩りしてんだゴルゥァ!」



 来たのはチャーリーに乗ったDQNだった。



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 作者より:読んでいただきありがとうございます。

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 ☆や♡をもらえると コメカミが ピキリます。


 こちらも連載中です。↓『悪役令嬢は嫌なので、魔王になろうと思います。』

 https://kakuyomu.jp/works/16816927860702355532

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