第195話 宴会をするわんちゃん

「おっ・・・おっふっ・・・げふっ!」


「わっ!?」


「「「ごぶっ!?」」」


「「「グルッ!?」」」


 余りの吃驚様に咽てしまい俺がスピードダウンを起こすと、俺の上に乗っていたエペシュ、そして俺の後ろにいたゴブリン&ウルフ達が事故を起こしそうになっていた。

 しかし何とかそれぞれの方法で回避し、危うくも『犬の玉突き事故』は回避される事となった。


「ごぶ!?いきなりどうしたごぶ!?」


「い・・・いやすまん・・・ちょっと足がもつれた・・・」


 俺を吃驚させて来たステータスの持ち主には悪気などある筈もないので、俺はごぶ助に何でもないと謝り、エペシュや後ろに居た皆にも『いきなりすまなかった』と謝った。

 そして今だ胸が変な感じになっていたので大きく深呼吸をして呼吸を整えると、『もう大丈夫だ』と声を掛けて出発を促した。


 そうして再び走り出して直ぐ、俺はごぶ助へと再度話しかけた。


「いやしかしごぶ助・・・ステータス見せてもらったんだが、半端なく鍛えたんだな」


「ごぶ?まぁ色々あったごぶ」


「そうか・・・そうだよな」


「ごぶ」


 俺の称賛にごぶ助は『色々あった』とさらりと答えたのだが、俺もそうだった様にごぶ助達も大変だったのだろう。そう思うと殊更『苦労を掛けたな・・・』という思いが強くなってしまったので、俺はそこから先目的地に着くまでは無言でいてしまった。


 しかしその無言状態も、目的地に着くと直ぐに解除された。


「・・・。・・・っ!あれはっ・・・!」


「「「・・・?」」」


「おーいっ!皆ぁーっ!!」


「「「・・・!ボスっ!」」」


 何故なら目的地である『ポンコ』ダンジョンの入口に、コボルト達の姿を見つけたからだ。


「わわっ!」


 俺はエペシュには悪いと思いつつ、コボルト達の元へと急加速し近づいて行った。そして流石にそのまま突っ込むと大事故になってしまうので手前でスピードを落とし、スピードが落ちきった所で俺はコボルト達に飛びついた。


「会いたかったぜ皆ぁ~!っていうかよく俺が解ったなぁ~!」


「がう!勿論解るがうボス!」


「がうがう!ボスだ~!って感じたがう!」


「がう!それにボスも俺達の事が解ったがう。俺達も進化して姿が変わっているのにがう!」


「うんうん。良かったね一狼」


 俺は飛びついたコボルト達へと顔を擦り付け再開を喜ぶ。因みに俺がコボルト達へと飛びついた際エペシュは華麗に俺の上から飛び降りていた様で、俺達の横で笑顔になって頷いていた。


「ごぶごぶ」


「ゴブ。一狼様が嬉しそうで何よりですゴブ」


 俺達が犬球状態になっているとごぶ助や長老達が追いついてきたので、俺達は一旦犬球状態を解除し、改めて話す事にした。


「待たせたな。ええっと・・・お前達はジョー、ワン、ニーだな?」


「「「がう」」」


「色々話したい事はあるんだが・・・他の皆にも一辺にしようと思う。他の皆はダンジョンの中か?」


「がう?ごぶ助から聞いてないがう?」


「うん?何をだ?」


「がう。他の者は大体狩りに出払っているがう。残っているのはニコパパくらいがう」


「あ、そうなのか」


 他の皆の所在を確認すると、どうやらごぶ助同様狩りに出ているらしい。更に軽く話しを聞いてみると、どうやら食料確保のために毎日草原に出てあのマリモを狩っているのだとか。


「ごぶ。ポンコは食料も生産は出来るけど、節約は大事ごぶ。じゃないといざという時にやばいごぶ」


「あー、まぁそれは確かに」


 ごぶ助も説明してくれるのだが・・・進化した影響だろうか?何か前より頭が良さげな事を言っている。進化とは偉大だな。


「ま、了解だ。そんじゃあ先に中へと入って待っていよう。中にいるだろうポンコとニコパパにも挨拶したいしな」


「ごぶ。そうごぶな。じゃあ先に中へ入るごぶ。ジョー、ワン、ニーは引き続き警戒を頼むごぶ」


「「「がう」」」


 この時初めて解ったのだが、3人のコボルトはどうやら警戒の為にダンジョン入口前にいたらしい。俺が居なくても上手く回しているんだなと、寂しさ半分頼もしさ半分という気持ちだった。

