第188話 決着!?の目玉とわんちゃん

「まんまと騙されやがって!所詮はワン公だな!」


『黙れ!』と言いたい所だったが、マルオのユニークスキル『射すくめる眼光』により声も出せない俺は奴を睨む事しか出来なかった。


「フハハハハ!粉砕!玉砕!大喝采ー!俺の勝利だぁー!」


 マルオは俺にユニークスキルを掛け『もう勝負は決まった!』と思ったのか、どこぞのデュエリストみたいな事を叫びながら高らかに笑い、叫んだ。

 そんなマルオとは対称的に俺は悔しさでいっぱいになり、心の中で歯ぎしりを・・・鳴らしてはいなかった。

 むしろ俺はマルオを見て笑いそうになっていた。


 ・・・何故かって?


(やっちまえごぶ蔵!)


 それは奴の背後からごぶ蔵が忍び寄っているからだ!


『コソコソ・・・』


 ごぶ蔵は奴の背後にある壁からゆぅ~っくりと体を出し、そろりそろりと奴へ近づいていた。

 普通の状態だとマルオならば背後のごぶ蔵に気づくかもしれないが、現在奴は勝ったと思い込み、勝利に酔いしれ慢心しきっていた。なので恐らく気づかないであろう。


(保険としてタイマンする前にごぶ蔵を送り出しておいて正解だったな!)


 実の所、マルオに挑発されて『タイマン張ってやらぁ!』と言ったモノの、俺は本気でタイマンを張る気など毛頭なく、予めごぶ蔵に『危なくなったら援護を頼む』と伝えて送り出していた。因みにだ、マルオを壁際に追い込んだのも『ごぶ蔵が奇襲をかけやすいように』という理由だったりする。


(いやしかし、地面に掘られた塹壕を進んでいたからってよく見つからなかったものだ。ごぶ蔵グッジョブ!)


『地面に掘った塹壕を使ったり壁の裏を通ったりしながら隠れて移動をし、敵に見つからない様に指定のポイントへ』という指令をごぶ蔵は見事にやり遂げたのだ。やはりごぶ蔵はやれば出来る子・・・いや、天才だ!


 俺は万が一と思いかけていた保険が上手く効いてくれたことにホッとし、同時に拍手喝采を送りたくなっていた。


(これが終わったらべた褒めしてやるからなごぶ蔵!だから頼む!決めてくれ!)


 なるべく目線でも覚られない様、マルオの事だけをジッと睨み付けながら俺はその時を待つ。


『ソロ~リ・・・ソロ~リ・・・』


「クゥ~ァッハッハッハ!エリカが!エロフが!俺にもっと輝けと叫んでいる!」


 待つ・・・待つ・・・


 そして・・・


「誰か俺に敗北をおしえてくれよん!」


「教えてほしいごぶ?」



 その時が来た。



「・・・ふぁ?」


「『活〆』!『ぶった切り』!そしてトドメの『特性スパイス』!ごぶ!」


「ふぃっ!?ふぅぅ?ふ・・・ふえぇぇぇえええっ!?」


「・・・んんっ!?ナイスごぶ蔵!」


 奇襲が決まり、マルオの御造り完成でジ・エンド!・・・かと思われたが、ごぶ蔵は触手部分を『活〆』とやらで麻痺させ、『ぶった切り』で俺へのユニークスキルを遮断、そして『特性スパイス』?でマルオの本体とも呼べる目を潰して見せた。

 しかし俺は『倒せるなら倒してくれ』と言っておいたのだが・・・ユニークスキルを使っても自分では無理だと感じたのか?だが俺を動ける様にしてくれたので、とにかくナイスだ!


「油断しすぎなんだよマルオ!そんなんだから自分のユニークスキルの弱点を突かれるんだっ!」



『ユニークスキル:射すくめる眼光

 ・体の動きや魔力の流れを止める事が出来、それは一度かけると暫く持続する。使用すると眼球に疲労を蓄積させるので注意が必要』



 マルオの『射すくめる眼光』は使用条件が緩く強力なユニークスキルだ。

 しかしその分弱点も多く、最初掛ける際にはが必要らしく、その為ご覧の通りというか・・・目さえ潰しておけばこの様にユニークスキルは使用ができないみたいだった。


「ふ・・・ふぉぉ・・・目が・・・目がぁ・・・!う・・・うぅ・・・けどなぁ・・・ユニークスキルは触手に付いた目でも・・・って動かねぇ!?」


「当たり前ごぶ。『活〆』だから、生きてるけど死んでるようなモノごぶ」


 マルオの種族は『ヒュドラゲイザー』。

 恐らくこれは自分のユニークスキルの弱点、『みる事でしか発動できない』事を補うための進化だったのだろうが、ネタが割れていればごぶ蔵がした様に対処出来る。・・・だからマルオは油断すべきではなかったのだ。


「俺も人の事は言えないがな・・・ってことでだ、油断せずにきっちりカタをつけてやろう」


「く・・・クソ!来るんじゃねぇ!」


 マルオにトドメをさそうとしたのだが奴は往生際が悪く、何とか逃げ出そうと粘液を地面にぶちまけ『特殊機動術』で逃走を図った。


 だがそんなマルオを逃がすわけがない。


「観念しろってのっ!凍てつき固まれ!フリーズ!」


「・・・あ・・・あがが・・・」


 俺はマルオが落とした粘液へと魔法を使い瞬時に凍らす。全身凍るとまではいかなかったが、半分ほど凍って身動きも取れない様なので十分だろう。


「ここで何か情報を聞き出そうとかして油断すると不味いからな・・・お前はこのまま葬り去る」


「ちょ・・・ま・・・」


「待たん!」


 何時ものパターンだとここで油断をするとまたピンチに陥ってしまう。なので俺は一切の慈悲なくマルオを葬る為に飛びかかり、先ずは奴の本体とも言えるデカイ目玉へと身体強化を使ったうえで切り裂いた。


「ッシャッ!」


「ぐぎゃぁぁああああ!!」


「ッシッ!シッシッ!」


 スキル『ひっかき』等も交え、ごぶ蔵のスパイス攻撃にやられた目を徹底的に切り刻む!

 そしてどう考えても短時間で再生は無理な状態にまで切り裂くと俺は一度後ろへと飛びのき、切り裂きながら徐々に練っていた魔力を更に練った。


「あ・・・あがが・・・がぁっ!?」


 そんな魔力の波動でも感じたのだろう、マルオが苦しみに喘ぎながらなんとか逃げようと暴れ始めた。

 しかし体は半分ほど凍りつき、何時も色々な事に使っている触手は動かない。


 そんな陸の上の魚状態のマルオに俺は・・・


「・・・トドメだ。恨んでくれても構わん」


 練りに練った魔力を・・・


「風よ!仇なす敵を塵にせよ!」



 放った。



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 作者より:読んでいただきありがとうございます。

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 ☆や♡をもらえると マルオが 物言いをつけます。


 こちらも連載中です。↓『悪役令嬢は嫌なので、魔王になろうと思います。』

 https://kakuyomu.jp/works/16816927860702355532

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