第187話 タイマンをするわんちゃん

『この野郎、ぶっ殺してやぁぁる!!!』とマルオのタイマン宣言を受けた俺は奴を決闘に相応しいポイントへと行く様に指示し、奇襲を初めてから見せていなかった姿をマルオの目の前へと晒した。


「ワン公め・・・漸く姿を見せやがったな」


「その通りだこの目玉野郎め・・・エペシュを穢した罪を償わせてやる・・・」


 円形に塹壕が掘られその前にチラホラと目隠し用の壁が作られたまさに決闘を行うために作られた様なフィールド、その端と端に立った俺達はガンを飛ばしあう。



 名前:マルオ

 種族:ヒュドラゲイザー

 年齢:2

 レベル:13

 str:433

 vit:669

 agi:717

 dex:831

 int:375

 luk:205

 スキル:毒触手 鞭術 麻痺触手 自己再生・小 統率 睡眠触手 女体鑑定 粘液生成 特殊機動術 繊細触手 熱視線 

 ユニークスキル:射すくめる眼光

 称号:転生者 ダンジョン1階層突破 特殊進化体 改造者



 ・・・と見せかけて俺はこっそりとマルオへと『鑑定』を使っていた。

 実の所ブチ切れたフリをしているだけでそれなりに冷静なのだ。・・・勿論怒ってはいるんだが。


(マルオ意外とつえぇなおい・・・っていうか種族名・・・ヒュドラ要素なくね?唯のヌメヌメ触手野郎じゃね?っと、スキルも鑑定しとくか)


 俺は口を使った口撃とガンつけをマルオに繰り出し時間稼ぎをしつつ奴のスキルの説明を読むことにした。

 それによるとユニークスキルは魔力の動きも止めてしまうと書いてあり、自分が魔法を使えない事に納得してしまった。


(文面には確かにデメリットが書いてあるから今使えないのは本当かもな。あと2,3個気になるスキルでも鑑定しておくか)



『スキル:特殊機動

 ・特殊な機動を可能とする。』


『スキル:熱視線

 ・瞳から熱線を放つ。熱線は長時間照射できず、少しだけインターバルも必要。』


『称号:改造者

 ・何らかの方法を用いて他者や物に改造を施してきた証。改造時成功率に補正。』



 鑑定してみたが称号は現在関係なさそうなのでパスしておくとしてだ、残りの『特殊機動』の方はマルオがやけに回避が上手かった理由であろう。


(地味そうなスキルだが意外と要注意っぽいな・・・)


 そしてもう1つの熱視線だが、俺はこのスキルが『特殊機動』以上の厄介スキルだと睨んでいた。なんせスキル説明を見るだけならば、予備動作も無しにいきなり熱線・・・ビームを放って来るという極悪スキルだからだ。


(鑑定結果を見るにそこまで連続照射は出来ないらしいがどの程度なんだ・・・?タイマンを仕掛けて来たくらいだし、結構連続でイケるのか?)


 マルオの奥の手っぽいスキルの事を考察しつつ、『一応・・・』と思い俺はもう1つだけスキルを鑑定する事にした。


(もしかしたら後々なんかのあれかもしれんし、あれだわあれ。うん。やっぱアレなスキルだわ)


 字面だけならばユニークスキル何かよりよっぽど気になるスキル『女体鑑定』の事を確認した俺は、この限定的にしか使えないが素晴らしいスキルを心の中へと刻み込む。

 そしてそんなスキルで俺の女神を鑑定していたであろうマルオに殺意がマシマシになったので、『そろそろ決着をつけるか』と時間稼ぎの罵り合いを終わらせる事にした。


「マジお前の母ちゃんのがでベソだから!そんでもう許さんから!攻撃開始するから!」


「うっせぇ!やれるもんならやってみろこの犬畜生!あ、最後に言っとくけどな、お前の母ちゃんのがでベソだから、マジで!」


 俺達は小学生みたいな罵り合いを漸く止め、両者共に直ぐに動き出せるように構えをとる。

 するとだ、よっぽど自分に自信があるのか、マルオがこんな事を言ってきた。


「・・・っふん、俺は紳士だからな、先手を譲ってやるぜ犬畜生。かかってきな」


『何故そんなに自信マンマンなのか?』と言いたくなったが、かかって来いと言うのなら好都合と思い、俺は無言のまま相手の方へと走り出した。

 だが流石にそのまま一直線に行くと奴のスキルの良い的となってしまうので、俺はジグザグに動いたり跳ねたりと不規則に動き近づいて行った。


「・・・っちぃ!ちょこまかとぉ!」


 結構距離があったので奴の方が有利な筈なのだが、奴は俺が動き出した後直ぐに慌てた感じの声を出し、散発的にビームを放ってきた。

 だが俺は常に動き続けているのでビームは俺を捕らえられず、俺が移動した後の地面に当たるばかりであった。


(俺の見た目だけで弱そうと判断したなコイツ!今頃焦ってやがる!)


