第204話 色々作業をするわんちゃん
「・・・」
「今日帰ってからずっとおかしいけど大丈夫?」
「・・・ああ。大丈夫大丈夫。ありがとうなエペシュ・・・ふぅ」
人間達と戦った後帰って来た俺は、夕食の場でエペシュに調子がおかしい事を指摘されてしまった。
しかし仕方ないだろう・・・なんたって俺は人間を・・・
「ごぶ?体調悪いごぶ?まさか人間との戦いがきつかったごぶ?」
「・・・ん?あ、いや、それは別に」
「ごぶ」
そう、別に人間と戦ったのはどうでもよく、特にそのこと自体に後味の悪さも感じてはいなかった。
まぁ俺も一応魔物なのだ。元同族の人間を屠る事には今となっては問題ないのだ。
なら何でそんなに元気が無いんだ?と言われれば・・・俺とごぶ助が行った人間達の後始末が問題だった。
「なら皮を剥いだのがきつかったごぶ?」
「・・・うっ・・・飯がリバースするから辞めてくれ・・・」
そう、俺がショボーンとしているのは人間達の後始末として皮を剥いだことによるモノだった。
なら何故そんなことをしたのかといえばなんだが・・・それは俺のシェイプシフトに使う用の皮、つまり顔の皮を取るためだった。
「うぅ・・・べろーんと・・・目玉がギョロっと・・・」
「ごぶ?兎とか牛を解体するのと一緒じゃないごぶ?」
「まぁそうなんだけどさぁ・・・なんか人間はグロイんだよ・・・」
確かに兎や牛を食べるために解体するのも一緒と言えば一緒なのだが、何故か人間の顔の皮を剥ぐのは気持ちが良いモノではないのだ・・・食べるためではないからだろうか?
「うごご・・・」
「しかし一狼よ、皮は剥いでおったが処理をせんと腐るのじゃぞ?今からそんな風で大丈夫なのかや?」
「え?マジ?」
「うむ。マなのじゃ。妾が昔お主にやった物も腐らぬ様にはしてあったのじゃぞ?」
「オゥマイゴッド・・・」
俺が人間の皮について唸っているとニアより新事実が告げられてしまった。マジでジーザスである。
しかし地獄にも仏はいるモノである。
「私がやろうか?皮の加工」
「オゥ!マイゴッデス!」
そう、女神エペシュである。・・・仏じゃないとか言う突っ込みはなしなのである。
兎も角だ、エペシュが皮の加工をやってあげようと申し出てくれたので、俺はそれに全力で乗っかる事にした・・・のだが、地獄の(小)鬼がそれを阻止して来た。
「解体した獲物は感謝をして自分でやるごぶ!それが料理人ごぶ!」
ごぶ蔵である。・・・って、俺は料理人でもないし、獲物と言っても食うために解体した訳でもないのだが?
しかしそのごぶ蔵理論に仏(女神)のエペシュ様は何故か納得してしまい、手伝うから一緒にしようと、そういう事になってしまった。
「いや・・・つっても俺犬だし・・・ね?無理だよ無理」
「一狼は変身出来るごぶ?変身してやれば大丈夫ごぶ」
「・・・っく・・・解ったよ・・・」
何とか逃れようと言った言葉も地獄の(小)鬼は見事に防いで見せる。流石俺を死の淵から呼び戻したごぶ蔵である。・・・いや、呼び戻しては無いのか?
とまぁ兎に角だ、シェイプシフト用の皮の加工をすることになってしまった俺は、食後にエペシュに習いながら皮の加工を頑張った。・・・それはもう頑張ったのだ。
・
・
・
「という事で今日はレベルアップ作業はちょっとお休みです・・・」
だからちょっと休んでもいいだろう?・・・いや、本当は加工の色々で少し時間が必要になるのと、ちょっとやりたい事もあったのでレベルアップ作業は休みにしたのだ。
「ごぶ?ごぶ!」
翌朝『さぁ出発するごぶ!』といった感じだったごぶ助にそれを説明すると、二つ返事で了承してくれ、『なら今日は皆と一緒に食べる分の獲物確保でもしてくるごぶ』と言ってさっさと出かけていってしまった。
そして残された俺は早速加工作業の続きをしに作業場へと向かう。
「・・・グロッ!」
その作業場へと入ると俺はついつい声を漏らしてしまう。
しかしそれは仕方がないと言わせてもらおう。なんせ台に『ババーン』と人の顔の皮が張られているんだぜ?声位出るだろう?
