第201話 忍者ではなくモヒカンなゴブリンとわんちゃん

 強敵を求め『充足』エリアの奥へと進む俺とごぶ助なのだが・・・そういえばどうやって戦うかを決めていなかった事を俺は思い出した。


「そういえばごぶ助、お前って今どうやって戦ってるんだ?」


 なので戦い方を話しながら歩く事にした。


「ごぶ?それは勿論これで殴ってるごぶ」


 ・・・のだが、ごぶ助の戦い方は基本的には昔から変わっておらず、近づいて殴るのシンプル・イズ・ザ・ベストだった。

 そう言う自分はどうなのかと言う所だが・・・まぁこれも特に変わらずであることを思い出す。


「そうか。んじゃあ昔通り、ごぶ助が突っ込んで俺が後ろから補助って感じだな」


「ごぶ!」


 そうして戦い方が決まったところで、丁度いい事に『索敵』が何かしらの反応を捕らえたのでそちらへ行ってみる事にした。・・・また人間でなければいいのだが。


「そろそろ見えてくるはずなんだが・・・うん、人間の姿は見えない」


 今度は人間の姿は見えなかったので当たりの様だ。


 ・・・とは思うんだが、魔物の姿も見えなかった。


「んん?」


「ごぶ?」


「いや、あそこら辺に何かの反応があるんだけどさ、何にも見えないんだ。ごぶ助には何か見えるか?」


「ごぶ?見えないごぶ」


「ふむ・・・」


(目で見て見つけられない・・・つまり擬態している?・・・となるとだ、魔法でも一発ぶち込めば見つかるかもか?)


 見つからない魔物の事を考えるために少し目を瞑り、その結果出て来た答えは脳筋戦法だった。しかしこれが最も有効であろう。


「取りあえず魔法でもぶち込んでみるわ」


『・・・』


「・・・ごぶ助?」


 なのでその作戦をごぶ助に言ったのだが・・・反応が返ってこない。『何で?』と思っていると当たり前の事だった。


「ごぶ?」


「ってもうそこにいるんかいっ!?」


 何とごぶ助さん、俺が目を瞑って考え事をしている間に敵の反応があった場所にすでに歩いていっていたのだ。


「俺より脳筋戦法じゃねぇか!?シンプル・イズ・ザ・ベストの領域越えてんよ!?」


「ごぶ?」


 擬態して待ち伏せしているであろう魔物、そんな奴にその様な俺より脳筋極まった戦法をとった結果はどうなるか?

 それは勿論決まり切っている・・・敵の先制攻撃だ。


「ごぶっ!?」


「ああっ!?」


 ごぶ助はまんまと地中から飛び出してきた敵の先制攻撃を受け、その爪で胴を真っ二つにされた。・・・真っ二つ!?


「ご・・・ごぶ助ぇっぇええ!?」


 俺は驚きつつも本能だろうか、敵の強さを図るために敵へと鑑定をかけていた。



 名前:

 種族:アサシンモール

 年齢:5

 レベル:23

 str:725

 vit:408

 agi:861

 dex:445

 int:203

 luk:41

 スキル:腕力強化・中 嗅覚強化・中 無音行動 バックアタック 致命の一撃

 ユニークスキル:

 称号:



 突如現れた敵・アサシンモールは名前が示す通り中々物騒なスキルを複数持っていた。もしかしたらこれに索敵を誤魔化す様なモノもあったならば、俺も知らぬうちに真っ二つにされていたかも知れない。


 ・・・って!そうだ!今は真っ二つにされたごぶ助だ!


 真っ二真っ二つと言ってはいるが実の処、敵の爪が胴体をスゥ~っと通っている所を見ただけなので、胴体が無き別れ状態になっているとかではなかった。

 しかし一切反応が無いので、あれはもしかしたらアサシンモールが持っているスキルの効果なのかもしれない。


「けどそれならまだ無事かも知れない!今助けるぞごぶ助っ!」


 漸く再会できたこの世界で出来た初めての仲間・・・いや家族だ、ここで失う訳にはいかない!

