第198話 人間を観察し、接触するわんちゃん
人間達を発見したのは俺とニコパパのチームだった。如何見つけたかというと・・・その日も普通に探索をしていると、『索敵』に引っかかったのだ。
「ん・・・?こいつは何だろう?新種っぽいな」
「がう?今度は何肉がう?」
「なんだろうな?」
ここ1週間ほどの成果として、俺達はあのバッキャロー以外にも複数の獲物を見つけていた。それは大まかに言うと、羊・馬・豚・ウサギ・鳥・狼型の魔物で強さや食性等はバラバラだが、狼型以外の魔物は、美味しく頂けた素晴らしい魔物達だった。
「今度は地球じゃ分類できない様なへんてこな生物かも知れんな・・・」
「がう?」
「あ、いや、こっちの話だ。・・・っと、そろそろ目視でも見える距離なはずなんだが・・・あれかな?」
『索敵』の反応を頼りに目標の方向へと向かい、そろそろ見えてくると言う所で俺達は一度立ち止まり、そこからはゆっくりと目標へと近づいた。
そして見えてきた目標こそが・・・人間だった。
「んんっ!?あれって人間じゃないか?」
「がう?がうがう・・・がう・・・。ボス、目が良すぎるがう。俺には豆粒にしか見えんがう」
「ふむ・・・じゃあもうちょっと近づいてみよう」
人間だと思うのだが、ニコパパの視力では見えなかった様なのでもう少し近づくことにした。俺としても正直『人間・・・だと思う』位にしか見えなかったので、確実を期すため近づくのは望む所だったのだ。
俺達はニコパパが確実に目標を判断できる距離・・・恐らく人間からだとこちらは豆粒にしか見えないだろう、そんな距離まで近づき、そこで一旦立ち止まり再度話をした。
「ここだと見えるか?」
「がう。見えるがう」
「・・・うん、やっぱり人間じゃね?」
「がう。ぽいがう。がう・・・がう。あんまり美味そうじゃないがう」
「お・・・おおん。そうね、人間は止めときなさい。腹壊すから、うん」
ナチュラルな『人間は食料』と思っているニコパパにカルチャーショックを受けたが、あまり美味しそうじゃないとの事だったので食べない様に言っておく。・・・まぁ一応俺も元人間ですので、食料にするのはちょっとね?
「しかし人間か・・・似てるエルフに会ったからか俺的には気持ちは落ち着いているけど、ごぶ助的にはどうだろうなぁ・・・ブチ切れかなぁ?」
「がう?がう・・・ごぶ助ならそんな事ないと思うがう。ごぶ助はボスがいなかったらボスと呼びたいほどの奴がう。そんなちっさい奴じゃないがう」
「まぁそれもそうか。あの時のクソ野郎共本人ならともかく、『人間は誰でも許さない』なんて言う奴じゃないもんな」
「がう」
ごぶ助に言うかどうか迷ったが、ニコパパも大丈夫だと思っている様だったので言っても大丈夫だろう。まぁもしもごぶ助が人間絶対殺すマン、通称『ゴブリンのスレイヤー』になったとしたら、その時はそっと後押しはしてやるつもりではいるが・・・。
「んー・・・もうちょっとだけ近づいて観察して見るか」
「がう」
なにはともあれ、情報を持っていそうな生命体である人間だ、情報収集はすべきだろう。
俺とニコパパは人間達に近づくために、そこらの草をむしり取り背中の毛皮にぶっ刺していく。・・・といっても、俺には前足しかないのでニコパパにやってもらうんだが。
そしてそれが終わると、風下へと回り伏せたままじりじりと近寄っていった。
「ん、ここらへんだと声も聞こえるな」
「がう。でも何言ってるかさっぱりがう」
「あー・・・まぁ見える範囲で何かないか探しといてくれ」
「がう。食べ物でも探しとくがう」
喋っている内容から情報収集を・・・と思ったのだが、ニコパパは人間の言葉が解らないので駄目だった。俺?俺はシェイプシフトでエルフに変化した時に、そのエルフが使っていた言葉が解る様になったし、幸いにもこの世界の人間は共通言語がある様なので解るのだ。
「なになに・・・?」
なので見つけた人間達の言葉に耳を傾けるのだが・・・あまりいい情報は得られなかった。それというのも、その人等が仕事中で、更に仕事中はあまり雑談をしない人達だったからだ。
それでもなんとか聞いた言葉の中から情報を繋ぎ合わせてわかった事は・・・
「何かイメージ的には遊牧民族そのまんまだな?」
