第205話 再訪問するわんちゃん
皮の加工やポンコダンジョンを弄った翌日から、俺とごぶ助は再び草原のエーテル『充足』エリアへと足を踏み入れ、経験値稼ぎの探索を再開し始めた。
「ごぶ!相棒!」
「解ってるっ!よっ!っとぉ!」
「ごぶ!そのまま暫く避ける事に徹してほしいごぶ!スキルの準備をするごぶ!」
「了解っ!」
皮の加工もダンジョンの構造もまだまだ手を入れるところがあるのだが、それらの作業は後空いている時間にチョイチョイと進めれば良さそうだったので、俺はそれらを気にする事もなく戦いに集中していた。
「ごぶ・・・!ごぶっ!オーラブレード発動完了ごぶ!」
「うしっ!なら死角から近づく!」
中心部に近づくにつれて手ごたえが出始めている敵だったが、俺達は見事なコンビネーションを発揮しながらそいつらの相手をしていた。
今の様にごぶ助を背中に乗せて戦ったり、時には背中から降ろして2人で挟み撃ちで攻撃を仕掛けたりと色々だったが、今の所は大きな負傷もなく上手い具合に戦闘を行えていると、そう感じていた。
「ふっ・・・!・・・っ!ごぶ助!」
「ごぶっ!『パワーアタック』!ごぶっ!」
「ギョァァァアア!」
「・・・。ふぅ・・・倒せたみたいだな」
「ごぶ」
そしてその感覚は決して思い込みなどではなかった様で、今回も俺達は同格位の敵を大きな負傷なく倒して見せた。因みにだが、今戦っていたのは・・・
名前:
種族:グリーンリザードランナー
年齢:11
レベル:39
str:961
vit:805
agi:1109
dex:772
int:218
luk:119
スキル:咬みつき ひっかき 脚力強化・中 地形把握 鋼脚 風魔法
ユニークスキル:
称号:草原の走り屋
このグリーンリザードランナーという『恐竜みたいだな・・・』とかそんな感想が出てきそうなトカゲの魔物だ。尚、ごぶ助の感想は・・・
「ごぶ。初めて見た時から食べてやるって決めてたごぶ。・・・美味しそうごぶ。早く食べたいごぶ」
と、『恐竜?何それ?美味しいトカゲ肉でしょ?』という感じだった。まぁごぶ助には見た目より食い気・・・花より団子だったか。
「はいはい、帰ったらごぶ蔵に料理してもらおうな?収納っと」
ごぶ助が食べたがっているお肉をいつまでも見せておくと、最終的に俺の背中が涎まみれになるだろうなと感じたので素早く収納し、少し前から『索敵』の端に反応が引っかかっていたので、その反応が近づいてくる前に移動しようとごぶ助に声を掛けた。
「ごぶ助、恐らく人間が来るからさっさと移動するわ」
「ごぶ?またごぶ?」
「ああ。またっぽい」
実は今の時間って昼過ぎで、俺達は朝から狩りをしているわけなんだけど・・・人間を『索敵』に捕らえるのはこれが3回目だったりする。
『充足』エリアへと入って来てからまだ数日だが、ここまで人間に遭遇しそうになるとは・・・
「遊牧民達の話では、ここのエリアには人は立ち入らないみたいに言ってたんだけどなぁ・・・」
「ごぶ?聞き間違えごぶ?」
「そんなことはない・・・はず?」
人間間違っていないと解っていても『本当にぃ?』と言われると不安になる物で、俺は自分の記憶に自信が無くなってきてしまった。・・・いや、今は人間ではないが!
「ってそれはどうでもいい事だな。取りあえずあれだ、情報収集の為もう一回遊牧民の処へ行ってくるかな・・・」
「ごぶ。でもその前に、人間達が来る前に移動するごぶ」
「そうだな。んじゃ出発っと」
俺は後日再び遊牧民達のところへ行き情報収集をしようと決め、草原の奥へと歩を進めた。
・
・
・
翌日、善は急げとばかりに俺はエペシュを伴って再び遊牧民の村を訪れようとしたのだが・・・何故かごぶ助、更にはごぶ蔵までも付いて来ると言い出した。
それに対し、俺がどう答えたかというとだ・・・
「すまんなごぶ蔵・・・俺の背中、2人乗りなんだ」
「ごぶっ!?」
「いやゴメン、嘘だ。流石に人間の村だからさ、エルフのエペシュ、それにエルフにも見えるごぶ助は兎も角、ゴブリンのお前が行くと攻撃されるかも知れないから駄目だ」
俺的には『ゴブリンでもいいだろ!?』とは言いたいが、まぁ人間にそれを言ってもそれは無理だろう。なので今回は純度100%ゴブリン顔のごぶ蔵の同伴のみを拒否とし、俺はエペシュとごぶ助の2人を伴い村へと向かうことにした。
ごぶ蔵はその判決に若干渋りそうになったが、お土産を買って来ると言うとコロッと態度を豹変させ、お土産のリクエストをした後うっきうっきで去って行った。・・・ごぶ蔵ェ・・・。
「まぁいいや・・・、お土産のリクエストも調味料とかだし。・・・うっし、それじゃあ行こうぜ」
「うん」
「ごぶ」
そうして遊牧民の村へと再度訪れることになったのだが、俺は1つ忘れていた事があった。
それは・・・
「ごぶ、ごぶごぶごぶ。ごぶごぶぶ(我の名はごぶ助ごぶ。よろしくごぶ)」
「んぁ?なんだって嬢ちゃん?」
ごぶ助さん、人間語が喋れない。である。
「ごぶ?ごぶごぶぶごぶ?ごぶごぶごぶ。ごぶごぶぶ(聞こえなかったごぶ?我の名はごぶ助ごぶ。よろしくごぶ)」
どうやら人間語を理解は出来るみたいなのだが、喋れはしないみたいだった。なので俺は取りあえず『この子は地元の言葉しか喋れないんです。ごめんなさい』と誤魔化しておいた。
(ごぶ助にも後で教えてやるべきか・・・?)
