第197話 バッキャローを歓迎するわんちゃん
結果は・・・
○ゴブリンによるマリモ狩り→そこそこ。
○遠征隊による捜索→成果無し。
と、この様に順当な結果だった。
「だよなぁ・・・」
・
・
・
俺はその晩再びメンバーを集め会議を開いた。
勿論の事、議題は遠征についてである。
「遠征なんだが・・・どうしたらいいと思う?」
俺は会議を開くなり開口一番にそう問いかけたのだが、実際に遠征に関わっていない者達には解らなかったのだろう・・・ゴブリン達は頭にハテナマークを浮かべていた。
「ああ、悪い悪い。えっと、遠征なんだけどさ・・・」
俺は遠征について自分が思っている事を話した。遠征に出ていたごぶ助とニコパパはそれを聞き、『うんうん』と頷いていたので大体同意見なのだろう。
「・・・って訳なんだけどさ。やっぱ一念発起して本気の遠征すべきかな?2,3日食料持たせてさ。それとも遠征のやり方を変えるべきかな?どう思うよ?」
俺の説明を聞き終えた長老達は『ん~・・・』と考えた後、それぞれ自身の考えた意見を言ってくれた。
それによると、ごぶ蔵とエペシュは食糧事情から『2,3日の遠征はもうちょっと待った方がいい』との意見で、長老は『やり方を変えてみて、その間に食料を溜めてみては?』という意見だった。
「ふむ・・・」
「聞いた感じですと一狼様以外は遠くまで行くのが困難の様ですので、人数を減らして捜索するのが一番だと思いますゴブ」
「ふむ?」
「こういうのはどうでしょうゴブ。遠征に出るのを一狼様、ごぶ助殿、ニコパパ殿の3名にし、その3名で一狼様の作った中間地点ダンジョンから3方向に広がり捜索しますゴブ。それで何も発見できないならばそれを繰り返しますゴブ」
「成程・・・流石に一方向に突き抜ければ何かはある筈だと・・・」
「ゴブ」
流石我らのブレイン、何ともナイスアイディアを長老は出してくれた。俺はその案を採用する事を皆に伝え、早速明日から試してみる事にした。
・
・
・
そしてその作戦をする事2日、見事その作戦はハマり、進展が訪れた。
「今日くらいには何か見つかるといいなぁ・・・」
「一狼よ、同じことを呟く頻度が上がってきておるのじゃ」
「・・・サーセン。でもさぁ・・・んん?」
広すぎる草原に愚痴を溢しつつ走っている時の事だ。俺の『索敵』スキルがマリモではない何かの反応を捕らえた。
「これは何だろう・・・初めて感じる反応っぽいけど・・・」
「解らぬのなら行ってみればよかろ?待ち望んでいた変化ではないかや?」
「ま、それもそうだな」
別れたごぶ助達を呼ぶにもそんな手段はない為、様子見だけでもしようと俺はその反応があった方向へと行先を変えた。
そして肉眼で目視できるぐらいまで近づいたその場所に居たのは・・・牛?だった。
「牛か・・・?4足歩行の牛・・・だよな?」
「うむ。牛じゃ」
その場に居たのはミノタウロスみたいに2足歩行とかではなく、普通に4足歩行をしている牛の様だった。
因みに『様だった』と言うのは、そいつらが俺がイメージしている白黒模様の奴ではなく、長い茶色の毛をしていたからだ。
「バッファローみたいなもんかな?・・・どれどれ」
名前:
種族:バッキャロー
年齢:8
レベル:15
str:371
vit:385
agi:333
dex:195
int:61
luk:48
スキル:脚力強化・小 ホーンアタック 鳴き声
ユニークスキル:
称号:
「いや、名前。・・・ってそうじゃなくてだ、つよっ!?ミノタウロス並じゃん!?」
突っ込みどころが多い馬鹿野郎・・・じゃなくバッキャローさんだが、注目すべき点は名前ではなくその強さにあった。
ステータスだけ見るならばミノタウロス並。しかも群れないミノタウロスと違い、バッキャローは群れていた。
「けど草食だけあって積極的に襲ってくることはなさそうかな・・・?なら他の皆も取りあえず近づかなければ安心か」
様子を見る限り、あちらもこちらに気付いているようだが、向こうから襲い掛かって来る気配はなかった。なので一般ゴブリンやコボルトがバッキャローに会ったならば、刺激せずに逃げろと言っておけば良さそうだ。
「しかしあれだな・・・今夜のメニューは焼肉に決定だな!」
「うむ。楽しみなのじゃ」
「一狼・・・イッキマース」