 と、それはともかくだ、俺達は他の皆が返って来るまでダンジョン内で待つ事にしようと、ダンジョン内へと入った。

 そして久しぶりに『ポンコ』ダンジョン内で転移を使い、ポンコとニコパパが要るであろうコアルームへと移動した。


 ・

 ・

 ・


「「「ご~ぶごぶごぶ~」」」


「「「が~うがうがう~」」」


「「「ウォーーン!ウォンウォーン!」」」


「あはは!」


『ポンコ』ダンジョン到着から3時間程後、現在俺達は宴会真っ最中だった。


「わう!目出度いわう!目出度いわう!」


「あうあう!ボスの帰還あう!新しい仲間が増えたあう!」


 あの後無事俺はニコやミコ達とも再開を果たし、新しい仲間との自己紹介や、俺達が別れてからあった事等を話し合った。


「お前達の方も色々あったんだなぁ・・・」


「ごぶごぶ」


「「「がうがう」」」


 ごぶ助達の方にも俺達にもあった様に、楽しかった事や苦しかった事等、様々な事があったそうで、その中でも一番俺が衝撃的だったことは・・・


「ありがとなぁ・・・」


「がる。笑って送り出してやるがる」


「・・・そうか。そうだな」


 数名のコボルトが亡くなった事だった。

 ごぶ助が超強化された時に気付くべきだったのだが、超強化されているという事は、その分激しい日々だったという事だ。そんな中で無傷で切り抜けられると言うのは、ごぶ助達の人数や実力では無理だったのだろう。

 しかしだ、俺はニコパパの言った通り、亡くなったコボルト達を笑顔で送り出してやることにした。コボルト達曰く『その方が亡くなった奴らも喜ぶ』だそうだ。


「・・・しかしニコパパも色々あったみたいだな。まるで阿修羅じゃないか。筋肉も滾りすぎのパンパンじゃないか」


「がる?そんな事も・・・あるがる!」


 俺は横に居たニコパパを見て褒めてやる。というか褒めざるを得ない。

 俺はごぶ助の超強化を見て吃驚し吹き出していたのだが、ニコパパを見た時、再度同じリアクションをしてしまった。

 なんせニコパパもごぶ助と同じく超強化され、腕が4本に増えていたのだ。


「わう!ニコもそんな子をあるわう!」


「あう!ミコもあう!」


「そうだな。二人も成長したな」


 更にそれはニコやミコ、また他のコボルト達も同じで、ごぶ助達一同は全員が進化をし強くなっていた。

 まぁ話を聞く限りかなりの激戦が複数回あったみたいなので納得なのだが・・・というか、本当によく数名が亡くなっただけで済んだものだ。下手したら全滅もあったのではないだろうか?まぁごぶ助の超強化具合で何とか持ちこたえたのだろうが・・・。


「がう。けどボスも成長し過ぎがう。こんな奇妙な空間を作れるとかヤバ過ぎがう」


 因みに現在宴会をしているこの場所なのだが、俺のレモン空間内である。

 ポンコがいるコアルームやダンジョン外の草原でやっても良かったのだが、正直レモン空間内の方が色々充実しているのでこちらでやる事にしたのだ。


「まぁな・・・っと、一回ポンコの所に行って来るわ」


「がう」


 宴会はえんもたけなわ状態になっていたので、俺は一度ポンコの所へ顔を出す事にした。


 ポンコは宴会をレモン空間でやると言った時『ポンコの事ハ気にしないで下さイ』と言っていたのだが、ポンコも俺達の仲間の一員だ。流石に放置しっぱなしというのもそれはなんだかなという感じだ。

 なので俺はレモン空間からコアルームへと移動し、ポンコとも雑談を交わす。


 そして暫く話した後、またレモン空間へと入り、仲間達との会話を楽しんだ。



 こうして俺は離れ離れになった仲間と再び出会い、彼らや新しくつれてきた仲間とのこれから始まる楽しい日々に希望を見ていた。



 ・・・だが、『好事魔多し』とはよく言ったモノで、俺は因縁のある集団とも再開を果たす事になるとは・・・この時知る由もなかった。



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 作者より:読んでいただきありがとうございます。

「面白い」「続きが気になる」「んんんんん・・・ナイスバルクっ!」等思ったら☆で高評価や♡で応援してください。

 ☆や♡をもらえると ニコパパの筋肉が 意思を持って踊りだします。


 こちらも連載中です。↓『悪役令嬢は嫌なので、魔王になろうと思います。』

 https://kakuyomu.jp/works/16816927860702355532

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