第203話 順調に経験値を積むわんちゃん
『充足』エリア初探索から数日経った今日も、俺とごぶ助は『充足』エリア中心部を目指して進んでいた。
「シャァァアアッ!」
「・・・っ!」
「ごぶ!ごぶっ!」
「ナイスっ!」
『充足』エリアへ来た初日以降は敵が手ごたえが出ていたのもあり、俺達の移動スピードはそこまで早くなく、遅々とした速度となっていた。しかしだ、確実に進めてはいるし、目的である強敵と戦えているので問題は無いだろう。
「こいつは背面も不味そうだ!側面へ回るっ!」
「ごぶっ!」
「シャァァアアッ!」
「グワァァァッ!」
「両方の頭がうざいが・・・まぁどっちも中途半端にしか届かなさそうだから若干ましだな!」
因みに今戦っているのはビッグランドタートルという亀の様な魔物だ。
名前:
種族:ビッグランドタートル
年齢:9
レベル:32
str:831
vit:1499
agi:551
dex:396
int:203
luk:37
スキル:硬化 地団駄 地魔法 咬みつき 毒牙
ユニークスキル:
称号:
ステータスを見てもらうと解るかと思うが、コイツはかなり硬く、そしてデカイ。
それだけでもフィジカルモンスターとしてかなり厄介な強さを誇っているビッグランドタートルだが、コイツは更に尻尾が蛇になっており、普通の生物ならば弱点になるであろう背面もカバーされているという面倒な魔物であった。
「ググ・・・グワッ!」
「となるとやっぱ使って来るわな!『地魔法』を!」
おまけにコイツは魔法も使って来るので嫌になって来る。・・・まぁ魔法の威力はさほど強くないので、それだけは救いなのだが。
だがそれをビッグランドタートル自身も解っているのだろう。使ってきた魔法は攻撃する為のモノでなく、防御の為の壁を作り出すモノだった。
「っちぃ・・・側面から攻撃させないためか・・・考えやがる」
「ごぶ!任せるごぶ!相棒は逆の側面に回り込むごぶ!」
「むっ・・・!了解!」
どうするかなと考えかけたのだが、ごぶ助が俺に指示を出してきたので俺はそれに従う為に動いた。
因みに当人は指示を出した後背中から飛び出し、ビッグランドタートルが作った壁を乗り越えて奴の背中へと飛び移っていった。
「無茶しやがる・・・っつっても、今のごぶ助に取ったら無茶でも無理でもないんだろうがな」
俺はそんな事を呟きつつ、ごぶ蔵に言われた通り逆の側面へと回り込む。
「グワァァァッ!」
「おい!亀公!こっちだ!・・・氷の槍よ!敵を貫け!『アイスランス』!」
「グワッ!?グワァァァッ!」
そしてそのついでに俺は亀の頭側を通り、魔法で牽制を仕掛ける。これで若干だが背中のごぶ助のアシストになるであろう。
「ごぶりゃぁぁぁぁあ!」
「グワァァァッ!?」
『シャァァァッ!?』
その狙い通りごぶ助は亀の頭の気が逸れた内に攻撃を仕掛けた様で、亀と蛇の両方の頭から悲鳴が上がった。
そしてそんな状態なので俺に構う暇がないのだろう、逆の側面に着いた俺をビッグランドタートルは気にしていなかった。
「ってことで俺もやらせてもらうか。・・・風よ集え『黒風』。爆ぜよ爆炎、絡みつき燃やしつくせ『ナパーム』」
俺はビッグランドタートルの腹の下によく使っている風+火の魔法をセットする。この時気を付けるのは、未だ奴に覚られぬよう熱を漏らさぬよう魔法をコントロールする事だ。
「うし・・・続いて・・・水よ収束し球となれ『ウォーターボール』。・・・そいっ」
次に燃え盛る風球へと水球を投げ込む。この時起こる結果はご存知の通り水蒸気爆発なのだが、ポイントは爆発が起こる直前に風球の上方向にワザと穴を開ける事だ。
そうするとだ・・・爆発の力は主に穴を開けた上方向へと流れるので・・・
「ごぶ助!一旦奴の上から降りろっ!」
「ごぶ!」
「グァァ『ボーーーーーン!』・・・グァッ!?」
指向性を持った爆発が、よりダメージを与えてくれるという訳だ。
「んでもういっちょ!・・・風よ集え『黒風』。爆ぜよ爆炎、絡みつき燃やしつくせ『ナパーム』。水よ収束し球となれ『ウォーターボール』」
だがこのまま中くらいの爆発ダメージを与えるだけだともったいないので、更に追加でそれ程魔力を込めない短縮バージョンの爆発を奴の腹の隅っこに起こす。
すると・・・
「グァッ!?グァァァァッ!?」
「シャァァ!?」
「ごぶ?あいつ何やってるごぶ?」
狙い通り、ビッグランド
「っふ・・・間抜けめ!嵌っておるわっ!」
しかもこれは完全に偶然だったが、爆発でえぐれた地面に奴の甲羅がすっぽりと嵌り、より一層元に戻れない様になっていた。
こうなると少し可哀想だが、奴のピンチは俺達のチャンス。なので遠慮なく攻めさせてもらおう。
「ごぶ助!チャンスだ!今なら奴の腹は少し脆くなっている筈だ!思いっきり力入れてぶち込んでやれ!」
「ごぶ!」
俺はごぶ助に声を掛け、自身は腹の方まで首が回るかも知れない尻尾の蛇の頭へと回り牽制を掛ける。
その間にごぶ助は少しタメがかかると言っていた『オーラブレード』を使い・・・
「ごぶぅ~・・・ごぶっ!」