「けどそんなこと言っても居られないか・・・さっさとやる事だけやろう」
「うむ。一応妾が間違っていないか見ておいてやるのじゃ」
「うっす。『シェイプシフト』」
俺の背後霊と化しているニアが先生もしてくれるみたいなので、俺はスキルを使って変身し、2本の前足から2本の手に変わったその手で作業をし始める。
そうしてチョイチョイと作業を終了させると変身を解除し、俺は作業場を後にして移動しようと・・・する前に、ニアが俺に話しかけてきた。
「何処に行くのじゃ?」
「ん?ああ、ポンコの処だな。ちょっとポンコのダンジョンを整備しようかと思ってさ」
ニアの質問に答えた事で解ったかと思うが、俺が今日やりたいと思っていた事はポンコダンジョンの整備だ。
「なんだかんだポンコのダンジョンって現在どうなってるのか解らないのもあるからさ、一回どうなっているのか聞いてみて、いまいちだったら弄ろうかと思ってさ」
「ふむ」
今は安全な場所に設置されているとはいえ、不意に移動することになるかも知れない。そうなるとポンコのダンジョンが脆弱では困る訳だ。
「いっその事一狼のレモン空間へと取り込んでやってはどうなのじゃ?それなら安全ではないかや?」
「ん?ん~・・・その方法もなくはないんだけど・・・」
ニアがズバリいい感じの方法を言ってきたが、それはあまりしたくない方法だった。何故ならポンコを取り込むと、俺のレモン空間がポンコツになるからだ。
・・・というのは半分冗談だ。半分は本気だがな!
「一応ごぶ助がポンコダンジョンの『守護者』だからさ。コアを採って移し替える時に死ぬ可能性があるだろ?」
バグって外へと出られているが、一応ごぶ助はポンコダンジョンと命運を共にする『守護者』なのである。コアを台座から外しただけなら大丈夫かも知れないが、俺の中へと移し替える時にごぶ助が死ぬ可能性があるのでダンジョンの統合は出来ないのだ。
「まぁおいおい他のダンジョンで試す機会があったら実験してみるけどさ。それまでは統合は無しの方向かな」
「ふむ。まぁそこら辺は誰も解らんからの、確かに試して調べるしかあるまい」
「だろ?」
移動先とやる事の説明も終わったので、俺はレモン空間の出入り口を開き外へ出る。すると『レモンの入れもん』本体のレモン型の入れ物が置いてあるポンコルームへと出たので、俺はポンコの傍へと近づき話しかけた。
「よおポンコ、ちょっといいか?」
【はイ?なんでショウ?】
昔と比べると若干ポンコツ具合がましになっていそうな喋り方のポンコへと、俺はダンジョンの内部がどうなっているのかの詳細を尋ねた。
するとポンコは宙に映像を出しながらダンジョン内部がどうなっているかを話し始めた。・・・やはり若干ポンコツがましになっていそうだ。
【・・・・・という感じデス】
「ふむふむ・・・」
そうして説明をしてもらったのだが、基本的には俺が居た頃からあまり変わって無さそうで、変わっているといえば防衛用の魔物を少し配置してある位のモノだった。・・・これは聞いておいて正解だった様だ。
「よしポンコ、超絶劇的ビフォーアフターの時間だ!」
【はイ?】
いきなり言い出した俺の不思議な言動に『何言ってんだコイツ?』的なニュアンスを醸し出してきたので、俺はポンコへと強化しないと万が一のことがあった時に困ってしまうという事を説明する。
すると解ってくれたみたいで了承してくれたのだが・・・【優しくシテ下さいネ?】と、何とも返答に困る事を言われた。『優しくしたら直ぐに突破されるんだが?』とでも返しておくべきだろうか。
「まぁうん、はいはい。んでだ、取りあえず龍脈はどのくらい使えるんだ?」
【流すとはヒドイお方ですネ。そうですネ・・・・・】
(適当に流したら指摘されたでござる。・・・っていうかポンコさん全然ポンコツだなこれ)
やはりポンコはポンコだったな・・・なんて思いつつ聞いた龍脈のリソース量を聞くと、まぁまぁの量は使えそうだったので、俺は既存のダンジョン部へ罠や魔物等を少しずつ足していく。
「ちょいちょいっと・・・まだ余裕だよな?」
【はイ】
「じゃあ階層を1層増やせれるか?」
【はイ】
少し弄ったがまだまだいけるとの事だったので、俺はレモン空間で牧場をやり始めた時に思いついたアイディアを試そうと階層を1層追加し、そこをチョイチョイと弄る。
「こうして・・・んでこうだな」
【そうするト結構リソースを喰いますガ?】
「やっぱりか。んじゃ取りあえず階層追加だけで後は置いておくか」
【解りましタ】
試そうとしたアイディアは今行うとリソースを喰うだけになってしまうので、一旦ストップをかけ放置しておく事にする。これは明日からぼちぼちと進める事にしよう。
なので俺は他の場所を弄り始めた。
「じゃあ他をもう少し弄るか・・・ん~そうだな・・・ここをこうして・・・」
【もう少し優しくお願いシマス。ポンコが壊れてしまいマス】
「・・・」
その後、チョイチョイとポンコに茶々を入れられつつもポンコを開発していったり、皮の加工作業を進めたりしている内に一日は過ぎていった。
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作者より:読んでいただきありがとうございます。
「面白い」「続きが気になる」「開発(意味深?」等思ったら☆で高評価や♡で応援してください。
☆や♡をもらえると ポンコが 擬人化します。
こちらも連載中です。↓『悪役令嬢は嫌なので、魔王になろうと思います。』
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