 俺は今だ無反応で立ち尽くすごぶ助の元へと駆け寄ろうとした。



「ごぶ?あれは残像ごぶ」



「・・・ん?・・・・・・えぇえぇっっ!?!?」


 ・・・のだが、何時の間にかゴブ助は俺の隣に立っていた。っていうか残像って何やねん!?


「って言うか残像って何やねん!?」


 マジで疑問だったので心の中で1突っ込み、更に口にも出してもう1突っ込みと同じことを言ってしまった。


「ごぶ?だから残像ごぶ」


 しかしごぶ助さん、俺に言われた意味が解らなかったみたいでそんな言葉を返してきた。そんな言葉を返されても、俺の方が疑問なのだが?


「・・・ってまぁ良い!それは後だ!今はそれより敵を叩くぞっ!」


 色々疑問はあるがそれはさておき、今は先ず敵を倒す事を優先すべきだと俺は思い出しごぶ助に声を掛け身構える。落ち着いて戦えば、俺もごぶ助もステータスでは圧倒しているので余裕で戦えるはずだ。


「さぁいくぞ!」


「ごぶ?敵ならもう頭を叩いてやったごぶ」


「・・・え?マジ?」


「ごぶ」


 どうやら落ち着いて戦わなくても余裕だったみたいで、既にアサシンモールはモグラ叩きの刑に合った様だった。

 念の為にアサシンモールがいた場所に警戒しながら近づくと、確かにアサシンモールは頭がパーンした状態(ふんわり表現)で倒れていた。


「マジじゃん・・・っていうかすげぇな。原型も残っているから手加減したって事だよな?」


「ごぶ」


 昔は全力で叩き獲物を爆散させていた事もあったが、苦難を乗り越えてきたごぶ助は予想以上に成長していたみたいで、不意打ちを受けても手加減が出来るほどの余裕を見せていた。

 俺はそんなごぶ助を見て、称賛したい気持ちと同時に負けていられないという気持ちを感じていた。


「・・・うし!このエリアの敵もやれそうだし!バンバンやっていこうぜ!」


 なので俺はアサシンモールを回収すると、直ぐに次の獲物を探しに行こうとごぶ助へと催促する。

 ごぶ助もそれは賛成だったみたいで、俺達は直ぐに次の敵を探しに走り出した。


「ごぶ助!次は俺がやるからな!手を出さないで見ててくれよ!」


「ごぶ?解ったごぶ」


 ・

 ・

 ・


 そうしてしばらくの間俺達は狩りを続けた。

 獲物は最初出会ったアサシンモールの他に、トレントモドキや、グリーンリザード、ダブルテイルスコーピオン等、アサシンモールと同等位の強さの敵と戦った。

 余談だがこの中で面白いのはトレントモドキで、『索敵』の反応を頼りに行った先、草原の中にポツンと樹が立っているなと思ったらコイツだった。どうやらこのトレントモドキは見晴らしのいい草原の中、木陰に休憩に立ち寄る獲物を奇襲して襲う魔物の様なのだが・・・明らか様に怪しいのにかかる奴はいないだろうと突っ込みたくなる奴だった。


「ごぶ。相棒、あの木陰で休憩でもしていくごぶ?」


 まぁ某ゴブリンのお陰で『いるんだろうな』とは解ったのだがね。


 と、そんなこんなで狩りを続けていた俺達だが、何時の間にか太陽が天辺を過ぎた辺りにまで動いていたので、一旦休憩でも取る事にした。・・・いや、勿論『あ、木陰があるな。あそこで休もう』とはなっていないので安心してほしい。


「ごぶ。いっぱい戦った後のご飯は美味いごぶ」


「いっぱい戦ったけど、大して苦戦もしていなかったから疲労感何てないだろ?」


「ごぶ?気持ちの問題ごぶ」


 見晴らしのいい草原のど真ん中で、俺達はごぶ蔵が作ってくれたお弁当を広げて食べていた。

 のんびりし過ぎだろうと思うかもしれないが、休憩して心を癒すのも重大な事なのである。・・・多分。


「しかし『充足』エリア、やばいって聞いてたけど俺達からすると微妙だな」


「ごぶ。我のごぶ助カリバーもヌルイとご立腹ごぶ」


「・・・そうっすか」


 ごぶ助の武器云々はあれだが、確かにごぶ助もヌルイとは感じていたらしい。経験値がどれだけ貰えているのかなんて事は解らないが、恐らくこれだと微妙な感じであろう事は確かだ。