オーラが乗った武器で、パワーアタックをビッグランドタートルの腹へと放った。
「グバァァァァアアアッ!!」
「ジャアアアアアア!?」
俺の攻撃で腹の甲羅が少し脆くなっていたのもあっただろうが、ごぶ助の攻撃は奴の腹を見事突き破った。
その攻撃で中身が少し飛び散ったし、白目をむいてピクリとも動かなくなったので、俺はそれでビッグランドタートルを倒したと思い気を少しだけ緩めた。
・・・しかしそれがいけなかったのだろう。
『ドゴォッ!』
「うごっ!?」
「ごぶ!?相棒っ!?」
俺の横っ腹に火で出来た槍が突き刺さった。
『一体何が!?未だビッグランドタートルが生きていたのか!?』そんな事を考えたのだが、それは違った。
『ッヒュンッ!』
「危ないごぶっ!・・・ごぶ・・・あれは・・・人間ごぶ!」
俺に目掛けて飛んできた矢を払ったごぶ助が見ている方向へと顔を向けると、確かにそこには人間の姿があった。どうやらビッグランドタートルに夢中になりすぎて、警戒が疎かになっていたらしい。
「すまんごぶ助・・・気づかなかったわ・・・」
「ごぶ。それより大丈夫ごぶ?」
「ああ。ビビったが、威力はそうでも無かったわ。でも、ちょっと弱った振りしとくな?」
「ごぶ?」
こちらへとジリジリと近づいて来る人間達を見て、俺は弱った振りをしておく。『鑑定』を掛けた結果、探索初日に見かけたシープベアーを倒していた人間達より少し強いくらいの敵だったので、念には念を入れて演技をしておく事にしたのだ。
それを伝えるとごぶ助も解ってくれたのか、弱った俺を庇うフリをし始めた。
やがて人間達はやや離れた距離まで近づくと、後衛を残し前衛のモノだけがそのまま近寄って来た。・・・勿論武器を構えてだ。
「一見エルフにも見えるごぶ助を見てもそのまま突っ込んでくるのか・・・。なら交渉の余地はなさそうだな」
「ごぶ?元からそんなことする気はないごぶ」
「ま、それもそうか。ごぶ助、近寄ってくる奴らを頼む」
「ごぶ」
相手は前衛3、後衛3の6人グループだったで、3人位ならば難なく捌けるだろうと、俺は前衛の相手をごぶ助に任せる。
「魔物使いの亜人がっ!滅す!」
「ごぶ?何言ってるか解らないけど、かかってくるごぶ!」
そして敵の前衛達とごぶ助が打ち合い始めたのを見計らい、俺は密かに準備していた『黒風』を体に纏い、倒れた状態からいきなりトップスピードになって敵の後衛へと襲い掛かった。
「「「!?」」」
前衛に協力してごぶ助を攻撃する事だけ考えていた後衛達はそれに対応できず・・・
「シッッ!」
「「「ぎゃぁぁぁっ!」」」
俺の爪での攻撃に倒れ伏した。
「なんっ・・・「ごぶぅっ!」ッパーン!』
「ごぶごぶっ!ごぶっ!」
『『ッパーン!』』
その後衛達の悲鳴を聞いて動揺したのもあるのだろう、ごぶ助と戦っていた前衛達は瞬く間に・・・爆散した。
「うん・・・同様云々じゃねーわ」
恐らくごぶ助は何時でも決められたのだろうが、俺のアシストだったのだろう。ナイスである。
と、ともあれ、戦いは終わった訳だが、ここでまた気を緩めて奇襲されてはたまらないので、俺は『索敵』で反応を探る。
「・・・うん。もう居ないな」
「おかわり無しごぶ?」
「ああ。・・・それにしてもマジですまん!亀に気取られ過ぎてた!」
「ごぶ。我も同じごぶ。次から気をつけようごぶ」
大丈夫そうだったのでごぶ助に再度警戒を緩めた事を謝ると、ごぶ助はお互い様だと言って許してくれた。きっと攻撃されていたのがごぶ助だったら、ごぶ助は防いでいた筈だろうに・・・。
「ごぶ助マジゴブメン・・・」
「ごぶ?」
「いや、なんでもねぇ!しかしあれだな・・・こいつら一体何なんだ。いきなり襲ってきやがって」
「ごぶ。人間は大体こんなものごぶ」
「ふむ・・・」
(一見するとエルフにも見えるごぶ助にノータイムで襲い掛かって来た事は少し気になるが、まぁそんなモノなのかもしれない・・・のか?遊牧民達はそんな事は無かったんだが・・・)
少し気になって考え込むと、なにやら色々な事を考えてしまった。そうやって考え込み時間が経っていたのだろう・・・ごぶ助が俺を呼んだ。
「ごぶ?今日はこのくらいにしとくごぶ?」
「あ~・・・そうだな・・・」
チラリと空を見上げると、大分日も傾いていた。
「うん。今日は帰るか」
「ごぶ」
なので俺はごぶ助の言う通り探索を切り上げる事に決め、後始末をし始めた・・・後味の悪さを感じながら・・・。
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作者より:読んでいただきありがとうございます。
「面白い」「続きが気になる」「でたなゴ(っつ)ブ(っ飛んだ超イケ)メン」等思ったら☆で高評価や♡で応援してください。
☆や♡をもらえると 一狼が ゴブメンになります。
こちらも連載中です。↓『悪役令嬢は嫌なので、魔王になろうと思います。』
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