第202話 相棒と共に戦うわんちゃん

「ごぶ!」『ボコォッ!』


「そして回収!」『サッ』


「も一つごぶ!」『ボコォッ!』


「もう一丁回収!」『サッ』


「おまけごぶ!」『ボコォッ!』


「回収はそえるだけ!」『サッ』


 どうも、ゴブリンライダーの乗り物部分の一狼です。


 最強ゴブリンライダーに進化した俺達は、『充足』エリアの中心を目指しながらサーチ&デストロイを繰り返していた。


「ごぶりゃぁ!」『ボコォッ!』


「&回収!」『サッ』


 少し前に戦ったアサシンモール以外に数種類の敵を発見していたのだが、今の所はアサシンモールと同等位のステータスの奴らばかりだったので、俺達は一撃で撃沈&回収を繰り返し、止まる事無く走り続けていた。


「我らに敵なしごぶ!」


「応よ!俺達は草原に現れた覇王!死を運ぶ風よぉっ!」


 そして俺達のテンションも上がりっ放しだった。


「ごっぶごっぶ!我らこそ最強コンビごぶ!」


「ヒーハー!最高だぜ相棒よぉっ!」


 というのもだ、ごぶ助にとっては念願、俺にとっては少しあこがれがあったゴブリンライダー状態なのだ。これでテンションが上がらないのは嘘だろう。


「うむ。喜び勇むのは良いのじゃが、徐々に敵は強くなる筈なのじゃ。気を付けたほうがよいぞ?」


 しかしそれもニア師匠の忠告により落ち着きを取り戻す。・・・少しだけだが。


 だがしかし、その少し冷静になれただけでも十分だ。


「だってよごぶ助!ちょっとだけ落ち着こうぜ!」


「ごぶ!ひっひっふーごぶ!」


 なんせ俺達は2人いるのだ。少しのきっかけでも互いに作用し、自ずとそれは大きな動きへと変化することが可能なのだ。


「それはなんか違うがまぁいいか!ひっひっふー!」


「ひっひっふーごぶ!スーハースーハー」


「ふぅ~・・・大分落ち着けたぜ」


「ごぶ!でも走りながら叩くのは良いごぶ!続けるごぶ!」


「だな!」


 俺は今までにない感覚を味わっていた。


(エペシュにはちと悪い気もするがな・・・)


 生憎とエペシュが俺に乗っていた時はこの様な感覚にはならなかったのだ。彼女には悪いが、やはり相棒という意味ではごぶ助が俺にとっては最高なのだろう。


「いや・・・若しくはパワータイプにはパワータイプが合うという事か?俺もどっちかって言うと脳筋ではあるしな・・・」


「ごぶ?」


「いや、なんでもない!っと、また反応だ!行くぜ!」


「ごぶ!」


 冷静になった文余計な事を考えてしまったが、敵の反応を捕らえたので、それを一旦意識の隅へと追いやりそちらへと向かう。


「そろそろ見えて来るぞ!」


「ごぶ!」


「ん・・・?あれは初見だな」


「ごぶ。『鑑定』よろしくお願いしますごぶ^^」


「なんか・・・いや、まぁいいや」


 俺はスピードをかなり落としつつ、まだ遠くにいる敵へと『鑑定』を掛けた。



 名前:

 種族:シープベアー

 年齢:9

 レベル:29

 str:951

 vit:903

 agi:691

 dex:522

 int:138

 luk:45

 スキル:腕力強化・中 薙ぎ払い ぶちかまし 怪音咆哮 酩酊眼 

 ユニークスキル:

 称号:


『スキル:怪音咆哮

 ・聞くものが不快に思う怪音の咆哮を放てる。確率で麻痺、錯乱、脱力の状態になる。』


『スキル:酩酊眼

 ・目を合わせた対象を確立で酩酊状態に出来る。』



 敵の名はシープベアー。名前は可愛いが、外見や能力は可愛くない魔物だ。

 奴はその名前の通り羊と熊を足した様な姿をしているのだが、実際のところは熊に羊の巻き角と横に長い瞳孔が付いた『悪魔じゃね?』と言いたくなるような外観と、能力も悪魔らしい外観通りというか、かなり凶悪なモノだった。