「のんびりしたいい場所だが、強くなるには適さない場所何かね?事前情報でも確かそこまで危険じゃないとか言う話だったしな」


「ごぶ」


 皆には悪いが、もう少し修行出来そうな場所へとダンジョンを移動する必要があるかも知れないと、そう考えている時だった。


「そう結論づけるのは未だ早いのじゃ」


 俺達と同じく、ごぶ蔵特製弁当をパクついていたニアが口を開いた。


「ふむ?」


「ごぶ?」


「まぁ隠すほどの事でもない情報なので言っておくと、このエリアにはお主達くらいの強さの敵も居るのじゃ」


「・・・え?そうなのか?」


「うむ」


 ニア先生曰く、『充足』エリア中心に近づけば強い敵が居るとの事で、『充足』エリア外周当たりの現在地辺りにはアサシンモールくらいの敵しかいないらしい。

 良い情報を教えてくれたのでニアへとお礼を言い、俺はごぶ助と相談して中心の方へと向かう事にした。


「体に栄養もチャージしたし、行ってみるか」


「ごぶ」


 そうと決まれば早速とばかりに、食後の休憩タイムを切り上げ俺達は動く事にした。

 お弁当が入っていた箱を収納し、さぁ出発だ・・・


「・・・あ、そうだ」


 となったところで、俺はふとある事を思いつき待ったを掛ける。

 そしてその思いついたことを実行する為に、俺は収納から『ある物』を取り出しごぶ助に手伝ってもらいを装着した。


「うっし、あんがとなごぶ助」


「ごぶ」


「んじゃ・・・乗れ!」


「・・・ごぶ?」


 俺は装着した・・・『鞍』へとごぶ助に乗る様に促した。


「いや・・・なんだかんだ乗せてなかったじゃん?昔と違って俺も体デカくなったし、いいんじゃないかなってさ?・・・元はと言えばごぶ助が俺を拾ってくれたのもこうする為だろ?」


 今となっては遥か昔のように感じるが、1年程前にごぶ助が俺を拾った当初の理由は『俺に乗る為』だった筈だ。あの頃は小さくてまだそんな事は出来なかったが、ゆくゆくは村に居たゴブリンライダー達の様にそうする筈だったのだ。


「色々あって変わったりしたけどさ・・・俺としてもお前に乗ってほしいんだよな」


 マイスウィートハニー(予定)のエペシュたんに乗ってもらっていたのも良かったのだが、俺としては今世の相棒(確定)のごぶ助とも合体(変な意味ではない)したいのである。


「ごぶ・・・ごぶ!」


 その気持ちが伝わったのか、ごぶ助は大きく頷いたかと思うと俺の鞍に手と足を掛け、颯爽と跨った。


「・・・ごぶごぶ」


 俺からは見えないが、背中からは何となく嬉しそうな雰囲気が伝わって来た。ごぶ助にも色々思う所があるのだろう。


「・・・っし!」


 そして俺もそれを受けて、何となく気持ちが高ぶって来た。


 なので・・・


 ・

 ・

 ・


「ヒーハー!獲物だごぶ蔵!」


「ごーぶー!獲物は撲殺ごぶー!」



 俺達は究極ゴブリンライダーへと進化(?)し、獲物をめっちゃ撲殺して回った。



 ------------------------------------

 作者より:読んでいただきありがとうございます。

「面白い」「続きが気になる」「世紀末、始まりました。」等思ったら☆で高評価や♡で応援してください。

 ☆や♡をもらえると ごぶ助の武器が 火炎放射器になります。


 こちらも連載中です。↓『悪役令嬢は嫌なので、魔王になろうと思います。』

 https://kakuyomu.jp/works/16816927860702355532

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る