 正直俺は見た目だけならばちょっとばかしデカくて黒い超絶カッコいいワンコ(自画自賛)なので、奴はきっと『魔法が使えるウルフの2Pカラー』程度に思っていたのだろう。だが残念、俺はソコソコ強いのである。


 そんなソコソコ強いわんちゃんである俺は奴へと順調に近づき、側面から攻撃を加えようとした。


「がら空きだこの目玉やろ・・・っ!」


 しかし何か妙な感じがしたので俺は攻撃を止め直ぐに移動を再開した。

 そしてそれはどうやら正解だった様で、マルオが俺を見ていないにも関わらずビームが俺を掠めていった。


「ぷははっ!惜しかったな!もうちょっとで犬の丸焼きが出来そうだったのにな!」


『奴の視線からは外れていた筈だ』と思い動きを止めずにいたのだが、直ぐにマルオの姿の異形さに気付き足を止めて叫んでしまった。


「・・・ってうわっ・・・なんだお前ソレ・・・キモッ!」


「はぁぁん!?キモクねぇし!カッけぇし!」


「いや!キモ・・・っとあぶねっ!」


 マルオ自身はキモクナイと言うが、大きな目玉から生えた触手、その先に目玉と口があれば誰でもキモイと言うのではないだろうか?

 まぁキモイと再度言おうとしたら触手の先の口に噛まれそうになったので言えなかったのだが。


(どう考えてもキモイっつーの・・・って待てよ?あれも目って事は・・・やばっ!?)


 奴の姿をマジマジと見ていたらある事に気付き、俺は止めた足を再び動かす。すると毛の端がジュっという音と共に焦げてしまった。・・・間一髪だった様だ。


「触手の先の目でも『熱視線』が使えるのか!?」


「ピンポーン!正解だから『熱視線』をプレゼントしまーす!」


 奴は隠す事を止めたのか、全ての触手の先に目玉と口を出現させ、それらを俺へと向けて来た。

 不味いと感じた俺は直ぐに『黒風』を使いある程度の触手を切り飛ばした。


「あがっ!ってめぇ!魔法使ってるじゃねぇか!何が『魔法なんてもう必要ねぇ』だ!嘘つき野郎が!」


「うっせぇ!これは魔法じゃなくてスキルだキモ目玉っ!」


 奴が自分の種族『ヒュドラゲイザー』の特性である『触手の先が頭』を隠さず攻撃を仕掛けて来たので、『戦いは佳境に移った』と感じた俺は、魔法の様で魔法でないスキル『黒風』を使って攻撃を仕掛けつつ位置取りを気にし始めた。

 位置取りはあくまで保険であるため、このまま『黒風』で仕留められるならば良いと思い攻撃を強めていく。


「再生もするとか最悪すぎだろその触手!」


「最高と言えっ!うがっ!くそっ!」


 マルオは触手を切り飛ばされると『自己再生』を使い回復を試みるが、俺は再生する傍から触手を切り飛ばし、更に本体の目玉部分へも攻撃を加える。

 そうなるとマルオの再生は追いつかなったのか、奴はよろめき段々と後退を繰り返しフィールドの端へと追いやられていった。

 それを見て『このまま壁へと追いやり、逃げ道を潰して一気に仕留める』と考えた俺は、ある程度の被弾を覚悟して攻撃しようとした。


「そろそろおしまいにしてやるマルオ!辞世の句でも考えやが・・・ぎぃっ!?」


 ・・・攻撃しようとしたのだが、突然俺の体は動かなくなってしまった。


(まさか・・・これは・・・!?)



「ふ・・・ふはは・・・ふははははは!ユニークスキルがもう使えないと言ったな・・・あれは嘘だ!」



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 作者より:読んでいただきありがとうございます。

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 こちらも連載中です。↓『悪役令嬢は嫌なので、魔王になろうと思います。』

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