「ごぶ助!」


 俺はそのステータスをごぶ助に簡単かつ素早く伝える。


「ごぶ」


 ごぶ助はそれを聞き軽く頷いているが、まぁ気持ちは解らなくもない。何故なら能力的にシープベアーが凶悪でも、こちらは更にその上を行く凶悪さだ。

 しかし油断は大敵、強さはステータスが絶対的でもないので注意を促す。


「ごぶ!」


 それに対しごぶ助は力強く頷いた。これがごぶ蔵だったなら『いや、駄目だろ』となるが、頷いているのはごぶ助だ。大丈夫であろう。


「真正面から当たると危険かもしれんから横か後ろから当たる!ちょっと激しい動きかも知れんから落ちるなよ!?」


「ごぶ!気にせず動くごぶ!」


「っし!行くぞ!」


 伝える事は伝えたので後は当たるのみ。俺は敵へ向けて走り出す。


「ギィォォォオオ!」


 すると敵も俺達に気付いた様でこちらへと振り向き、後ろ足(羊の脚だった)で立ち上がりながら手を掲げてきた。威嚇のつもりだろうか?

 いや、それだけではない。奴は大きく息を吸っていた。


「風よ!壁を!」


『◎×ΠεЯЯ☆☆☆ッッッ!!!』


 予想通り奴が『怪音咆哮』と思わしきものを使ってきたので、俺は咄嗟に風で壁を張って音を和らげる。

 そのお陰か何の状態異常にもかからなかったので、俺はそのまま敵の正面へと走り、直前でスッと進路を変更し奴の側面へとまわる。


「ごぶりゃっ!」


「ギュォオ!?」


 するとそれを予想していたとでも言わんばかりにごぶ助が武器を振った。俺一人で戦っていたらそれで一呼吸使っていた所なので、ナイス攻撃だ。

 俺はごぶ助の攻撃が当たったのを感じると同時に離脱。流れる様に今度は背面に回り込み、そこでも更にごぶ助が流れる様に一撃。


「っし!」


 そこから更に最初とは逆の側面に移動しようとしたのだが・・・ごぶ助が『一旦離れるごぶ!』と言ってきたので離脱を試みる。


「どうした!?」


「ごぶ。倒したごぶ」


「・・・え?」


『・・・ドスーン』


「あ、本当だ」


 全く気付かなかったがシープベアーはごぶ助の攻撃2発で沈んだ様で、奴は音を立てながら前のめりに倒れ込んだ。

 そんなシープベアーの体を見てみると、脇腹と背中がベコッと凹んでいるのに気づく。


「・・・すげぇパワーだなおいィ?」


「ごぶ。相棒とのコンビ攻撃のおかげごぶ」


「いやいや・・・」


「ごぶごぶ。相棒がどう動くか解ったから、それに任せる様に力を入れたごぶ」


「そ・・・そっすか」


 イマイチ信じられない理論を言われたが・・・まぁごぶ助が言うのならばそうなのだろう。


「ま、次行くか」


「ごぶ。ちょっと手ごたえが出て来たから期待ごぶ」


「だな。でも俺達と同格位もいるらしいから、気を抜くのは駄目だぞ?」


「ごぶ」


 強者感たっぷりの台詞を言うごぶ助を少したしなめつつシープベアーを回収し、俺達は更に『充足』エリア中心部へと向かう事にした。

 しかしここら辺からは強敵がいるだろうとの事で、移動速度は控えめだ。


「さて次は・・・お?」


「ごぶ?見つけたごぶ?」


「見つけたけど・・・多いな。6体分かな?そんくらいの反応だ」


「ごぶごぶ」


 移動し始め早速反応を感知したのだが、少しその数が問題だった。流石にシープベアーくらいの敵が6体だと、完全に安全とも言えないからだ。

 だがごぶ助曰く、『少しの冒険も必要ごぶ』との事だったので、一応そちらへと向かってみる事にした。


「・・・流石に俺達と同格位だったらパスするからな?」


「ごぶ。解ってるごぶ」