俺は『シェイプシフト』の影響だろうとは思うが、スキルを使った後から人間の言葉を理解し、更に文字も読み書きもできる様になっていたので、それを後からごぶ助に教えてもいいかもしれない。
だがそれは後、後の話なのだ。今はそれより情報収集を優先させてもらうとしよう。
「あの・・・ところで・・・」
「はいはい?なんだね?」
取りあえずごぶ助には隣に居てもらうだけにして情報収集を進めると、少しだけだが新情報をゲットする事に成功した。更に、お土産となる調味料もブツブツ交換でゲット出来たので、今回の村訪問は大成功を収めたと言っていいだろう。
・
・
・
そんな大成功の成果を持ち帰った俺達は、夕食後の会議にてその成果を報告する事にした。
「え~、それでは最近定例となってきた会議を始めます。まず初めに、ごぶ蔵君。」
「ごぶ?」
「これがお土産になります」
「ごぶっ!ごっぶごっぶ!」
先ずはごぶ蔵へと成果その1『調味料等のお土産』を渡す。サクッと済む事だし、俺達が返って来てからずっとそわそわしていたので取りあえずこれを最初に報告した。
次いで、正直こっちが本命の成果その2『草原についての情報』を話し始める。
「続いて、昨日話したと思うけど、今日改めて情報収集をしてきた。それによると・・・どうも現在草原の外から人間が流入して来ているらしい」
「ゴブ。侵略ですゴブ?」
「ある意味?何か聞いた話だと、宗教を広めに来たとかなんとか」
「宗教ですゴブ?」
イマイチ遊牧民達も解っていなかったみたいだが、現在外から来ている人間達はどこぞの宗教を広めに来た人達らしい。
そんな人間達が何故『充足』エリアにいるのか?これについての情報も、本日収集する事が出来たのでそれを説明してみる。
「ああ。『充足』エリアに人間達が~・・・ってのは話したよな?」
「ゴブ」
「どうも『充足』エリアを解放するから我が宗教に・・・ってことらしい」
「ゴブ?」
「えっと、現在草原の外から入って来ている人間達が、『お困りのことありますか?充足エリア?ならそこを解放しますから自分達の宗教に入ってください』って言ってるんだって。しかもなんか遊牧民達はうんともすんとも言っていないのに、一方的に言っているらしい」
今回訪れているのははた迷惑な宗教勧誘をする人間達らしく、『取りあえずやるから、やったらウンと言え』と言った感じの事を言ってきたのだとか。
前世でも宗教に関わる人には難しい人達が居た者だが、今回の人間達もその人たちと同じ・・・いや、更に達が悪い人間達なのかもしれなかった。
「まぁそんな訳で人間達が『充足』エリア、若しくは『衰退』エリアに増えているんだと。皆にも気をつける様に言っておいてくれ」
「ゴブ」
「あ、見かけても直ぐ逃げる様にともな。何か話を聞く限り結構強いらしいって言ってたし、実際戦ってみたら確かにその通りで、そこそこ強かったんだよね」
「ゴブ。この後と明日の朝、2回連絡しておきますゴブ」
「ああ、頼む。大事な事だからな。とまぁ、報告はこのくらいだな。他に何かある人いるか?」
『お土産』と『草原に増えた人間達』、俺の報告は以上だったので報告を占めようとすると・・・ごぶ蔵が手を上げた。
何となく予想はつくが俺はごぶ蔵へと発言を促す。
「・・・如何したごぶ蔵?」
「明日のご飯のリクエストあるごぶ?新しい調味料が入ったから、何かあればつくるごぶ!」
「・・・いや、特に・・・「ごぶ!?我は美味い肉を要望するごぶ!」「がう。俺は筋肉によさそうなのがいいがう」「私は魚があれば魚がいい」「妾も肉がよいのじゃ」
ごぶ蔵の発言は大体予想通りだったのだが、その後の皆の食いつきようは予想外だった。
・・・とまぁ、その様に、何故か最後はご飯リクエスト大会へと変わってしまった会議は無事?に終わりを迎え、翌日の朝食には美味しいご飯が並びましたとさ。
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作者より:読んでいただきありがとうございます。
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こちらも連載中です。↓『悪役令嬢は嫌なので、魔王になろうと思います。』
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