俺達が見つけた人間達は地球で聞いた事のある様な遊牧民、そんな生活スタイルをしている人たちの様だった。
「あー、なら少し離れたところにある気配は家畜のモノか?」
「がう?家畜って何がう?」
「んー・・・食べたり働かせたりする為に育てている動物かな」
「がうがう・・・確かに獣の臭いがするがう。ん?でも俺らの様な感じの臭いもするがう」
「・・・牧羊犬か。そろそろ離れよう」
放牧中かな?と推察していると、ニコパパが牧羊犬・・・というかは解らないが、家畜を統制するのに使役しているであろう存在の臭いを察知したので、そいつに見つかる前に離れる事にした。
・
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・
人間を見つけた日の夜、毎晩のように行っている会議で俺は今日の事を報告していた。
「・・・って訳で、その時点で切り上げてきた。以上だ」
俺の報告した情報はかなりの成果だったので、聞いていた者達は『ほうほう・・・』と頷いていた。
そしてごぶ助はというと・・・
「ごぶごぶ」
皆と一緒の様に頷いているだけだった。
「・・・ホッ」
その様子に胸を撫で下ろしていたが、それだけで話を終わらせてもいけないと思った俺は皆へと提案をしてみる。
「で、人間を見つけた訳なんだが、更なる情報収集の為に接触をしてみようと思う」
「「「!?」」」
俺の急な提案に会議の場がざわついたので、きちんと問題ない事を俺は説明する。
「大丈夫だ。何も『俺は魔物だけど、悪い魔物じゃないよぅ・・・プルプル・・・』とか言いながら俺が行く訳でなく、魔物じゃない人物に行ってもらうつもりだから」
「「「?」」」
そう説明すると皆が頭にハテナマークを飛ばしていたが、俺はその人物まで何故か首を傾げていたことに首を傾げてしまった。
「いやいや、エペシュはエルフだろ。魔物じゃないだろ」
「あ、そうだった。私エルフだ」
「そうだよ・・・君はゴブリンじゃなくエルフだ・・・」
行動に続いて頭もゴブリンになっていたエルフさんに、俺は君はエルフだと断言してやった。そしてこんなエルフさんだけでは不味いかなと思ったので・・・
「まぁあれだな・・・やっぱ俺も行くわ」
「ゴブ!?流石にそれは・・・っと、そういえば一狼様は・・・」
「ああ、エルフに『シェイプシフト』していくから問題ない」
俺もエペシュと一緒にエルフに変身して付いていく事にした。
正直2人もいきなりエルフが現れたら不審は不審だが、まぁ1人で来てもそれは同じだから何とかなるだろう。
そんなこんなで翌日に俺とエペシュが情報収集の為、人間の元へと出向く事になったのだが、これが予想以上に上手くいった。
何故ならば・・・
・
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・
「おお、こんな別嬪さん見た事ねぇな」
「エルフっちゅうらしいぞ?綺麗だなぁおい・・・」
「昔のあたしと為張るほど綺麗だわね。エルフさんってのはすごいわね!オホホホ!」
知っている人からするとバーサーカー種族なエルフだが、遊牧民の人達はどうやら知らないらしく、唯々綺麗な女性だと思っている様だったからだ。
その為、『旅が好きで旅をしていたのだが、この広い草原で迷ってしまった』と適当に言った嘘もその美貌効果でか簡単に信じてしまい、老若男女がこぞって美人のエルフに好意的に接してくれた。
だが主に・・・
「しかしほんま美人さんだな。こんな美人な姉ちゃん持てて幸せだな妹さん?あ、お姉さんお姉さん、俺んとこさぁ・・・・・」
「・・・」
「あ・・・あはは・・・」
それは俺に対してだったが!
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作者より:読んでいただきありがとうございます。
「面白い」「続きが気になる」「一狼Ver.エルフ!」等思ったら☆で高評価や♡で応援してください。
☆や♡をもらえると エペシュが お姉さんになります。
こちらも連載中です。↓『悪役令嬢は嫌なので、魔王になろうと思います。』
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