 意外と突っ込む癖があるごぶ助に一応忠告し、俺達は反応があった場所へと向かう。


 するとそこには・・・


「・・・ん?あれは人間だな。人間が5人と・・・シープベアーが1だな」


 てっきり魔物が6体いるかと思っていたのだが、どうやら反応の5体分は人間だったようだ。


「んー・・・ちょっと前に見た奴らより少し強いくらいだな」


 一応『鑑定』もかけてみると、ステータスでいうと少し前に見た人間達より50~100位は数値が高かったが、大体シープベアーの半分ほどの数値だった。

 それを伝えてみるが、ごぶ助の反応は『ふーん』という感じだった。


「ん~・・・」


「ごぶ?次の獲物探さないごぶ?」


 決して『助ける』という選択肢が出てこない辺りがゴブリンなのだろうか。まぁ俺としても『助けよう』と言われても返答に困ってしまうので良いのだが・・・。

 と、それは兎も角だ、俺はごぶ助へとこんな提案をしてみる。


「一応様子見てみない?」


「ごぶ?」


「いや、どんな戦い方なんだろうってさ。俺、人間が魔物を囲んで戦っている所見た事ない・・・事もないけど、ないんだよね」


 一応エルフがオークと戦っているのを見たり、人間達にごぶ助と一緒に囲まれた事はあるが・・・あれらはノーカウントだろう、多分。


「ごぶごぶ・・・ごぶ。見てみるごぶ」


 ごぶ助も俺に言われて少し興味が出たのか、乗り気になった様だったので、俺達は人間達に見つからない様、こっそりと様子を伺い始めた。


 ・

 ・

 ・


 30分ほどだろうか、それくらい経った後、俺達は予想外の結果に感心していた。


「・・・まさか人間側が勝つとは・・・」


「ごぶ。侮れないごぶ」


 人間5人対シープベアー1体の戦いは、人間側が辛勝ではあったが勝利を収めていた。

 正直最初はその圧倒的なステータス差からシープベアーが勝つと思っていたのだが、人間達は巧みに連携し、見事勝ってみせたのだ。


「装備とかの所為もあるかも知れないけど・・・いけるんだな」


「ごぶ。役割を分けて、きっちりそれをこなしていたように見えるごぶ」


「あー、それな」


 俺とごぶ助は先程の戦いを振り返り、人間達がどうやって戦っていたのかを振り返っていた。

 何でそんな事をしていたかって?そりゃその戦い方を取り入れればコボルト達やゴブリン達の戦力がアップするかもしれないと考えたからだ。


 暫くごぶ助とあーだーこーだ言っていたのだが、ふと気づくと日が落ちかけていることに気付く。


「っと、ごぶ助、今日は帰るか」


「ごぶ?あ、ご飯の時間ごぶな」


「違うけどそうだ。さ、俺達の家に帰ろうぜ」


「ごぶ?ごぶ!帰るごぶ!」



 最後に予想外の収穫があった俺達の『充足』エリア初探索だったが、こうして無事終わりを迎え、俺とごぶ助はまるで昔の散歩帰りかの如く、楽し気に『充足』エリアを後にした。



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 作者より:読んでいただきありがとうございます。

「面白い」「続きが気になる」「最凶☆ゴブリンライダー」等思ったら☆で高評価や♡で応援してください。

 ☆や♡をもらえると ごぶ助が 一狼と合体して上半身ゴブリン、下半身犬になります。


 こちらも連載中です。↓『悪役令嬢は嫌なので、魔王になろうと思います。』

 https://kakuyomu.jp/works/16816927860702355532

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