・・・散々『強い』だの、『ゴブリンやコボルトには逃げろと言っておけばいい』なんて言っていたが、俺に関してはその限りではない。
なので俺は躊躇することなく、十頭ほどのその群れに突っ込んで行った。
・
・
・
翌日、俺と一緒に遠征チームになっているごぶ助とニコパパは、うっきうっきで中間地点のダンジョンから出てきていた。
勿論、そんなに浮かれている理由は唯一つ・・・
「お肉狩るごぶ!」
「がう!肉がう!」
そうです。お肉の為です。
「はいはい落ち着け2人共。お肉はあくまで捜索をしていて見つけたらゲットだからな!?」
「解ってるごぶ!お肉のついでに捜索ごぶ!」
「がう!お肉を捜索がう!」
「あ・・・頭がバッキャロー肉に支配されてやがる・・・」
昨日の晩御飯である『バッキャローの丸焼き』は大変美味だったので気持ちは解らなくないが、俺的にはバッキャロー狙いで捜索ではなく、捜索ついでにバッキャローを狙うつもりなのだ。
それはこの草原がどうなっているかを調べるためであったし、それにバッキャロー以外にも獲物が居るかも知れないからだ。
「まぁ確かに広義的に言えばお肉の捜索ではあるんだけどさ・・・。正直バッキャローは結構強いから、ゴブリン達でも狩れる獲物を探したり、皆にとって危険が無いかも調べたいんだ。だからあくまでバッキャローはおまけだと思ってくれ」
「ごぶ・・・仕方ないごぶ。解ったごぶ」
「がうがう」
「解ってくれたようで何よりだ。うん」
肉に支配された意思は何とか解放出来た様なので、俺は今日も別れて捜索を始め様進む方向を相談する。そしてその時、今日は3方向に分かれるのではなく、2方向に分かれ様と俺は提案した。
「ごぶ?」
「がう?」
「いやな・・・」
それというのも、俺とごぶ助はバッキャローの群れを軽く狩れるのだが、ニコパパだと少し危ないかも知れないからだ。
名前:ニコパパ
種族:ダブルマッスルアームコボルト
年齢:8
レベル:7
str:341
vit:318
agi:275
dex:303
int:66
luk:51
スキル:統率 ひっかき 仲間呼ぶ声 腕力強化・大 鉄腕 ラッシュパンチ
ユニークスキル:
称号:群れの長 ダンジョン1階層突破 特殊進化体
この様に超絶進化をしたニコパパではあるが、強さはバッキャローとトントンなので、恐らくニコパパ単独だとバッキャローの群れに押しつぶされて負けてしまうだろう。更にバッキャロー以上の強敵が出ないとも限らないので、一応俺とニコパパでバディを組もうという考えだ。
俺がそれを説明すると、ニコパパは俺達との実力差は解っていたので素直に頷いてくれた。
そして一応俺はごぶ助に謝っておく。
「すまないなごぶ助。お前だけ単独で動かして」
「ごぶ。仕方ないごぶ」
「おう。ありがとな」
「ごぶ」
心が昔からイケメンだったごぶ助は、やはり今もイケメンだった。というか、もう今は普通に外見も超絶イケメンなので、心身ともにイケメンだ。
そんな『ごっつぶっ飛んだ超イケメン』、略してゴブメンのごぶ助だったが、『でも・・・』と言って俺の顎に手を添えて来た。
「また我とも一緒に組むごぶ。偶には2人で一緒に動きたいごぶ」
「おっ・・・おう・・・」
俺はノーマルだが、あまりのゴブメンについ胸がトゥンクしてしまった。
そんな俺をトゥンクさせたごぶ助はにこりと笑うと顎から手を放し、『それでは我は向こうに行くごぶ』と言って去って行った。
「そ・・・それじゃ、俺達も行くかニコパパ」
「がう」
何時までも『ソレドコノ少女漫画?』している訳にもいかないので、俺はニコパパへと声を掛けて走り始めた。
そうして俺、ごぶ助、ニコパパの遠征チームが探索を重ね、1週間ほど経った時の事だった。
俺達は・・・魔物以外の生命体・・・人間を発見した。
------------------------------------
作者より:読んでいただきありがとうございます。
「面白い」「続きが気になる」「ごぶ助マジゴブメン!」等思ったら☆で高評価や♡で応援してください。
☆や♡をもらえると ごぶ蔵が ゴブメンになります。
こちらも連載中です。↓『悪役令嬢は嫌なので、魔王になろうと思います。』
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます